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神子様は骨が好き!?【これは断じて私が俺様鬼畜王に捕まるまでの話ではありません!】  作者: 福丸 猫太


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捕獲


「それでは、ナーオ姉様、ゆっくりお部屋で休んで下さいね。病み上がりだというのに、治癒魔法を使用したのですから……」


「えぇ、そうするわ」




 城に到着した菜穂は、アルテミス王女と話をしながら自分の部屋の近くまで戻ってきた。


 もちろん、菜穂たちの背後からは護衛の騎士がついてきている。


 菜穂とアルテミス王女を乗せた馬車が城に到着し、菜穂たちが馬車から降りるとそこには騎士が控えていた。残念な事に、菜穂が会いたがっていたボルックスではなかった。どうやら、菜穂付きの騎士であるボルックスは、特別な任務ができたらしい。




(なかなか、会えないものね……)




 実は、裏で手を引いている者がいるために会えないでいる事を、菜穂は知らなかった。


 だから、そのうちに会えるだろうとのんびりと構えていた。








 そうして、アルテミス王女と別れた菜穂は、いささか疲れた様子でぼんやりと部屋へ戻り、ベッドへとダイビングした。


 ベッドの上であれこれと考えてごろごろと転がり、ぼーっと天蓋を見つめる。


 時はいつの間にか夕刻、部屋の中は薄暗くなってきていた。




「あー、いろいろな意味で疲れた……」




 目を閉じながら思わずポツリと零すと、突然、声をかけられた。




「それは、ご苦労だったな……」


「えっ!?」




 聞き覚えのある声にびっくりして飛び起き、菜穂はきょろきょろと周囲を見渡す。


 すると、少し離れた位置にあるソファに座っている人影が見えた。その人影はすっと立ち上がると、菜穂に近付いてきた。




「王様!? なっ、何でいるの? ……っていうか、いつからそこにいたのよ!」




 あまりの驚きに敬語が抜け、口をパクパクさせながら指を差す。


 菜穂のすぐ側にまで寄ったオリオン王は、片手をギシッとベッドにつけ顔を近付けながらニヤリと口角を上げた。




「つい先程だ。もちろん、ナホに会いに来たのだろう?」


「私に会いにって……何か用事でも?」




 近付いてくるオリオン王の顔を避けようとし、ずるずると腰を引いて後ろに下がりながら菜穂は引き攣った笑みを浮かべた。


 ベッドの上で座りながらズルズルと逃げるように下がっていく菜穂にお構いなしに、オリオン王はベッドに乗り上げ、菜穂に迫っていく。




「用があるのはナホの方だろう? ナホのために、私からわざわざ来てやったのだ。ありがたく思え」


「え? 王様に用なんてないですよ」


「嘘をつくな。目覚めたばかりだと言うのに、力を使ったと聞いたぞ。かなり、また気を消費したのだろう?」


「あっ! え……それは……」




 その瞬間、菜穂の脳裏に「チューしてー」という台詞が浮かび上がり、ボンと湯気をたてたように顔が真っ赤になる。


 オリオン王は、変化する菜穂の表情を楽しげに眺め、口の端をニヤッと吊り上げながら菜穂の赤い頬を指先で撫でた。




「どうした、ナホ? 顔が真っ赤になっているぞ」


「う、あ……それは……」




 菜穂の視線は自然とオリオン王の唇や指に向けられてしまい、不意に昨日の事を思い起こし、頭から湯気が出たようにますます赤くなる。




(うーわー、私……あの唇とチューして……何度も何度も……いーやー……)




 脳裏に恥ずかしい映像が流れ、菜穂は頭をブンブンと振りながら必死で頭上の空間を手で払う。


 そんな菜穂の言動を黙ってニヤニヤ見つめていたオリオン王は、さらに顔を菜穂に近付けて意地悪く口を開いた。




「昨日の事でも思い出したのか?」


「ちっ、ちっ……違い、ます!」


「別に、ムキになって否定する事もない。気持ちよくなる事は悪い事ではないし、昨日のもっとチューしてーとおねだりするナホはとても愛らしかったぞ。もっと、もっと………と何度もねだって……」


「いーやー、もうそれ以上言わないで!」




 菜穂は、真っ赤な顔のまま慌ててオリオン王の口を手で塞ぐ。


 だが、オリオン王はくつくつ可笑しそうに喉を鳴らすと、口を塞ぐ菜穂の手をぺろっと舐めた。




「ひゃあっ!? 何するのよー!」




 ぞわっと鳥肌がたった菜穂は、パッと手を離しつつオリオン王を睨む。




「いい、その顔……。ぞくぞくするな」




 獰猛な肉食獣のように瞳をギラギラさせるオリオン王は、菜穂を捕らえようと手を伸ばした。


 オリオン王と視線が合った菜穂は、その瞳から目が逸らせず小動物になったような気持ちを味わっていた。頭の中で危険信号が点滅し、警戒ブザーが鳴り響く。


 菜穂は、オリオン王の手から逃れようと必死に後ろに下がった。だが、とうとうベッドのサイドまで来てしまったらしく、掌がスカッと空気を掴むと身体がガクッと落ちようとした。




「きゃあっ!」




 その瞬間、菜穂の身体は素早くオリオン王に支えられ、気付けばすっぽりと胸の中に収まっていた。


 落ちそうになったためか、菜穂の胸の鼓動が高まる。目を閉じると、トクントクンと規則正しいオリオン王の胸の鼓動が聞こえてきた。


 少し落ち着いてきた菜穂は、閉じていた目を開いてオリオン王を見上げた。




「ありがとう……」




 オリオン王は、軽く首を振ると、菜穂をじっと見つめながらゆっくりと口角を上げていった。




「捕まえた……」




 菜穂は、ハッと王を見つめ、嫌な予感に口元を引き攣らせるのであった。



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