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「・・・というわけだ。わかったなら帰りなさい。」貴志が先生の説教から解放された頃には学校内にほとんど児童は残っていないようだった。貴志は職員室を出て重い足取りで玄関に向かった…
今日はなんてイヤな日だったんだろう。靴箱の前でマフラーを巻いていつものように靴箱を開けると、ドサッと音を立てて何か白いものが落ちた。それは真っ白な包み紙で、赤いリボンが十字に結ばれていた。貴志が拾い上げると表には「中島君へ」裏には「桐野愛子より」とかわいらしくマジックペンで書いてあった。それを見て貴志は今日がバレンタインデーであったことを思い出し、急に顔が熱くなり心臓が早くなり、手が震えチョコを落としそうになった。
そう、それはこういう日だから、チョコレートに違いないんだ。まさか大好きな桐野さんからチョコを貰えるなんて夢にも思わなかった。いや正直に言うと貴志は、桐野さんがチョコレートをくれる妄想ばかりしながらこの1週間を過ごして来たのだ。そこで貴志の頭にふと考えがよぎった。僕は間違えて勇太の靴箱を開けてしまったのではないか?しかし、今開けた靴箱をもう一度見ると、自分の靴が入っている。靴箱の扉にも「中島貴志」と書いてある。そして、1つ下の「中島勇太」と書かれた靴箱を開けると、中には上履きが入っていた。勇太はもう帰ったんだ…
その時、人が話す声が聞こえた。誰か来る。貴志は慌てて包み紙をランドセルにしまい靴を履き替え、出来るだけ平静な感じを心がけて学校を出た…




