#61『急報』
「実はゼン、君たちが到着する少し前に、ここに魔族の使者が来たんだ」
「使者?と言うことはここに皇帝陛下がお隠れになっているのは敵に気づかれているのか?」
「あぁ。ただし向こうは平和的解決を望んでるらしいから今は心配なさそうだよ」
ルミシスは青い顔で頷いた。
「平和的解決!?」
そしてグラリオが机に叩きつけるように降伏勧告書を置いた。
「敵の要求は我らが隠し持っているとされた石の返却、恐れ多くもこ……皇帝陛下の首級献上、エレメントの一部割譲、軍の解散、そして内務局を魔王軍差し出せとある」
「石?」
(もしやイッシーのことか……?)
ゼンは推論を立てた。
「しかし、そんな石などない、と言う話だろ?」
この言葉に皆が驚いた。
「何故ゼンが知っている?」
ケイミューが腕を組んでゼンを見据えたが、ゼンは敢えてはぐらかした。
「それはルミシス卿に後で話したい。先に進めていいか?期日は?」
━━━━━━━━ 「10日後の0時」
「なかなかのんびりだな?」
「だいたい3日が相場だが、ここ禍学は城として見ればかなりの堅城、落としにくい城は一週間は猶予があるのが定石だ」
このロータスの説明にゼンは首を傾げた。
「その間に何か出来ることはないか?」
「そう!そこを突く!」
グラリオはやや早口でゼンに説明をした。
「敵はおそらく10日全てを議論に費やすと思っているだろう。だが、すぐに仕掛ける」
「なるほど……奇襲か……」
ゼンが顎を触りながら少し考えた。
「ケイミュー、味方の戦力と敵の予想戦力は?」
このゼンの問いにケイミューが立ち上がり、黒板に書き出した。
魔族が5,000、こちらはかき集めても4,500としている。
「こちらはかなり損害があったはずだが、それでもまだ推定兵数では互角なのだな……」
「その数はあくまで主戦場がここ、禍学専門学校での籠城となった場合だ。そして兵数よりも厄介なのは武器が違いすぎる」
グラリオは近代軍事について明るい。兵数だけでの算盤ではなくクォリティについての補足を入れた。
「敵の持っている武器は全て最新鋭の人間の武器を多く持っている。対してこちらはほぼ丸腰で逃げてしまったから同じ数だが、兵力では向こうが格段に上だ……。更に魔族のため全員魔法が扱える」
こうしてグラリオの絶望的な補足説明は終わった。
(だから奇襲か……それしかないと言えなくもないな)
そう思ったゼンだったが頭を切り替えた。
「だが、なにか対策があるんだろ?」
ゼンは横目でケイミューを見た。
「実はお前に賭けられていた賞金はエレメン奪回に使うということで、皇帝陛下からお赦しを頂けた。周辺にいるギルドたちであれば駆けつける者もいるかもしれない」
これには膝を打ってゼンは感心をした。
「それは考えましたね」
「そして何よりも味方にゼンがいれば生存率が跳ね上がると希望を持つギルドが出てもおかしくない。つまりゼンは徴兵の広告塔としても有効だと思っている」
━━ その時 !
ドクン……!と、ゼンが今まで経験したことのない禍動(魔力)探知を感じた。
(既にここまで進軍したか!?いや、数は少ない……単騎でこの力は……)
ゼンの異変にケイミューの黒板の手が止まった。
「どうしたゼン?」
ドンドンドンッ!!
それと同時に突然ドアを激しく叩きつける音とパニックになった兵士の喚き声が職員室をこだました。
「ご注進!ご注進!」
「かまわん!入れ!」
兵士は慌ただしくドアを開けて叫んだ。
「いま……!門前に、エレメント侵攻の総指揮者と名乗る魔族が……!ルミシス卿とゼン様に会わせろと!」
全員が立ち上がった。




