昔話
今日のリーザおばあさんは村の子供達に御伽噺を話していました。
王子様と猫をはじめ、ドラゴン退治の話や王子様とお姫様の恋の話など、子供達も何度も聞いたであろう話を飽きる事なく聞くことができるのは、おばあさんの知っている物語の量と話し方にあるのかもしれません。
「ねぇねぇ!リーザおばあちゃんはお姫様だったってほんとー?」
おばあさんがお姫様の話をしているときにそう聞いたのはエリクの娘でした。
「おいアニー、まだそんなこと信じてたのかよ」
エリクの息子は呆れたように言いました。アニーと呼ばれたエリクの娘は、ムッとした表情で兄を睨んでいた。
「おやおや、兄妹喧嘩かい?ふふふ。アニー。私はお姫様じゃないんだよ。」
おばあさんがそう言うと、アニーはがっかりした様子でなーんだと呟きました。ほらなー!と兄はアニーを小突いた。それを見ておばあさんは言いました。
「そうだね。たまには私の昔話でもしようかね。」
少し飽きていた子供達も、楽しんで御伽噺を聞いていた子供達も、おばあさんの言葉に早く早くと急かします。おばあさんはゆったりした口調で話し始めます。
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昔、私は王都で暮らしていました。
王都はこの村よりもとても広くて、沢山の人が暮らしています。私は王様や王子様やお姫様の住むお城で、お姫様の身の回りのお世話をするお仕事をしていました。
お姫様は綺麗な金髪と青い瞳の可愛らしい女の子でした。
お姫様のドレスを選んだり、お姫様とお話ししたりとても楽しい時間を過ごしました。
そんなお姫様もあっという間に成長し、ある日遠くの国の王子様のところへお嫁に行くことになりました。お姫様も寂しいだろうと何人かはお姫様について行くことになりましたが、私は選ばれませんでした。
私は少しお休みをもらい王都の街を歩いていると、とても美味しそうな匂いがしました。そこでふかし芋を売っている男の人を見つけました。美味しそうな匂いのするふかし芋をひとつ買って食べました。それはとても甘くてとてもおいしかったのです。
でもこの甘い芋がさっぱり売れないと男の人は言いました。こんなに甘くて美味しい芋を食べたことがないのは勿体無いと思い、お城の料理人に相談しました。
そして甘い芋で沢山のお菓子を作り、王様も王子様も大変気に入りました。ふかし芋を売っていた男の人が持ってきていた甘い芋は全てお城で買うことになりました。
私は男の人に感謝され、そしてプロポーズされました。
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ここまで話すと女の子達は「キャー!」と騒ぎ出しました。おばあさんはその様子に満足して空を見上げました。
「あなた…」
誰にも聞こえないように呟きました。
いつものようにおばあさんの横に丸くなって寝ていたリリだけはその呟きが聞こえていました。
リリは起き上がり、背伸びをするとゆっくり歩いてどこかに行ってしまいました。
「さあ、そろそろ今日のお話はおしまいだよ。」
おばあさんが言うと、また昔話してねー!と子供達はそれぞれ帰っていきました。
誰もいなくなるとおばあさんは「よっこいしょ」と立ち上がり、家とは違う方へ歩いていきます。そして、村の外れの墓地に行きました。そこにはすでにリリがいました。
「リリ。あなたも来てくれたのね?」
そう言っておばあさんは微笑んだ。そしてリリのいたお墓の前に膝をつきました。お墓をじっと見つめて顔の前で指を組み、瞳を閉じた。
「あなたの教えてくれたアマイモは今でもこの村から王都へ出荷してるのよ。国王陛下から今年も沢山収穫できる事を祈るってお手紙が届いてるんだから。」
おばあさんはそう言いながら涙をひとつ流しました。
「あなたのおかげで私はこの村という居場所をもらえた。あなたのおかげで今でも幸せに暮らせているわ。」
涙声で呟くおばあさんの横でリリは昔の事を思い出していました。
『私はお嫁に行くからお兄様とリゼのことはよろしくね。』
ずっと前にそんなことを誰かに言われた気がする。誰だっただろう。そんな事を考えながらリリはリーザよりも一足早く家路についた。




