第三十二話 掃除……
「……ニコラ。今日はもうお手伝いは終わりです」
「え? まだ玄関のお掃除しか終わってないですよ?」
「えぇ。ですから、ご自身のお部屋のお掃除をおこなってください。ホコリが転がっていましたよ?」
……執事さん。
あの短時間でホコリチェックもしてたんだ。
まったく。
侮れないんだから…………。
はぁ……お掃除かぁ……。
やだなぁ。
見逃してくれないかな?
でも、返事だけはしないとなぁ……。
「…………はい……」
「終わったら知らせてください」
「はい」
よし、適当にぱぱっと――。
「手抜きはダメですよ?」
「…………ハイ」
考えてること読まれた!
「何に驚いているんですか。お嬢様の顔を見れば何を考えているのかなど、容易にわかります」
あぁ。だからポーカーフェイスを教えたんだね。
ごめんね。
初対面とか、関係の浅い人にしかできなくて……。
でもそれでいいって言ったの、執事さんだよ?
OK出したの執事さんなんだからね!!
「さぁ。お部屋のお掃除ですよ」
「わかってるよ……」
あたしは執事さんに急かされて、お部屋に向かった。
もちろん。
手には箒とバケツ。
で、バケツの中にはハタキと、塵取り、雑巾、お水は入ってない。
要るときに取りに行こうと思ってるんだ。
あーあ……。
何回『やり直し』って言われるのかな……。
……一度も言われたくないよ…………。
一発で合格したいよ!
と言うことで張り切ってお掃除した。
でも、結局。
五回『やり直し』って笑顔で言われた……。
それと、六回目は頭を抱えて、『やり直し』言って、あたしを見張ってたのはご愛嬌。
執事さんったらオッチャメェ……。
正しくは六回やり直しましたとさ。
めでたしめでたし。
って。
全然めでたくないんだけどさ……。
あたし疲れて、ぐったりだよ?
それに、この後直ぐ。
お母様と二人っきりの気まずい晩御飯だったんだからね!
明るいお母様は落ち込んでて、しかも、その原因を止められなかったあたし。
そう。お父様が原因。
お母様に何も相談しないでいなくなったの。
最低だよ、お父様!
それを送り出したあたしも悪いんだけどさ!!
しかも、なぜかキッチンじゃなくて、食堂だしさ……。
執事さんがあたしがミスしないか目を光らせてるし。
マナーのせいで食べにくいったらありゃしない!
まったく。
そういうのから早く解放されたかったから、全部覚えたのに……。
使う事なんてめったに無いのにさ!
まぁ、食堂ではお父様も、お母様も、お兄様も笑い話しながら完璧にこなしてるんだけどね。
あたしはぎこちないかな……。
ついでに、食堂ではマナー通りに食事をしないといけないの。
執事さんが決めた。
これは絶対。
このお屋敷で一番強い人。
武術もだけど、存在もね。
従うんだよ。
皆、ね……。
あたしは体もだけど、精神的に疲れて寝た。
――翌日。
お兄様の熱が下がった。
お医者様の言うとおり風邪だったみたい。
よかった。
……あれ?
そういえばあたし、最初だけ心配して、後らへんは忘れてなかった?
あたし、薄情。
でも、心配する暇なんてなかったような気が……。




