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防災無線

ちょっと短めです。

◆◇◆


ピンポンパンポーン……ブーブツッ!

「台東区ぅーダンジョン分庁舎ぁーよりのーお知らせえーを致しますー」


 ダンジョン1階層のあちらこちに設置された防災無線のスピーカーから、防災情報が流れてきた。

 ダンジョン産まれの地元住民には、クエスト参加が無いのであまり関係は無いけど、時々起きる大規模クエストが発生すると、ダンジョン地元住民にも被害が及ぶので防災情報は重要視されている。

 普段の防災無線スピーカーは、夕方に夕焼け小焼けか、ドボルザークの新世界が流れてくる。夜闇の柱が天井を覆う前には、子供達が走って家路についたり、大人も農作業や仕事から引き上げる時報代わりに親しまれている。


「台東区ぅーダンジョン分庁舎ぁーよりのーお知らせえーですー。本日ー、15時ー20分、日本政府ー国立天文台ぃー予言局うーからのークエストー発生のー予言ーがー発表ーされましたー」


「あ、予言局だ」


 桜ちゃんが呟く。周りの皆も作業の手を止め、真剣な顔で聞いていた。


「ダンジョンー時間でー約うー72時間後にー、クエスト発生のー予言がー発表ーされましたー。クエストのおー危険度はー、第4からー第7階層をー予言ー、大規模ークエストのおー危険がー有りますー。区民のー皆さんはー、最寄りのーシェルターまたはーバンカー(防空壕)にー避難のー準備をーしてくださいー。繰り返しますー……」


 クエスト発生のお知らせが、勝手に頭の中に鳴るお告げよりも、ダンジョン時間で2日早く予言された。東京時間だと2時間分の余裕しかないけど、クエスト攻略に必要な物資を運び込む余裕ができるので、予言局の頑張りはありがたい。



「あーあ、本当にクエスト発生が来ちゃったわね。ダンジョンクールを終えて東京に帰る予定だったけどなあ」


 月宮班長が嘆息して続ける。


「では、二班はこれよりマニュアルに添って、クエスト発生までダンジョンで待機。今日の残り時間は訓練に充てます」


「「はいっ」」


「あちゃー、早く帰れたら深夜アニメの時間に間に合うと思うてたんやけどなあ、まいったー」


「もう穂の香ちゃん、そんなの録画でいいじゃない、それより練習しっかりやらないと危ないわよ」


「りょーかーい。うう、あっ、それだと明日1日開くんやけどどうするんですか? 大規模クエストやったら手持ちのポーションとか足りひんから、素材採取したいけど」


 穂の香さんの心配も尤もだ。HPや魔力の回復ポーションは、大規模クエスト発生時に多く消費されるから、いくら予備があっても足らないぐらい。

 今頃、ダンジョンの街のポーション屋さんには、住民が殺到している頃だろうし、品薄なのは確実。自分達で素材回収して、生成の壺でポーションを作ればいい。

 悔しいけど、この技術は、あの(・・)朧研究所の研究成果だ。


「そうよね……明日だけど、訓練とポーション素材採取を兼ねて、低階層へ探索に潜ろうかしら……皆の意見は?」


 ポーションの質を上げるには、効能の高い素材の手に入る深層の方がいいけど、月宮班長は、安全を取って低階層の素材を集めるのを選択したみたい。


「どの深さでもいいよー」「兄様が行くなら」「え……っと行きます」


「じゃっ、決まりね。それと、スティーブ教官はどうされますか? 二班より1日早く入った一班は、深階層に潜ってるそうですけど?」


 面白そうに僕達の会話を見ていたスティーブ教官が、自分へ話がふられると、少し考えて答えた。


「うーん、そうだね。うちの一班は今、幽世現象の時ダンジョンに堕ちた人を救助するために、5階層に潜ってるからね。一班が長引くようなら、できればそっちを手伝ってもらいたいかなあ」


「社長の許可がいるとは思いますが、二班はどうせ潜るつもりでしたし大丈夫ですよ。皆大丈夫?」


「「「了解」」」


「ありがとう、皆さん、明日はよろしくお願いします。」


「じゃあ、私達も明日の偵察任務装備で練習するわよ」


「「はいっ」」


 二班の意志は、明日ダンジョンに潜って素材回収に決まった。


「あ、ちょっと待って、良い物が有るんだ」


 僕達が、明日の深部探索装備用の銃を用意しようとした時、ステーブ教官がガンバッグを置いているところまで走っていった。僕達は、何が有るのか期待を込めた眼差しでステーブ教官がカバンの中身を取り出すのを眺めている。


「はいこれ」


「うわー」「ほんまー」「やったー、社長本当に買ってくれたんだー」「……」「凄い」


 戻ってきたステーブ教官の手の中には、変わった銃が収まっていた。


 MPS AA-12(オートアサルト12)

 散弾銃なのにフルオート射撃ができる男のロマン銃。


 ショットガン…それは男のロマン。ただでさえ面制圧ができる上ロマン銃なのにフルオート連射までできる、男の子なら誰でも考える俺の考えた最強銃。そうこの銃は、男のロマンを詰め込んだショットガンだ。

 ロマンだけじゃなく、ショットガンと言えば、射撃の時強烈な反動が付き物だけど、このAA-12は、ストックの中に反動を逃がす機構を備えていて、うちの女子でも楽々撃てる親切設計。更に分解清掃もやりやすくてメンテナンス性にも優れているし、マガジン交換ですばやい弾薬補充ができる火力の高さが良い。


 僕らPMCがAA-12を使うには、耐久性とか色々まだ実戦で試さないと駄目な部分もあるけど、散弾だけでなく、対モンスター戦で有効な特殊弾が使えるので、戦い方に幅が出て嬉しい。


「桜ちゃんの装備で申請してたね、どうぞ使ってみて」


 AA-12と一緒に、マガジンポーチも桜ちゃんに手渡している。


「ステーブさん、ありがとうー」


 桜ちゃんが、目をキラッキラさせながらAA-12を受け取っていた。

 正直女子小学生がショットガンもらって、目をキラキラさせてるのもどうかと思うが、とても嬉しそうで微笑ましい。


「桜ちゃん、それだけじゃないよー、テレレテッテテーン、さーんじゅう連ドラムマガジン(旧大山のぶ代風)」


「凄い凄い」


 ステーブ教官から、AA-12を受け取った桜ちゃんは、急いで射撃レーンに走っていった。


 大事そうに、凶悪なフルオートショットガンを抱えて走っていく少女……正直どうかと思うのですが。



「それじゃあ、私達も明日の装備で訓練するわよ」


「「はいっ」」


 僕達は、夜闇の柱が大穴から湧き出し、光の反射で中央の大木を血の色に染める夕方頃まで、射撃訓練を続けた。

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