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神子様は骨が好き!?【これは断じて私が俺様鬼畜王に捕まるまでの話ではありません!】  作者: 福丸 猫太


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胎動


 菜穂は走っていた。背後から暗闇が迫ってくる。


 何故か、あれに捕まったらいけないと思い、必死に足を動かす。




「ひぃー……何なの、あれ?」




 背後を振り返りながら逃げていると、目の前にパッとオリオン王が現れた。




「あっ! 王様、ヤバイです。早く逃げないと!」




 慌てて危ないことを伝えるも、全く王は動く様子を見せない。




「王様?」




 一瞬、足を止めて怪訝そうに王を見つめた菜穂であったが、すぐにハッと振り返って後ろを確かめる。




「ゲ、ヤバイ!」




 黒いモクモクと煙のような闇がすぐ後ろに迫っていた。


 ぞわっと全身の毛が逆立つような何ともいえない嫌な恐怖感がせり上がってくる。


 菜穂は、ガシッとオリオン王の手を取ると、逃げようとして引っ張った。




「王様、危ないです。早く、逃げましょう」


「………………」




 だが、オリオン王は岩のようにビクとも動かない。その視線は、迫りくる闇を睨み付けていた。


 菜穂は嫌な予感がして必死に王の手をぐいぐい引っ張った。




「王様、一緒に逃げましょう。早く、お願い!」


「ナホ……」




 この時、やっと菜穂に顔を向けたオリオン王は、フッと柔らかい笑みを浮かべた。


 菜穂は王の表情を見て予感が確信に変わるも、キュッと唇を噛み締めながらぷるぷると首を左右に振った。




「ダメっ!」


「…………すまぬ」




 菜穂の手がそっと離される。それでも菜穂は、何とか王を止めようと必死に見つめ返した。


 頬に王の手が触れてくる。菜穂は泣きそうな表情になりながらも、王をじっと見つめていた。


 どのくらい見つめ合っていたであろうか。それはほんの一瞬であったに違いない。だが、菜穂にはとても長く感じられた。


 何故か急に心がざわめいて、瞳に映るオリオン王の姿がぼやけてくる。


 頬に触れていた王の手が動き、零れそうになった菜穂の涙を優しく拭った。




「……っ、おう……さま……」


「必ず、お前のもとへ帰る……だから、戻ったら……」


「え?」




 菜穂が王の台詞を聞き返そうと口を開きかけた瞬間、唇が王のそれによって塞がれた。


 菜穂は驚いて目を見開く。


 すぐに唇を離したオリオン王は、眩しいばかりの笑顔を菜穂に向けた。




「では、行ってくるぞ、ナホ」


「へっ、えっ……あ? ちょっ……」




 呼びとめようと王に伸ばした菜穂の手はむなしく空を掴む。


 止める間もなく、オリオン王の姿が闇の中へ吸い込まれるように消えていった。




「嘘……だめっ! いかないで……私の骨……いっちゃだめ……やだっ」








***************






「王様ー!」




 大きな叫び声と共に、菜穂は目をぱちっと開いた。


 何かを掴もうと伸ばしている手をぼーっと見つめる。




「………………え? あれ?」




 一瞬、自分がどこにいるのか分からず、菜穂はキョトンと首を傾げた。




「あれ、王様は? 黒い闇は?」




 キョロキョロと視線を動かし、目覚めたばかりのぼんやりとした頭で周囲を見渡す。目に映るものは、天使や花などの描かれた天井や壁、光の差し込んでいる窓。どう見ても、部屋の中である。


 菜穂は、自分の掌を見つめながら狐に包まれたような表情でポツリと呟いた。




「夢……?」




 目に映るものが徐々にぼやけてくる。


 菜穂は溢れてきた涙を指先で拭った。




「やだ、私……何、泣いているんだろう……。別に、王様がどこに行こうと関係ないし……夢の中とはいえ、何で、あんなに悲しく感じたの? でも、嫌な夢……だった」




 ふと、夢の中の迫ってきた闇を思い出して、菜穂はぶるっと身体を震わせた。




「変だ、私……。ただの夢、なのに……」




(何で、こんなに嫌な感じがするんだろう……)




 いいようのない不安が込み上げてきて、酷く胸がざわつく。


 ベッドに横たわったまま、ごろんと横向きになって身体を丸めた菜穂は、自分の身体をぎゅっと両手で抱き締めた。




「あの黒い闇は、悪意……だった……」




 ポツリと呟いた菜穂は、暫し難しい表情をして何やら考え込みながら唸る。




「うー……んー……」




(今の……もしかしたら、ただの夢じゃないかも……)




 菜穂は、何かが起こるかもしれないと予感するのであった。








***************






 同時刻、日の差し込まない薄暗い部屋の中で、ぼそぼそと密談をする者が二名。




『時は満ちた』


『いよいよですか?』


『あぁ……』


『アース国を攻めるのですね?』




 問い掛けにニヤリと口角を上げた男は、返事の代わりに手にした短剣を壁の地図に向かって投げつけた。


 短剣は、地図上のアース国に見事に突き刺さる。




『……っ!』




 わずかに目を見張りながら息を飲んだ相手を横目に、短剣を投げた男は、満足そうに笑みを浮かべた。




『さあて、アースの若造が、どこまで耐えられるか……クックックッ……楽しみだ』




 男が射抜くように壁の地図を見つめる。


 その瞬間、短剣から炎が現れてメラメラと地図が燃えていった。やがて炎はアース国のみ灰とする。




『……また、全てを焼き尽くすのですか?』


『ククククク……』




 静かな部屋に、男一人の笑い声が響き渡るのであった。



ブックマークありがとうございます。感謝。

やる気アップ!

ストック切れかかっていますが、頑張ります。



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