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神子様は骨が好き!?【これは断じて私が俺様鬼畜王に捕まるまでの話ではありません!】  作者: 福丸 猫太


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過去1


『ん……私はどうしたのだ?』


 何やらズキズキと痛む頭を手で押さえながら、オリオン王はゆっくりと上半身を起こした。


 目に映るのは、緑のみ。どうやら今、深い森の中にいるようである。




『何故、こんな場所にいるのだ?』


 怪訝そうに眉を顰めながら立ち上がろうとしたオリオン王は、ズキンと激しい痛みを右足首に感じて蹲った。


『クッ……気付かぬうちに怪我を負ったのか?』


 我慢できないような痛みに右足首を確認すると、真っ赤に腫れ上がっていた。




『フン、こんな怪我……』


 いつものように治癒魔法で簡単に治そうと足首に手をかざしたのだが、腫れも痛みも全く引かない。逆に、余計に痛くなってくる始末である。


『どういう事だ?』


 思わぬ事態に自分の掌をふと見つめたオリオン王は、その小ささに驚いて目を見張った。




『これはっ……子供の手!?』




 激しい痛みに気を取られ過ぎていたため気付かなかったが、注意深く周囲を見渡してみると、座っているという理由でばかりでなく、視線が妙に低く感じる。


 それに、身につけている服を確認すれば、所々血で薄汚れており、マントの色が王の金色ではなく、次代の王になるであろう王子のマントである金と銀の交じりになっていた。




『まさか……俺は子供になったのか!?』


 オリオン王は驚いたように呟くと、自分の今の姿を確認すべく少し先に見えた泉へと這っていった。




 ようやく、泉に到着したオリオン王は、すぐに泉を覗き込み愕然とした。


『馬鹿な……』


 そこには、まだあどけなさの残る10歳ぐらいの少年の姿が映っていた。


 多少は予想していた事とはいえ、やはり驚きは隠せない。泉に映る少年も、同じように驚いた表情をしていた。




『そういえば、子供の頃……』


 ふと顔を上げ、改めて周囲を見渡したオリオン王は、ハッと何かに気付いたようにある一点の繁みを見つめた。


 すると、その繁みから急にガサガサと音がして、幼い女の子が現れた。年の頃は3歳ぐらいであろうか。


 その幼女は、オリオン王を見つけるとニッコリと無邪気に微笑んだ。




「こんにちは。おにいちゃん、だれ? ここどこ? あたち、まいごになっちゃったの」


 少年の姿をしているオリオン王は、幼女の話す言葉が分からず驚いた。


『何を言っているのか分からん……。この俺が、言葉を理解できないだと?』




「おにいちゃん、がいこくのちと? おはなし、わからないし、かみのけ、きらきらきれいだから……」


 ニコニコと懐っこく微笑んで側に寄ってくる幼女は、ふとオリオン王の足を見て急に涙目になった。


 幼女の泣きそうな表情に、オリオン王はぎょっとする。




『お、おいっ、泣くなよ……俺はガキに泣かれるのが、一番苦手なのだ』


「あち、いたい? かわいそう……ふぉねちゃん……」


『何と、言っているのだ?』


「あたちが、いいこいいこ、ちてあげる! いたいのいちゃいのとんでゆけー!」




 オリオン王が不思議そうに首を捻っていると、幼女は手を伸ばしてオリオン王の腫れ上がっている足首にそっと手を置いた。その瞬間、何やら温かいものが流れてきて、すぅっと足首の痛みが引いていく。


『これは!?』


 オリオン王は、すっかり腫れと痛みの引いた足首を呆然と見つめた。




「もう、いたくない?」


 幼女が、澄んだ瞳でじっとオリオン王を見つめながら尋ねてくる。


『あぁ……』


 オリオン王は頷きながら、これと同じ経験を過去にしていた事を思い出していた。




(そうだ。あの時もこうやって、この子供に治してもらった……。何故、こんな重要な事を忘れていたのだ? いや、忘れようとしていたのか?)




 心の中で愕然として呟きながら、ニコニコと嬉しそうに自分を見つめてくる幼女を、オリオン王は複雑な気持ちで見つめた。




『確か、この後……追っ手がくるのだったな……。王子である俺を殺しに……』


 すっかり過去の暗殺未遂事件を思い出したオリオン王は、幼女を抱き上げると繁みの中に隠すようにそっと置いた。




『いいか、ここに大人しく隠れているのだぞ。見つかったらお前まで殺される』


「どうちたの、おにいちゃん?」


 キョトンと首を傾げる幼女を見て、これはダメだと天を仰いだオリオン王は、自分も繁みの中に隠れるふりをして、身振り手振りで必死に話しかけた。




 暫く経つと、どうやら何とか通じたのか、幼女は理解したように笑顔で頷いた。


「うん、わかった。あたち、ここにかくれてるね。おにいちゃん、ずっとまってる!」


『絶対に、迎えにくるから大人しくしているんだぞ。そうだ、お前……名前は?』


「なあに?」


 全く分からない様子でパチパチ瞬きをする幼女を見て、オリオン王は舌打ちをする。




『チッ……通じないんだったな。おいっ、俺はオリオンだ。オリオン……オ・リ・オ・ン』


 自分を指差してオリオン王が何度も名前を口にすると、幼女はパアッと顔を輝かせてオリオン王を指差した。




「なまえでちゅね、おりょ?」


『オリオン』


「おりよ?」


『オリオン』


「おりおー?」




 オリオンが諦めたように頷くと、幼女は嬉しそうに微笑んで何度も名前を呼んだ。


「おりおー、おりおー、おりよー、おりよー、おりょー……」


『はぁ……もう好きに呼べ……』


 ドッと疲れたように脱力したオリオン王。




 幼女は、ふとオリオン王の名前を呼ぶのをやめて、自分を指差して口を開いた。


「あのねー、あたちのなまえは……」




 だが、幼女が名前を口にしようとした瞬間、急激に周囲の景色歪み、幼女共々全てが一瞬にしてパッと消えてしまった。


 オリオン王は、真っ白になった周囲の景色に驚き、ふと思い出したように呟くのであった。


『そういえばあの時も、名前を聞きそびれたのだったな……』




(どちらにしろ13年後、また出会う事になるのだがな……)




 何を思い出したのか、オリオン王は、真っ白な空間で寂しげに遠くを見つめるのであった。



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