第8話 事故を調べるだけでは、事故調査ではない
原因が分かれば終わり。そう思っている人は多い。だが事故調査局の仕事は、そこで半分だった。
「王都に同じ組み合わせが何基あるか調べます」
エレナが言うと、ミアが固まった。
「王宮だけじゃないんですか?」
「新型光晶石は市販品です」
「……あ」
「ARCANA製制御器も、二十年以上前には広く使われていました」
ミアの顔から血の気が引く。
「同じ事故が起きる?」
「条件が揃えば」
調査局から緊急勧告が出された。ARCANA製旧型制御器と特定の新型光晶石について、互換性確認が終わるまで高負荷での使用を停止すること。
王宮。劇場。ホテル。商館。公共施設。次々に照明設備の確認が始まった。
その日の夕方、事故調査局へ連絡が入った。王都中央劇場の天井照明に、微細な揺れ有り。同じ新型光晶石。そして、ARCANA製制御器。
「救助隊を先行させる」
レオンが言った。
「まだ事故は起きていません」
「だから行く」
エレナは彼を見る。
「事故が起きてから救助するより、起きる前に客を出した方がいい」
返す言葉はなかった。
「……そうですね」
レオンが少しだけ笑う。
「初めて意見が合ったな」
「二回目です」
「二回?」
「王宮で生存者を優先したときです」
「ずいぶん不満そうだったが」
「正しいと思うことと、腹が立つことは両立します」
「やっぱり面倒だな」
「よく言われます」
前回は少し噓をついたが、今度は少しだけ、本当になってきた。




