第四十八話 鼻歌
「ふ~んふんふんふ~、ふーふふんー」
楽しげな鼻歌で目が覚めた。
誰だろ?
鼻歌が聞こえる方に顔を向けた。
「あ、お嬢様。おはようございます」
鼻歌の主は、ベットの端に座って、落ち着いた声で言った。
「リディさん……?」
「はい。リディでございます」
微笑みを浮かべる、リディさん。
ハッキリ言おう。
「……不気味。違和感しか感じない」
「………………ひどい……私泣いちゃうもん!」
リディさん両手で顔を覆って、「うわぁーん」と泣き出した。
あれ?
思ってたことが口から出てたみたい。
……って、そうじゃなくて!
「ご、ごめんなさいリディさん! そう言う意味じゃなくて、バカっぽくて、子供っぽくて可愛いリディさんが好きって意味だよ!!」
「うわぁーーーーーーん! ニコちゃんがホントのこと言ってアタシをいじめるぅぅううぅ!!」
あれ?
励ましたつもりなのに、なんかより一層泣かしちゃったよ?!
「あぁぁぁ。そうじゃないの! そうじゃなくって、いつものリディさんが大好きって言ってるんだよ!!」
「…………………………ホント……?」
「もっちろん!」
「ならいいや!」
必死のあたしにリディさんは、ケロッとして言った。
軽!
そして、涙の痕がない……。
てことは……まさか、嘘泣き?!
「騙しましたね、リディさん!」
「ふんだ! ニコちゃんがホントのこと言うから悪いんだもん!!」
リディさんは、「気にしてるんだから!」っていって頬をふくらませて、そっぽを向いた。
……そういうところがバカっぽくて、子供っぽくて可愛いんだよ?
リディさん、それに気づいてるのかな?
「ごめんなさい。でもあたし、いつものリディさんの喋り方が良いな?」
「……しょうがないなぁ。じゃぁニコりゃん………………ニコちゃんの、リクエストにお答えしちゃうよ!」
……『りゃん』?
『ニコりゃん』って……。
「ありがとう。でも、『ニコりゃん』は無いよ……」
「てへ。『ニコちゃん』と『リクエスト』が混ざっちゃった」
リディさんは「失敗失敗」って言って、自分の猫耳を触りながら、舌をペロッと出して笑った。
そして、ベットの上にあるしっぽが、小さく揺れる。
うん。
忘れかけてたけど、リディさんは猫の異形だったね。
当たり前のこと過ぎて忘れてたよ……。
って、あれ?
確か朝、お兄様が起きて……。
「?! リディさん、あたし何時間寝てた?!」
「んと今は、ニコちゃんが倒れたその日の夕方だよ?」
リディさんは、片手の人差し指を立てて頬に当て、小首をかしげた。
思いっきり甘える猫みたい……。
「そう、なんだ……。ところでお兄様は?」
「え? 若様は起きてから、リビングだよ?」
「ふ~ん。そうなんだ」
「で、笑顔で怒ってる怖ぁいノエルさんと、その子供たち。後、泣きながら怒るイトコ様方にお説教されてるよ」
うわぁ……。
執事さんだけならまだしも、ウィルロットさんとレティさんもかぁ……。
あの二人はさすが親子って、感じの起こり方するんだよね。
ついでに。
イトコ様方=王子様と、王女様。
二人は器用に泣きながら怒る。
ちなみに、こうなった王子様と王女様は厄介だ。
なかなか泣き止まないという、厄介な性質を持っているからね。
がんばって、お兄様。
自業自得だよ?
まったく。
お兄様は、無鉄砲なお父様に似なくていいのに……。
まぁ。良い薬だよね。
しっかり反省してもらわなくっちゃ!
皆心配したんだから。




