第三十一話 風
春だから、落ち葉はない。
代わりに散った花びらがいっぱい……。
「はぁ。花なんて散らなければいいのに……」
そしたらあたしが箒で掃かなくて済むのになぁ。
でも、お仕事だからしっかりやらなきゃ!
「よし、やるゾ!」
あたしは持っている箒で、地面を掃いて、花びらをかき集め始めた。
でもね。
集まらないの……。
風がやんだり、強く吹いたりでさ……。
ホント腹がたつんだ。
だって、集めてたヤツを舞い上げたり、吹き飛ばしたりしやがるんだもん……。
あたしがイライラして、足踏みした時、玄関からお父様が出てきた。
「あ、旦那様。お出かけですか?」
「あぁ。本当は行きたくないんだけど、どうしても調べないといけないことがあるからね」
お父様の表情は沈んでた。
例えるなら、『息子がとても心配だ。でも、国も大切だ』。
ってとこかな。
でも、お兄様の割合が高いみたい。
だって顔と、雰囲気に出てるんだもん。
「そうですか……わかったです! 若様は私たちに任せて、お仕事がんばってくださいです!」
あたしはお父様に安心して欲しくて、笑って言った。
そしたら、お父様が驚いた顔をして、自嘲したように笑った。
「まったく。ニコにはかなわないね……」
「お父様は分かりやすすぎです」
「まぁ、家族だからね! じゃぁ悪いけど、頼んだよ。いってきます」
「はい、いってらっしゃいませです!」
あたしはお父様を見送った。
お父様はずっと手を振って、歩いて行った。
あ、そういえば。
お父様に『旦那様』じゃなくて『お父様』って言ったような気が……。
気のせいかな?
いや。さすがにそれはないよね?
だってあたし今、使用人だしね!
この姿で、朝食後からは、使用人としてお話しするって決めてるし。
……忘れよ。
それがいい。
うん。
忘れた!
……何てことできたらいいのに…………。
「はぁ……。もぉヤダ…………」
あたしは凹みながら、花びらをせっせと集めた。
何故か今度は集めるのが楽だった。
変なの。
まるで誰かが手伝ってくれたみたい。
……怖いね。
この例え方……。
ま、いいや。
執事さんのとこ行こっと!
あたしは集めたゴミをゴミ入れに捨てて、箒と塵取りを元あった所に戻して、執事さんを探した。
どこかな?
キッチン、行った。
リビング、行った。
お庭。行ってない。
と、いうことで、お庭。
居た!
執事さん!!
……何してるの?
一本一本木の上見て……。
探し物……?
「執事さん、玄関のお掃除終わったです」
とりあえず話しかけた。
「そうですか。ところで、旦那様を知りませんか?」
「旦那様? さっき玄関で『いってらっしゃい』したです」
「そうですか…………」
ため息をついた執事さん。
何かあったのかな?
「執事さん?」
「いえ。なんでもありません」
はい、嘘。
なんでもないなら、なんでそんなに疲れてるの?
変だよね?
大体、お父様探して、見つからないから木の上じゃないかって。
その思いつきは変だと思うよ?




