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涼ちゃんが、話が長くなると言って、お茶とお菓子を出して来てから、改めて話が始まった。
同室者となる、木下新という人物について。
「えっとなぁ、ぶっちゃけなんていったらええんやろか…んー…っとなぁ」
どうやら、どう説明していいのか分からないらしい。
木下新というのがどういう人物で、何をもたらし、俺に何かしかけてくるのだろうか。
疑問に思う事は多々あるが、ここは涼ちゃんに任せる。
今は知りたくても知る事が出来ない。
「先ずは、さっきも言ったけど、一年の暴れん坊。入学して早々、二、三年の不良グループに目つけられたんやけど、全部返りうちにしたん。まあ、そこまでならまだええんや。なんや、変に絡んでくる人間に対しても殴りかかるようでな、厄介なん。目合っただけで病院送りになったやつもおるんや。そんなんと同室にしてもうたらあきのん、絶対逝ってまうで!」
あれ、今、勝手に殺されませんでした?
不良の中の不良。
人畜無害な奴でも、無抵抗な奴でも、目を合わせただけで殴り倒す。
付いたあだ名は「撲殺の新」。
そのまんまな気がするのは、さておいて。
「一年の、暴れん坊…か」
それだけ強いという話なら、巷でも名の知れた者なのかもしれない。
ほんの少しだが、興味がわいた。
「あきのん、部屋どないしよ…二年の奴でもええな……」
「そのままでいいですよ」
「ああ、そうやね…、んじゃあ……え?え…えぇぇえええ!!!???」
サラリと言ってやれば、上手い事頭で理解できなかったらしく、流されたかと思いきや、時間差で反応された。
「ちょ、あきのん!?聞いてた?今の話聞いてた!?俺の話聞いてた!?」
激しく動揺を見せる涼ちゃん。
相手が強かろうが、暴れようが、正直それくらいなければ、俺にとっては面白くない。
”面白くない同室者”よりも、”面白い同室者”のほうが、期待できるだろう?
「聞いてましたよ。誰でも良いです。殴って来るなら避ければいいし、暴れるなら放置すれば良い。邪魔ならどかせばいい。それでも攻撃してくるなら攻撃し返せば良い。やられたらやり返す。それが俺ですから」
更に、淡々と答えてやれば、あれだけ騒いでた涼ちゃんが静かになった。
「強気ですね、暁乃様は。力で勝てるんですか?”あちら”の腕ならともかく」
「そうやて!そないな、か弱そうな体で何が出来るん!」
要のキャラチェンジの速さには驚きだ。
なんて、見当違いな方向に驚いていた。
「これでも、結構力は有る方なんですよ?”あちら”よりかは劣りますが」
あちらあちらと、要と俺で言っているが、あちらというのは、二次元方向のこと。
というか、さっき、何気に、さらりと言いましたね。要さん。一応、トップシークレット並だと自分でも思うんですが?
「そうは見えへんけどなぁ…」
と、俺の身体をマジマジと見出す涼ちゃん。
何気に、”あちら”という、意味不明な言葉に反応を見せない事にほっと胸をなでおろす。
「俺、筋肉つけたいんですけど、付きにくいんですよね。体は薄いですけど、腹筋とか意外と綺麗に付いてるもんですよ?見ます?」
と、徐に、シャツをまくろうとした。
「おお、見…ったぁぁぁぁああ!!!何すんねん!要のドアホ!!」
「お前こそどういう神経してんだ?あ゛あ゛?暁乃様の腹筋を見るんだと?一千万年早いわ」
ちょ、要さん、それ人間じゃ無理ですよ?
一千万年前だったら人類誕生してませんよ?
「見る」といいかけたのだろうか。その瞬間に要が顔面を容赦なく殴り付けた。
「マジ、痛い…要、なんでそないに怒るん…あきのんが見せてくれる言うてんに」
「さっき忠告したのはどこの誰だ?危険対象としてはテメェも入ってんだよ。理性保てるんか?この変態が」
「うえぇ!!マジか。いや、確かに、理性保てるか保てないか言うたら保てないかもしれないけど、ええやん!要は過保護すぎやて!」
なんだか、よく分からないが、俺は人に、変装を解く事はもちろん、身体すら見せてはいけないらしい。
あれ、それって無理じゃないか?




