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月を仰げば。  作者: 水城
第一章
17/18

15‐別Side



バタンともパタンとも言わなかった扉。

強い力に押され、バッターンといった感じか。


漫画やドラマでよくあるような両開きの扉が開かれ、そちらへ目をやった。


「どうかしたか?」


あえて存在を無視することもできたのだが、そうしたらそうしたで、後々面倒な事が起こる事は分かり切っていた。

今はその存在を認めてやろうという気持ちで、突如静寂を破って人の部屋へ乱入して来る不躾な野郎に問うた。


「朧月、の正体、教えやがれ」


「…何をそんなに慌てて来たのかと思えばそんなことか。君に教える気は無いよ、ケルベロス」


強い力というのはその場の勢いだったのだろうか。

ぜーぜーと息を荒くしている姿は、普段の彼の姿からはとても想像がつかない様だった。


「ちっ…あいつ、どこにいんだよ。場所の特定が出来ねぇし…つか、俺はテメェに頼まれて、朧月の残骸漁ったんだぜ?場所くらい教えてくれてもいいだろうが」


「場所?それは君が特定したんじゃないのか?」


「存在が有った場所までは特定できた。どっかの誰かさんのおかげで捕まえられなかったけどなぁ?」


語尾を跳ね上げ、こちらを睨むものの口元は緩やかに弧を描いている。

何が面白いのだか。

サディスト的な思考回路の持ち主のくせに、本能はマゾヒストだ。

そんなに、私の子を捕まえたいのか、追いかけたいのか。


「君は朧月を捕まえてどうしたいんだ?」


「あー?あー……特に考えてねぇ」


「…バカだな」


「うっせぇよ。捕まえるまでが楽しいんだろうが。別に捕まえたら捕まえたでどうもしねぇ」


本当に朧月バカというか。

先程まではおそらく、こいつら専用の情報専門科特別室にでもいたのだろう。

そこからわざわざ走って来たという事は暁乃に勝負でもしかけたのだろうか。

そして、無残にも負けたといった流れか。


「面白いゲームになりそうもないな。そうだな、ヒントをやろう。朧月は君が惚れそうなほど可愛い」


「……ああ?」


「君はまだ恋というものをしたことがないだろう?可能性としては無いとも言い切れない」


「女か?」


「君の想像にお任せするよ。私的にはあの子が悲しまなければそれでいい。あの子が泣かなければそれでいい」


最初に出会った時は虚ろな目をしていた。

それでもまだ、意思の根は切れていない、芯だけはしっかりと残っていた。

ただ、その根が切れるのは時間の問題だろうと私は思った。

少し理事長として被っている仮面から本音が漏れる。

ケルベロスの一人、といっても実質、彼が動かしているため彼がケルベロスと言っても過言ではない。

彼は少し考えるようなしぐさを取ると、企みを含んだ、怪しげな笑みを浮かべる。

また何か厄介な事をしでかしてくれそうだなと思いつつも、私は仮面を被り直す。


「つまるところ、朧月は今、テメェの身近にいるってことだよなぁ?」


「さぁ、どうだろうね。して、どうする?」


そう問えば、笑みに乗った感情が更に深く、色濃く表れる。


「ぜってぇ捕まえる。捕まえて…そうだなぁ。テメェのその変化の無い顔が歪む様も見てみたいなぁ…」


目をぎらつかせる様はまるで本能のままに獲物を追いかける獣の様だ。


「あの子に酷い事をするつもりなら私は君の目に留まらないように、あの子をかくまうよ。北極でも南極でもあの子に合わせた環境にね」


「親バカかよ」


「似たようなものだよ。ああ、そういえば”あの子”はいいのかい?君が探してる幼馴染…だっけ?」


「…情報が有る訳無いだろ。10年以上前の事だぞ?今頃、どっかの家で暮らしてるだろうよ」


そうか、と相槌程度に返事をする。

彼は、興味から朧月を追うが、興味以外でも人を探していた。

大切な人、だったらしい。

彼が初めて見せるその表情は私の知る彼からは絶対に出て来ないような優しげで儚い、ある意味でそれは純粋な子供の見せる顔だった。


「君は大変だ。二人も探さなくてはならない。しかも片方は情報が皆無と来ている。諦めた方が良いだろうに、何をそんなに必死になっているんだ?」


「うっせぇよ。約束だ。そいつと約束してんだよ」


「ふぅん。まぁ君の思い出話に付き合う程私は暇じゃないんだがね」


「聞いて来たのはそっちだろ。もういい。こっちだってテメェの胡散臭ぇ顔を一秒だって見たくねぇ。邪魔した」


今度は何の勢いも無く扉を開いて出ていく。

わざわざ「邪魔した」と言って出ていくあたり、礼儀正しいのか正しくないのか分からない。


「幼馴染…か」


幼馴染というには多分、期間的に短いだろう。

施設に居た時に知り合った年下の女の子だと彼は言っていた。

彼に恋をした事が無いと言ったが、彼が自覚をしていないだけで、他から見ればそれはまた恋に当てはまるものではないかと思う。

彼自身、まだ分かっていないのだろう。

恋愛と言う物がいかようなものなのか。


「子供はいいものだ」


知らない、未知なる世界がまだまだ待ちかまえているのだから。




一か月以上放置してしまい申し訳ないです。

予想外にリアルが忙しくなり…。

これからも多分、なかなか更新できないかもしれません。

月1ペースくらい…ってとこかなぁと思います。

それではまた次回更新でお会いしましょう。

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