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第9話 落ちなかったシャンデリア


中央劇場には、八百人近い観客がいた。理由を伏せたまま避難させれば混乱する。かといって事故の可能性を隠すわけにもいかない。レオンの指揮で、観客は順番に外へ誘導された。エレナたちは天井設備を調べる。


「同じです」


セオが言った。新型光晶石。ARCANA旧型制御器。そして高負荷。グレンが固定金具へ測定器を当てる。


「振動が出てる」


まだ亀裂は小さい。だが確実に始まっている。


「あとどのくらいで落ちたと思います?」


ミアが尋ねる。グレンは首を振った。


「分からん。一週間かもしれん。一年かもしれん」


「そんなに幅が?」


「金属は時計じゃねえ」


エレナは固定金具を見る。今回は落ちなかった。負傷者もいない。新聞の一面にもならない。誰も、この夜に起きなかった事故のことなど覚えていないかもしれない。


「クロフォード」


振り返るとレオンがいた。


「全員出た」


「ありがとうございます」


「これでいいんだろう」


エレナは一瞬、意味が分からなかった。レオンが天井を見る。


「あなたたちの仕事は」


エレナはレオンが何を言おうとしたのか、理解した。


「はい」


エレナも天井を見る。


「これが一番いい結果です」


事故は起きてない。それだけだ。だから功績にもならない。それでもいい。事故調査官の仕事は、事故を解明することだけではない。次の事故を起こさないことだ。



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