↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
変人公爵一家の義娘  作者: 双葉小鳥
第一章 変人公爵一家の義娘
19/168

第十九話 絵本

 途中。

 あたしは何人かに出会った。

 だから挨拶と、世間話を少しだけしたんだ。

 そんなことをしながら、ゆっくり歩いてるせいか、いつもより時間がかかって目的地に着いた。

 短い草に覆われた丘には、強くもなく、かといって弱くもない。

 そんな心地良い風が吹いていた。

 あたしは草の生えた地面に座り、足を投げ出し、抱えていた紙袋から絵本を取り出す。

 青い表紙で囲われた、鉄格子の向こう。

 この絵本の王子様は立ったまま、こちらに背を向けて小さな窓を見上げてる。

「王子様は何を見てるのかな……」

 あたしは一回立ち読みして気になった最初のページを開く。

 ――昔々のとある王国。

 金の髪に、赤い瞳。

 それから……片方だけの黒い翼を持つ王子様が居ました。

 王子様は王様の命令で、とても危険な、戦場の最前線に向かわれます。

 そして、王子様の活躍で、戦場で怪我をしたり、死んでしまう王国の人はいなくなりました。

 しばらくして。

 王国に攻めて来ていた敵国の王様が、王子様の強さに負けて戦争は終わりました。

 王子様は一人で戦場に立ち。

 王国を守られたのです。

 この時。

 王子様は齢八つ。

 幼い王子様が戦場に立つことを出来たのは、とても……とても強い力を持っていたから。

 それもそのはず、王子様の父親は【創世の異形】と呼ばれ、世界中で信仰されている神様の一人だったのです。

 ですが。この事は王子様も、この王国の人々も、誰一人として知りません。

 とても優しい王子様。

 「私一人だけで平和になるなら」と笑って、一人。

 元敵国に、残られました。

「…………なんで敵を負けさせたのに、王子様は残ったの? 変だよ」

 あたしはそこまで読んで、首をかしげる。

 だって、そうでしょ?

 敵の王様を負けさせたんだから。

 なのになんで王子様が囚われないといけないの?

 あたしはページをめくり、最後のページを開く。

 ……この本。 

 最後が手紙になってる。

 ううん。

 きっと、この本全部が手紙なんだ。

 囚われて、捕らえた国を消して、いなくなっちゃった王子様に向けた……。

 でも、こんなに目立つ姿なら、すぐに見つかると思うんだけどなぁ。

 ……ん?

 金の髪に、赤に瞳。

 背中には片方だけどの黒い翼?

 ……あれ…………?

 たまにお兄様に被る人と特徴がそっくり。

 て、同じじゃん!

 いやぁ……ない。

 うん、絶対ない!

 あたしの知ってるお兄様は、全然優しくなかったもん。

 悪戯ばっかり!!

 だから、この優しくて強い王子様とは違う!

 でも、お兄様が本当は優しいってことは、知ってるよ。

 だけどね、この王子様とは絶対違う!

 断じて違う!!

 ……あ。

 そうだった。

 これ、絵本だった。

 作られたお話だったよ……。

 もう、あたし何真剣に考えてんだろ……。

 あたしは自分に呆れて空を仰いだ。

 雲一つない晴天。

 きれい……。

「きゃはは! こっちこっち!!」

「もう、まてぇ~!」

 綺麗な青空に見惚れてた時。

 楽しそうな声が聞こえて、あたしはそっちを見る。

 六人の子供たちが、鬼ごっこしてた。

 ……いいな、楽しそう…………。

 友達同士かな?

 ぼんやり鬼ごっこしてる六人を見てた。

 そしたら、活発そうな男の子と目があった。

 男の子は立ち止まって、すっごく驚いた顔であたしを見てる。

 あたしはすぐに本を持って立ち上がって、走ってそこを離れた。

 お屋敷の中では、見なくてもよかった現実。

 あたしはほかの子と違う。

 それを忘れてた。

 お屋敷の人たちも、町の人も、みんな普通に接してくれるから。

 でもね。

 あたし、同じ年頃の子を見ると、自分が『化け物』だって現実が突きつけられるの。

 お父様たちは『そんなことない』って言ってくれる。

 でも、現実は変わらないんだ。

 お父様が納めているここ。

 レナンを出たら、あたしは『化け物』として扱われる。

 どんなにこの国があたしみたいなのに、人権をくれても、人の考えは簡単には変わらない。

 『化け物』は『化け物』。

 それ以上でも、それ以下でもない。

 あたしはそれを考えて、走ってお屋敷に帰った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。