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神子様は骨が好き!?【これは断じて私が俺様鬼畜王に捕まるまでの話ではありません!】  作者: 福丸 猫太


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59/66

発見


『……という訳でして……』


『はぁ、あずき、という豆ですか……』




 ヘレネとクリュタイメストラの通訳によって、料理長に厨房に来た目的をやっと教える事ができた菜穂は、ホッと一息ついた。




(よかった。これで喧嘩を売っているのは誤解だって分かってもらえた)




 菜穂は、料理長と姉妹が熱心に話しているのを横目で眺めつつ、厨房内をキョロキョロと物色していた。


 運よけば、小豆に似た豆が見つかるかもと思っての行動だったが、目に入るのは大根や人参に似た野菜のようなものばかりであった。




「やっぱり、そう簡単に見つかるわけないか」




 菜穂がポツリと呟いていると、どうやら料理長への説明が終わったらしく、クリュタイメストラが手招きをしていた。




「ナーオ様、料理長がここにある豆全部、見せてくれるにゃあ」




 菜穂は、料理長の後をついていき、一つ一つ豆を見せてもらった。黄色やピンク、水色な変わった色の豆が多く、どれも菜穂の探す小豆に似ていない。




(本当に、小豆みたいな豆ってあるのかな?)




 菜穂が少し不安になっていた所、先を歩く料理長の足がピタリと止まった。




「ナーオ様、次の豆で最後だということです」




 ヘレネに料理長の言葉を伝えられ、菜穂は緊張しながら料理長の差し出してきた豆を見つめた。




(小豆色だ!)




 ちらっと目に飛び込んだ豆の色に、ぱあっと明るい表情を浮かべた菜穂であったが、その豆を手にとった途端、がっくりと肩を落とした。


 その豆は確かに小豆色であったが、その形状から大豆らしいと判別できた。大豆では、菜穂の望む餡子が作れない。




(納豆なら作れるけど……。でも、今欲しいのは小豆から作るアンコなの!)




「本当に、他は豆がないんですか?」




 わずかな望みをかけて菜穂が問いかけると、料理長から話を聞いた姉妹が首を振った。




「残念ですが、ないそうです」


「この厨房、全種類の豆、揃っているにゃ。ナーオ様の探している豆、見つからなかったにゃあ?」




「そんな……」




(小豆がないとアンコが作れない! アンコがないと、治療する度に王様にエロエロキッスをされてしまうじゃないかー! 何が小豆に似た豆があるって? レインボー女神の嘘つき!)




 沸々とした怒りがこみ上げてきて、菜穂は心の中で女神に文句を言う。すると、耳元で涼やかな声が聞こえてきた。




『あら私……嘘なんてついてないわ』


「っ!?」




 それは、聞き覚えのある女神の声であった。


 菜穂は、驚いてキョロキョロと辺りを見回す。




『探しても今、そこにはいないわよ。遠くから、菜穂に声を送っているだけ。小豆に代わるものはあるから、よく見てね』


「ちょっと待って、女神様!」




 慌てて菜穂が叫ぶと同時に、女神の声が全く聞こえなくなり、かすかに感じていた女神の気配のようなぬるま湯みたいな温もりが耳元からパッとかき消した。




「えっ、女神様、もういっちゃったの? そんな……代わりのものが何なのか教えてくれたっていいじゃないのー!」




 天井の方を見上げて菜穂が叫ぶと、ヘレネとクリュタイメストラが駆け寄ってきた。その背後では、料理長がピシッと固まっている。


 キラキラと輝く瞳で見つめられた菜穂は、ひくっと頬を引き攣らせながら二人を見た。




「えーっと、どうしたの? ヘレさん、クリュさん」


「ナーオ様、今……女神様がいたのですか?」


「女神様とお話、したでしょう?」




 二人の勢いに尻込みしつつ、菜穂はこくっと小さく頷いた。




「いた訳じゃないけど、耳元で声が聞こえたかな? 今はもう、聞こえなくなったけど……」


「「きゃあっ! スゴイです!」」


「それで、どのようなお話を?」


「厨房でちゅから、食べ物のこと、でちゅうか?」




 何かを期待するようなその眼差しからそっと逸らし、菜穂は曖昧に笑みを浮かべた。




「大した話じゃないわ。私の探している小豆の話……えっ?」




 菜穂は、突然目に入った虹色の光に驚いて、軽く瞼を擦った。


 その虹色の光は、厨房の奥の方から伸びてきているように見える。




(まさか、この光って女神様が!? だとしたら、向こうに私の探している小豆に似た豆があるってこと?)




「ナーオ様、どうしたのですか?」


「小豆の話がどうかしたのかにゃあ?」




 急に無言になって動かなくなった菜穂を怪訝そうに見つめ、ヘレネとクリュタイメストラは話しかけてきたのだが……。菜穂は、二人の言葉が耳に届かないうちに急に走り出した。虹色の光を追って……。




「「ナーオ様!?」」


『神子様!?』




 突然走り出した菜穂に、姉妹と料理長は驚きの声をあげる。


 既に、菜穂の姿は厨房の奥へと消えていた。






**********






「見つけた! ここにあるのね」




 虹色の光を追って、菜穂は大きな籠の前に立っていた。そこから光が飛び出ているので、この中に探していた小豆に似た豆が入っていると、菜穂は確信した。


 菜穂は、ドキドキと胸を高鳴らせながら籠をそっと開けた。




「えぇーっ、これが、小豆!?」




 籠の中を覗き込んだ菜穂は、信じられないものを見たとばかりに目を大きく見開いた。


 手をおそるおそる伸ばして、確かめるようにそれに触れる。




「嘘でしょ?」




 菜穂は、それを持ち上げた。




「重い……。でも、確かに色も形も見た目そのものが小豆にそっくりだ……」




(大きさを除けば……ね)




 大玉すいかほどの大きさの小豆色の物体を、菜穂は両手で持ちながら観察し、可笑しそうに口元に笑みを漏らした。


 菜穂が見つけたものは、小豆を巨大化したような物体であった。




(うーん、これだけ大きいと煮るの大変そう……。大きなお鍋、あるかな? でも、一粒煮れば、かなりの餡が作れる?)




「どっちにしろ、これであんこが作れるぞー! あー、どら焼き、羊羹、お饅頭、鯛焼き、善哉、お汁粉……」




 巨大な小豆もどきを手に持ったまま、にまにまと幸せそうな笑みを浮かべる菜穂であった。



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