第四十二話 お馬鹿?
「はい。セメロ公爵様です」
「ほぉ……。さようでございますか」
地を這うほど低くて冷たい声。
オルムさんの言葉でノエルさんがカクセーしちゃった?
「え、あ、はい」
急に雰囲気が変わった執事さん。
もといノエルさんに、オルムさんが戸惑ってる。
そりゃそうだよね。
急に雰囲気が変わったら驚くよね……。
てか、あたし怖いから逃げて良い?
……ダメ、だよね…………。
わかってる……。
言ってみただけだよ…………。
「それで、その。……ロジャード様が意識不明の原因、なのですが……【ザバオルの樹液】を口にされたためでは?」
「「?!」」
ノエルさんとお医者様がとっても驚いてた。
なんで?
てか、【ザバオルの樹液】……?
樹液ってことは木の汁、だよね?
木の汁でなんでそんなに驚いてるの?
あたしは二人が驚いてる原因が分かんなくて、お母様を見上げた。
でも、お母様も首を傾げてる。
うん。
お母様もわかんないんだ……。
「【ザバオルの樹液】って、なんですか?」
「え? あぁ、【ザバオルの樹液】は……、その…………」
あたしの質問に、オルムさんは目をさまよわせた。
そんなに説明が難しいのかな?
「毒じゃよ。それも、匂いを嗅いだだけで死に至る猛毒じゃ」
お医者様がオルムさんの代わりに重々しく口を開いた。
「え……。もう、どく…………?」
「うむ。採取することが不可能じゃから、解毒法もないのじゃ」
あたしの言葉に頷いたお医者様。
悲しそうで、悔しそうな顔してる。
どうしよう。
なんか、頭が真っ白。
え?
お兄様自身がその猛毒を飲んだの?
なんで……?
「そ、んな…………」
突然聞こえた、消え入りそうで、酷く混乱したお母様の声。
だからあたし、心配になってお母様の方を向いたの。
そしたら、ちょうどお母様の体が後ろに傾いてた!
「お母様?!」
「奥様!!」
ノエルさんから、いつの間にか元に戻ってた執事さんが、お母様を支えた。
「お母様! っ、おじいさん、お母様が!!」
あたしが叫んだ時。
お医者様はお母様の腕を握ってた。
そして軽く検査らしいことをして、口を開いた。
「安心せぇ、気を失っただけじゃよ」
「ホント? 本当に本当?」
「うむ。じゃが、横にしておいた方が良いのぉ」
執事さんはお医者様の言葉に頷く。
で、お母様を横抱きに抱えて、「失礼します」って言っていなくなった。
多分お母様をお部屋に寝かせにいったんだと思う。
「あの……それなのですが、解毒方法は見つかっています」
執事さんが居なくなって、オルムさんが言いづらそうにいった。
……それはもっと早く言いましょう。
お母様倒れてお部屋に退場しちゃったじゃん!
まぁ。
オルムさんは爆弾発言した後、あたしにその時の状況を教えてくれて、お医者様を連れて帰って行った。
お兄様ってどこか変っだって思ってたけど、修正。
ただのお馬鹿さんだったよ……。
だって『毒は効かない』って言って飲んで、今、意識不明だからね?
馬鹿でしょ?
うん。
馬鹿なんだよ。
まったく、血のつながりなんてないのに、お兄様はお父様に似すぎだよ!
ほんと変なことが似てるんだから!!
まぁ、お父様みたいに頭の中かっ飛んでないとは思うけどさ……。
ううん。
ごめん、修正。
そう願いたい。




