↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
変人公爵一家の義娘  作者: 双葉小鳥
第一章 変人公爵一家の義娘
30/168

第三十話 ちょび髭のお医者様

 そして向かった先は、キッチン。

「おかえり、ニコ。ご飯食べましょうか」

「おはようございます。お嬢様」

 お母様と、執事さんが居た。

「そんなに慌てて、ご飯は逃げないわよ?」

 あたしを見て微笑んだ。

 それどころじゃないんだよ!

「大変なの! お兄様が倒れて、返事しないの!!」

 言葉と同時に、涙があふれて、頬を滑り落ちた。

「お母様、お兄様死んじゃうの……?」

 不安で声がだんだん小さくなった。 

 『そんなことないよ』って、言ってほしくて、お母様を見上げた。

 涙のせいで、お母様の顔が歪んでた。

 あたしは涙をぬぐうけど、次々出てきて、止まらない。

 心の中は不安と、恐怖で埋め尽くされてる。

 早く安心できる言葉がほしい。

 お願い、お母様。

 『大丈夫』って言って。

 『お兄様は死なない』っていって笑って……。

 お母様の言葉で。

 お願い……。

「大丈夫よ。ニコの知ってるお兄ちゃんは、強い人でしょ?」

 お母様はあたしを優しく抱きしめて、言った。

 あたしが待っていた言葉。

 その言葉で、ちょこっとだけ心が晴れた気がする。

 でも、涙は止まらないの。

「うん……」

 あたしは、お母様にすがりついて、小さくうなずいた。

 そしたらお母様は、あたしを抱きしめたまま、頭を撫でてくれた。

「だから大丈夫よ」

「ん……。……ぅ……っく…………」

「大丈夫。もうすぐお医者様が来て、お兄ちゃんを助けてくれるから、ニコはそれまで、泣いていいのよ」 

 お母様の優しい声と、言葉のせいで、あたしは小さく声を上げて泣いた。

 そして、あたしが泣き止むまでお母様はあたしを抱きしめて、頭を撫でてくれた。

 やっと涙が止まった時。

 お医者様が、あたしたちをリビングに集めて、診察結果を教えてくれた。

「私が見たところ、若君は熱が高い。おそらくただの風邪でしょう」

 ちょび髭のお医者様の言葉で、張りつめてた空気が緩んだ。

「ですから、風邪に効く薬を出しておきます。これで熱はさがるかと」

 お医者様の笑顔がとても心強かった。

 よかった。

 お兄様死んでなかったよ!

「ありがとう、お医者! そのお薬をお兄様に飲ませたら、お兄様元気になるんだよね!!」

「あぁ。そうだよ」

 お医者様が屈んで、あたしの頭を撫でて、笑った。

 つられてあたしも笑みを浮かべる。

「よかった。ほんとによかったぁ……。ね! お父様、お母様、執事さん!!」

 あたしは振り返って、三人に笑った。

 さっき見たときは、強張った表情だった三人。

 でも、安堵の表情が浮かんでた。

「そうだ! あたし、お兄様のとこに行ってくる!」

「?! ダメだよ。風邪がうつったらどうするんだい!!」

「平気だもん。お父様は心配し過ぎなの!」

「こら、ニコ。エルーの言うとおりよ」

 あたしがお父様に文句を言ったら、お母様から説得するような感じで言われた。

「お母様まで! なんでお兄様に会っちゃダメなの?」

「ダメって訳じゃないのよ? お兄ちゃんのお熱が下がってからなら、いつでもいいのよ?」

「なんで――」

「お嬢様。旦那様も奥様も、坊ちゃんとお嬢様の体のことを考えて。おっしゃって下さっているのですよ?」

 微笑を浮かべて、まるで駄々っ子を言い聞かせるように言う執事さん。

 ちょっとだけムってしたけど、執事さんの言う通りだ……。

 あたしが間違ってる。

 お父様とお母様は心配してくれてるのに……。

「お分かりですね?」

「……はい。……ごめんなさい…………」

「はい、よくできました。ところで、本日はいかがなさられますか?」

「え? 何が?」

「お手伝いです」

 お手伝い?

 あぁ、お屋敷の事ね!

「もちろん、やる!」

「畏まりました」

 勢いよく頷いたあたしに、執事さんは軽く笑った。

「じゃ、あたしお外掃いてきます!」

 手を高く上げて言った。

 無意識に上がった手。

 それに気づいたあたしは、ぱっと下ろして、頭を下げてリビングを出るため、小走りでドアに向かう。

 そしたら、執事さんに呼び止められた。

「掃き終わったら、洗濯ではなく、私に報告に来て下さいね」

「はぁーい。わかりました!」

 で、あたしはリビングからでて、箒を持って玄関に行った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。