第三十四話 様子が……。
「だよね! そうだよね!!」
「それがどうかしたの?」
相変わらず不思議そうなお母様。
安心したせいか、なんでか笑っちゃった。
「ううん。なんでもない」
「そう? まぁいいわ。ご飯にしましょう」
「はーい」
昨日と違ってお母様は立ち直ってて、笑顔が絶えなかった。
そして何より。
食堂じゃなくて、キッチンってのがいいね!
すっごくリラックスして食べれるんだもん!!
だからあたしはお母様と二人だけの団欒を楽しんだ。
お兄様も風邪が治ったから、明日からは一緒にお食事だね!
いやぁ良かった良かった。
『サイン!!』っていってくる人がいないから、楽しみだなぁ!
朝食も、お昼も、晩御飯も。
大好きな『家族』と出来るんだもん!
あ、お父様が嫌いって訳じゃないよ?
大好きよ。
でもね、養子縁組の紙を持ってるお父様はイヤ。
嫌いじゃないよ?
イヤなの。
まぁ。
昨日お出かけしたばっかりだし、明日に帰ってくるなんてことはないだろうしね!
あたしは食事を終えて、ルンルン気分でお部屋に帰った。
でも、あたし。
ベットに入ったけど、お兄様が気になって眠れなかったの。
だってさっき見たとき、別人だったんだもん。
どうしても気になったから、ベットから降りてお兄様の部屋に行った。
今度はノックしないで、少しだけドアを開けて室内の様子を見る。
いつもと変わらなかった。
あたしは足音を殺して、お兄様のお部屋に入った。
で、静かにベットに近づいて、お兄様の顔を覗き込んだ。
「いつも通りの顔だね。あれってなんだったのかなぁ……」
「説明しよう。実はあれが本来の姿なのだ!」
眠っていたはずのお兄様が、カッと目を開けて言った。
「………………」
「……どうしたの、聞きたくないの?」
寝たままへらへら笑ってるお兄様。
姿も声も同じ。
でも、様子がものすっっっっっご~~~く!
変!!
「…………お、にいさま。どうしたの……? あ! まさか、風邪で頭が――」
「悪くなってないよ。えっと、ロイドだっけ? こいつはまだ眠ってるんだぁ」
お兄様を覗き込んだまま、動けないあたし。
淡々と言うお兄様。
……口調も変!!
って、『眠ってる』?
どういうこと?
「お兄様じゃ、ないの……?」
「そうよ。彼は今、記憶の中を漂っているもの」
お兄様が上品な女の人の口調と、落ち着いた声で言った。
「それじゃぁ、お兄様の記憶は戻るの?」
「えぇ、もちろん」
頷くお兄様。
正しくは『姿と声だけお兄様』なの。
仕草とか、しゃべりかたとか、全然違う。
違和感しかないよ……。
ん?
てことはこの人、お兄様じゃない?
「そう、なんだ……。えっと、お兄様の中の人?」
「な、『中の人』?!」
なんで驚いた顔?
ねぇ。
お兄様の姿でそんなに落ち込まないでよ……。
あたしがお兄様をいじめてるみたいじゃん!
もう!
「それと、その口調止めて。お兄様がオカマさんになったみたいだから」
「オ、オカ……?! ……ふん! あたしの体じゃないから良いんだもん!!」
ずいぶん口調と態度にムラがある人だな……。
さっきまで上品な女の人だったのに、今は子供みたいな口調なんだもん。
てかこの人。
めんどくさい……。
あと、お兄様がオカマさんになっちゃった。
そんな感じになるから……。
今すぐで良いから。
その口調をやめて!!




