第三十五話 夢……かな?
「それにぃ、あたし女だし!」
……ねぇ。
あたしその口調やめてって言ったよね?
この人、耳が聞こえないの?
言葉が通じないの?
あぁ。
わかった。
これがギルデさんが言ってた『ヘンタイ』さんなんだろう。
……んな訳ないか…………。
「くだんない。帰る……」
あたしは変なお兄様……。
もとい、中の人をその場に放置して部屋に帰った。
残念なことに、あたしのお部屋のドアに鍵はついてない。
今はそれが本当に残念。
「あぁ、そっか! これ夢だ!! もう早く目、覚めないかなぁ」
よし。
寝てみよう!
そしたらこれが夢だって証明されると思うし!!
そうと決まったら寝るに限る。
あたしはベットに入って、寝た。
――翌朝。
あたしはベットの上で、夜見た夢を思い出した。
一つは、お兄様がオカマさんになる夢。
二つ。いつも通りのお兄様とお母様。三人で食事をする夢。
そして、この二つのうちどっちかで、養子縁組の紙を持ったお父様に追いかけまわされた。
……どれが夢で現実だったっけ?
どっちでも良いけどさ……。
ていうか、どっちもヤダよ!
……とりあえず着替えてご飯食べよう。
そう決めて、あたしは着替えてキッチンに向かった。
「おはよう。ニコ」
今日も割烹着姿で振り返って笑ったお母様。
そしてご飯作って、それをお皿に盛っている。
何度も言うけど、これでも公爵夫人だよ……。
「うん。おはよ、お母様」
「良く眠れたの?」
「え? うん。良く眠れたよ。どうして?」
変なことを聞くお母様。
ちゃんと寝たよ?
だって(変な)夢も見たし。
そんなことを考えてたらお母様が、困った顔で笑った。
「だって、目の下が黒くなっているもの……」
肩をすくめたお母様。
って、それクマだよね……?
そして、思い当たるものは一つ。
「…………夢のせいだよ」
ちょっとだけ忘れかけてた夢を思い出して、凹んだ。
「まぁ。怖い夢だったの? お母様にお話できそう?」
お母様に心配されてしまった……。
あたし、そんなにわかりやすく凹んだかな?
……どうでもいっか!
「うん。お兄様がオカマさんになる夢と……お父様が、養子縁組の紙を持って追ってくる夢だったの…………」
顔をそらしたのと、声がだんだん小さくなったのは、仕方ないと思う。
「あらぁ……。それはまた……」
あたしの言葉に、苦笑いするお母様。
「でしょ。お母様もお父様を止めてくれてもいいのに!」
まったくもう!
もっと言いたいことあるんだけど、言いたりないんだよ!!
てか、言葉が見つからない……。
このもやもやをどうやって言葉にしたらいいの!
誰か教えてよ!!
「それは無理よ」
「へ? ……あぁ。でも、お父様はお母様の言うことならちゃんと聞くじゃん」
一瞬、心の叫びが口から洩れてたかと思ったよ……。
もぉ驚かせないでよ。
って、あれ?
お母様なんで疲れたような目で、遠くをみてるの?
「そうね。すべて斜め上に解釈してね……」
「……まさかと思うけど、お父様がしつこくなったのは――」
「ごめんね。多分、母さんのせいだわ」
遠い目のあと、俯いたお母様。
なんか疲れてる?
「…………何があったの?」
「いやね。母さんは『ニコは可愛いから、『お嫁さんに』っていう人はたくさん居るんでしょうね』って言っただけよ?」
お母様は「困ったものね」て、言って笑った。




