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【毎日投稿/全45話完結予定】パンドランディング 〜まじめ+天然+バカ+毒舌=4人が織りなす壮大謎解きアドベンチャー〜  作者: 小野兄子


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#11 『洞察』

【前回まで】


ゼンとフィーナの逃亡事件に手を焼く王宮はロータスと言う地方官を召集した。

ロータスの実力はいかに…

まず、ロータスは「ゼン」と謎の少女「フィーナ」について調べることにした。

現場主義のロータスはまず学校周辺状況だけでも把握しに校門の外を見回った。


(立派な門だ…この高さを少女一人を担いで飛び込み、そして飛び降りたのか…)


試しに、門の壁を蹴って上に飛びあがろうとしてみたが、常人であるロータスでは数十センチしか上がらない。


その時の情景をイメージするためそれを何度も繰り返していると、不幸にも通りかかった守衛に不審者と思われて連行されてしまった。


この守衛は元々この学校の職員であり、引退したとはいえ、一通りの戦闘訓練を積んだ禍動士であった。


ぷかぷかと浮きながらロータスは連れて行かれてしまった。


(なんと…これが禍動か!)


真面目な顔で禍動の初被体験に感動した。


その後、身分を証明しようにも内務局の正式な辞令は5日後であったから宮廷証を持っておらず、散々にこの老人から嘘つき呼ばわりされてなじられた。


冷静なロータスは彼に内務局へ照会を依頼したところ、すんなり誤解が解け、外出中の教頭は慌ててロータスにお詫びをする始末だった。


これがかえって良かったのは教頭と非公式ながら30分程度の聞き取りが出来たことだった。


教頭の話のほとんどは既に報告書で目を通していた内容程度のことだったが、唯一の収穫は


(この男、なにか嘘をついている)ーー


と確信できたことだった。


時間経過をロータスが話した際にふと


「ケイミュー閣下も無事で何よりでした」


と報告すると教頭はやや気まずそうに


「それは良かった」


と喜んだのだった。


ロータスはごく自然に流したが、獲物が罠にかかったと内心で小躍りした。



実は騎士団の敗北は名誉にかかわることなので厳粛に秘匿とされていた。


普通なら


「その方は?」


「その方にゼンがなにを?」


など、何も知らないはずの教頭はそう言うべきだった。

念のため調べてみてもケイミューがこれまで教頭と面会した形跡もない。


そもそもケイミューはたまたますれ違った騎士から校長の要請を聞き、


「最近肩がなまっててな」


と、半ば遊び半分で加勢したに過ぎないことも明らになった。


だから校長を通じてケイミュー参戦は知らされているわけでもない。

このことから推察できることは、


(教頭は確実にその場にいた。そしてその場にいたことを隠したのは校長を見殺しにした負い目か?あるいはゼンの逃亡を助けたか…?)


いずれにせよこの男は逃すわけにはいかないーー


就任初日にロータスがまずやったことは教頭の逮捕だった。





教頭が逮捕される数日前、ルミシスとお茶を飲む時間を許されたロータスはこれまでにまとめた報告と、簡潔に私見をいくつか述べた。


論理は堅牢、言葉の抑揚が良く、重要なところが強調され実に耳障りが良かった。


そして勉強だけしてきた高級官僚と違い、泥臭く足を使って裏どりを重ね、僅か2日でルミシスも知らない新情報を何個か探し当ててきた。


(なるほど、確かに変わり者だが有能だ。おそらく田舎の役人程度では彼を持て余して変人としていただけ、かもな)


カフェインが苦手なルミシスはオレンジジュースを啜りながら目を細めていた。


そして今後の対策としてロータスはいくつか抜本的な提案を持ちかけた。

そのうち一つが眠たげなルミシスの目を一瞬で見開かせた。


「ギルドを使おう」


「……!!」


「今回騎士団を行かせたのがそもそも失策だった」


と、まず王宮の初動をなじった。


「次も今回のように負ければ、どこかで取り繕うことになり身動きができなくなる。死人が出ればその家族に莫大なる金銭の保障をせねばならんが、ギルドは民間なので別だ。」


ロータスは止まらない。


「そして厄介なのがなぜフィーナという少女は殺害しないといけないのか?『私に』すら話せないほど理由を公に明かせないのであれば、これも思い切った捜査ができない。また今回のようにどこかで嘘に嘘を塗り固めていれば、やがてがんじがらめになってしまうのは我々だ」


と、肝心なフィーナ殺害目的を話さないルミシスたちに嫌味をぶつけた。


意に介さず苦笑するルミシスにロータスは「であるならば」と続ける。


「金さえ渡せば理由もなく狩ってくれるギルドは適任ではないか?」


ルミシスはストローから口を離し疑問を呈した。


「そんなにうまくいくものか?相手は禍学きっての天才だぞ?」


しかし、ここがロータスの凄みだった。


「未だかつてない賞金を出してさえくれれば」


「賞金…?いくらだ?」


「そこはルミシスが決めて欲しいが、出来れば奴らの孫の代まで遊んで暮らせる大金だ」


「……その理由は?」


ルミシスが興味をいよいよ示し耳を傾ける。


「理由は2つ。1つはおそらくゼンと言う男、禍動士界隈でも有名なんだろ?ならばみんな徒党を組むだろう。山分けしても一生暮らせるわけだしな。もしくは危険な大金よりも安全な小金を選ぶ連中は百単位の団体で賞レースに参加するかもしれない…」


「2つ目は…多分ギルドは返り討ちに遇うだろう。それはいい。本当の狙いは日夜狙われることで精神的に追い詰められ、いつか負けることもあるかもしれん」


ロータスは語気を強めた。


「ゼンは耐えられても18歳のフィーナにその過酷さは耐えられるか?もしや自害するかもしれん。」


ギルドを金で釣ってそれで事が済めば良い。

その間に疲弊して死んでも良し、2段構成の戦略だった。


ここまで聞いたルミシスは密かに舌を巻いた。


もしルミシスが多忙ではなく、この日3日寝ていない状況でなければ同じ思い付いたであろう。


たまたま気付けないだけだったが、自分より先手を思いついたこの男の発案に感動をし、思わず両手でロータスの手を握った。


(こいつ女か……)


これは意外だった。

男にしては声の高い中世的な美少年かと思っていた。


「そういえば」


と、ロータスは教頭と非公式面会をした出来事を話した。

ルミシスは「面白そうな話じゃないか」と笑った。


今までは死んだ校長、逃げたゼンとフィーナだからこそ本人不在で起訴を進めてしまい、不満が出た。だからこそ生きている教頭が共謀罪を認めれば禍学側も黙らざる得ない。


「おそらくだが教頭はゼンとつながっている…」


「勘か?」


ルミシスがそう訊ねると残りのオレンジジュースを飲み切る。


「勘だ…だが俺の勘はだいたい当たる…」


と、自信満々に答えるロータスにルミシスはやや苦笑したが、バサっと鞄から取り出したあらゆるゼンと教頭の仲を窺わせる資料や手紙を机に出した。


「ゼンの教員採用では教頭が陰と陽に手を回した証言と証拠だ」


ズズズー…とストローでジュースを吸い切るルミシスにロータスは合図を待つ。


ルミシスは教頭の逮捕状にスラスラとサインをした。


飲み切ったグラスの中で氷がカランと鳴った。

【次回予告】


ロータスの作戦には莫大な予算が必要だった。

ルミシスは王宮に死をした緊急提言を行う。


次回は7月15日 12:30頃アップ予定


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