第三十九話 怖いなぁ、もぉ……。
「なぜ私に呼ばれたか。おわかりですね?」
もちろん。
わかってるよ?
お医者様に普通に話したからだよね……?
「……はい…………」
「お嬢様、先生はこのお屋敷の方ではございません。ご存知ですよね」
優しくて、諭すような声の執事さん。
そのせいで、あたしの心には何かにたいして、ちょこっと罪悪感が……。
「……はい」
「では、本来ならどのように接するべきか。ご存知ですね」
「……はい。『敬いの心を持って接し、言葉づかいに気を付ける』です…………」
「よくできました。では、私が言いたいことは分かりますね」
「はい」
今、ようやく気づいた。
執事さん、あたしに聞いてない。
断定系でしゃべってない?
だって語尾が上がってないもん!
「?」ついてないよ!!
「……本来ならまだ言い足りないのですが、今日は見逃します」
え?
本当?!
やったね!
そう思って、あたしはバッと執事さんを見上げた。
「ですが、次はありません」
「…………はぃ……」
目が本気だよ!
次やったらお説教が二時間じゃすまない気がする!!
…………うん。
気を付けよう……。
「では。戻りますよ」
「はい……」
いつも姿勢がいい執事さん。
後姿なのにすっごく威圧感が……。
って、そう思うのはさっき怒られたせい。
わかっているんだけど、恐怖を感じてしまうのです……。
「お嬢様」
なんて考えてたら、少し先で執事さんがお兄様のお部屋のドアを開けて待ってた。
「…………?」
意味わかんない。
えっと、執事さん。
ドアが閉まんないように押えてる。
あ!
入るんだね!
わかった。
という事で、戻ってきました!
お兄様のお部屋。
「ええ。あの子は私たちの本当の子供になってくれないんです」
「おやぁ。それは一大事じゃのぉ」
……あたしには。
あなた方の頭の中が一大事だよ?
「でしょう? どうしたらあの子は首を縦に振ってくれると思います?」
「そうさのぉ……。そうじゃ! 泣き落とししてみたらどうじゃ?」
ねぇ。
あたし、いるんだけど?
ばっちり聞いてるんだけど?
ねぇ。
あたしの存在気づいてる?
執事さん。
あきらめろと言わんばかりの顔しないで!
それに、あたしの肩に手を置いて首を横に振らないでよ!!
「まぁ、その手がありましたわ!」
「ぅむ。あの子もイチコロじゃろうてのぉ」
えっと。
お二人さん。
あたし、そんなことで書類にサインなんてしないよ?
「あら! ニコ!!」
『あら』じゃないよね?
今思いっきり作戦会議してたよね?
違うの?
違わないよね?
「……お母様。あたし、泣き落としされてもサインしないよ」
「「?!」」
「聞こえてたよ。ていうか、さっきからここに居たからね?」
お母様は絶望的な顔をしている。
お医者様は驚愕の表情を浮かべている。
ねぇ。
なんか、起きてあんまり立たないけどさ。
すっごく疲れたよ……。




