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一先ず、俺は何故か怒り気味な要を宥め、迫 涼成こと涼ちゃんの部屋へ入った。
「さ…、涼ちゃんと要ってどういう関係なんです?」
「うん?ああ、いとこなんよ。な」
「肯定したくないがな。こいつとちょっとでも血がつながっていると思うと…殺したくなる」
要は完全にキャラを失っており、いつもの殴りたい笑顔とは逆に常に睨みつけている。
完全に格好と表情が一致しない。
いや、むしろ、一致しているのかもしれない。やのつく自由業的な。
しかも、ただのチンピラならまだしも、頭脳派というか策略家というか、鬼畜というか。
とりあえず厄介な方の印象を受ける。
「ほなら、まずは寮の説明からやな。あきのんは何処まで知ってん?」
「あき…えっと、全寮制の男子校…で、やたら金がかかっているくらいしか…」
”あきのん”というあだ名が決定してしまっている事は気にしないでおこう。
へらへらとした顔から一転真剣みを帯びた顔つきを見せられる。
よく見れば、二人の目元辺りがにているかもしれないかもしれない。
ちょっとダメな弟と、きっちりしているお兄さん…な感じだ。兄弟だとしたら。
「なんや、何も知らんのやな。でもまぁ、その野暮ったい格好は正解やと思うで?そない整った顔しとったらいつ襲われるか判らんでな」
「襲われる?」
「うんうん。ああ、そっか。えっとな、ここ男子校やろ?」
要は全く口をはさむ気が無いらしく、ただ二人のやりとりを見ていた。
「男子校ですね。それが何か?」
「思春期に男だけってのもな、なかなか酷な話なん」
それは、思春期ならではの男の悩みをどうにかするという話だろうか。
ソープ嬢でも呼んでるのか?それとも女子を連れ込むのか?いや、全寮制か。
「ほんでな、男どもがとる行動が、動物実験でもよぉあるんやけど、同性を性的対象とするんや」
「…ドウセイ?を?」
いまいち、今のところを変換できなかった俺は反復するように聞き返した。
「ああ。同じ性別の相手。男同士や」
「………ま…じで…」
予想外の回答に頭を抱える。
一応、ここは財閥や小企業から大企業まであらゆる分野の後継者候補などなどが集う金持ち学園。
それなのに、こんなところでスキャンダルになるようなことをしているのかと思うと、頭が痛くなる。
「あきのんは偏見持つん?」
「いや…まぁ、別に、いいというような…感じです。はい」
「この学園に居るんは殆ど持ちあがりやで、逆にそれが当たり前になってんよ。やで、まぁ濡れ場とか見た時は、気にせず素通りしてやってな?」
「ぬ、れ場…まさか、そんな…発展してるんですね」
我ながら微妙な感想だと思った。
”発展している”だなんて。
「あ、それで、なんで俺が襲われるんです?」
「あれ。あきのん、無自覚なん?要言わんかったん?」
「言った。本人は完全に無自覚。理解もできない」
此処で話をふられ、ようやく要が口を開いた。
いや、それはちょっと酷くないですか?理解はしてますよ?
「大変やなぁ。まぁそのうち理解するやろうから、今はいいか」
なんとなく、先程の要の言葉と被る。
今はいいって何だろうと気になる。
「あ、決して、あきのんがぶさいくとかってわけじゃなからな?むしろその逆やで。そない、気にせんといてな」
「はぁ…」
余程、深く考えていたのか涼ちゃんに言われ、顔を上げた。
「とりま寮な。部屋は二人一部屋。あきのんは一年生やで、一年生のフロア。部屋番号は114。同室者は…あー!!!」
涼ちゃんは手にした資料をパラリとめくり、急に叫び出す。
同室者に何か問題でも有るのだろうか。
「どないしよう!要!これ、理事長が決めた筈だよね!?」
「何がだ」
「同室者、めっちゃ荒っぽい子なんやけど。そうや、今年の一年生、一人余ったもんで丁度そこにうまったんや。どないしよう!あきのんが…あきのんがぁぁああ」
またもや叫び出した涼ちゃんを要が殴る。
ボコッなんて、へこむような音がしたことは気にしない。気にしない。
涼ちゃんはぶたれた頭をうぅ…とうめきながらさすっている。
「誰だ。同室者は」
「木下君。木下新君だよ。一年の暴れん坊。あの生徒会ですら手を焼いてるんだよ」
この学園に通っている人物についてまだ何も知らない俺にとって、それが誰なのか、また”あの”とつく生徒会についても知らなかった。
とりあえず、これからの生活の課題の一つに同室者について、考えなければいけないことは目に見えていた。




