第5話 古いものは、本当に危険なのか
「二十七年」
ミアが言った。
「何が?」
「王宮のシャンデリアです。設置されてから二十七年経っています」
事故調査局の資料室。机いっぱいに、王宮から取り寄せた記録が並んでいた。
「古いですね」
「だから危険、とは限りません」
エレナが答える。
「でも二十七年前ですよ?」
「ミアの家は?」
「築三十四年です」
「危険?」
「……普通に住んでます」
「そういうことです」
古いことは事実。危険であることは結論。両者は同じではない。記録を追っていたセオが顔を上げる。
「見つけました」
「何を?」
「制御器の型式です」
書類を回す。ARCANA ALC-17。グレンが覗き込んだ。
「アルカナ製か」
「固定具だけではありませんでした」
制御器も。導路の一部も。二十七年前のARCANA製。一方、光晶石だけが半年前に最新型へ交換されている。ミアが言う。
「じゃあ、やっぱり古いARCANAと新しい光晶石の組み合わせ?」
「可能性はあります」
「今度こそ?」
「試すまで分かりません」
グレンが笑った。
「だいぶ教育されてきたな」
ミアが頬を膨らませた。そのとき、資料室の扉が開いた。レオンだった。
「事故調査局というのは、部外者を簡単に入れるんですか?」
エレナが尋ねる。
「王宮事故の救助記録を持ってきた」
紙束を机へ置く。
「それと一つ、気になることがある」
「何でしょう」
「昨夜、救助に入る前からシャンデリアは揺れていたと言ったな」
「はい」
「警備兵から話を聞いた」
レオンが記録を開いた。
「祝賀会が始まる二時間前にも、微かに揺れていたらしい」
エレナの目が止まる。
「二時間前?」
「ああ。ただ、異常とは思わなかった」
「その時間、シャンデリアは?」
セオが整備記録を確認する。
「点灯済みです」
エレナは時計を見る。事故発生まで。約三時間。昨日の再現試験も三時間。それでも異常は起きなかった。何が違う?
「王宮では十二基、同時に使っていました」
エレナが呟いた。
セオが顔を上げる。
「負荷か」
「可能性があります」
一基では起きない。だが十二基なら?エレナは立ち上がった。
「試験条件を変えます」




