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勇者様助けて!私じゃ魔王は倒せません!~勇者より先に聖剣を抜いてしまったので、私が勇者になりました~  作者: minori


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第二話 転生


 お腹を満腹で苦しい状態にしてもらってから、私は小屋に戻った。

 美味しかった……あんなに食べたのは初めてかもしれない。消化を促す為に、私は干し草のベッドにごろんと横になる。


 おばさんとおじさんの話を聞いて、分かった事がある。

 この小屋はおじさんとおばさんのもので、私に貸し出してくれているということ。

 私はある日突然道端に倒れていて、それをおじさんとおばさんが保護してくれたということ。

 ちょうど私が現れて少ししてから魔王復活のニュースが流れたから、もしかしたらその影響で何かあったのかもしれないという事。

 だからおばさん達も私の事はよく分かっていないみたいなのだが、でもとても可愛がってくれているという事。


「ラッキーだなぁ、私……」


 ぼんやりと呟く。

 たまたま親切な人に助けてもらって、衣食住に困らず過ごさせていただいて。

 今だってこんなにお腹いっぱいでぐーたらと横になれて。

 まぁ、大変だった分すこしゆっくり過ごさせていただきましょう。


「そういえば、私って……今、どういう状態なんだろう」


 病気で死んだ、という事でいいのだろうか。

 それで、今天国ではない場所に居る。おばさんの家の鏡もさりげなく見せてもらったら、見た目も病院の時に居た時よりも健康で血色が良い顔色をした自分が映っているだけだった。

 どういう状態なんだろう。それに魔王が居るって事しかわからない場所に居る。


「魔王ねぇ……ん、ハジマリ村? それに、ココカラ村って言ったよね」


 私はガバッと体を起こした。

 ハジマリ村……勇者の過ごした村の名前と一緒だ。

 それに、ココカラ村……勇者が妹と一緒に聖剣を見に行ったあの場所の名前と一緒……。


「『光の聖剣物語』と一緒だ……」


 私がずっと病院でプレイしていたゲーム、『光の聖剣物語』。

 このゲームの始まりはこんなところから始まる。


 魔王が復活し、魔物が人々を襲う闇の時代が始まる。

 昔魔王を封印した勇者が岩に差した聖剣がココカラ村にあった。妹と一緒に勇者がその聖剣を見にココカラ村に来たのだが、運悪くその時に魔物に襲われるのだ。

 妹が魔物に襲われる、と危機迫ったハジマリ村の青年ルークが聖剣を手にすると、なんと聖剣が抜ける。引き抜いた聖剣で魔物を退治し、妹を救うというストーリー。

 ずっと誰にも抜くことが出来なかった聖剣を引き抜いたルークは勇者となり、仲間を増やしながら魔王を倒す旅に出る。


「あれ、もしかしてここゲームの世界?」


 そんな事ってあるの!?

 私はバンっと扉を開け、走っておばさんの家まで行く。


「おばさん! この村に聖剣ってある?」

「なんだい急に。あるよ、村の外れの岩場みたいなところに。最近魔王が復活したっていうから、今男たちが皆試しに引き抜きに来てるよ。あんなの抜けやしないのにね」

「そっか……」

「行くなら気を付けて行きなさいよ、暗くなる前にね」

「う、うん……ありがとう」


 おばさんはそう言うと、私にショールを渡す。

 今日行くつもりないよ、と断ったが、最近肌寒いから持っていきなさいと無理やり私の肩にかけてくれた。ありがとう、とお礼を言うと嬉しそうに笑う。

 私はそのままおばさんの家を出て、自分の小屋へと戻っていった。


「やっぱり、『光の聖剣物語』だ。一緒だ。私、ゲームの世界に入っちゃったの!? ……いやだあああああああ、魔王倒してみたいとか言ってたのはゲームだから!! 自分は痛い思いもしんどい思いもしないから!! 魔物が居て、魔王がいるような世界で生きるのなんて絶対にやだー!! 絶対死にたくないし、もう痛い思いもしたくない!!」


 私はそう叫びながら、干し草のベッドの上でジタバタと暴れまくった。

 あんなに辛い闘病生活をしておいて、死んだと思って目を開けたら何でこんな危険な場所に居るの!? もしかして、ここ地獄だった? 新しいタイプの地獄だった?


「全然ラッキーなんかじゃないじゃん!」


 ぼすっと思い切り枕を殴る。

 頬も思い切りつねってみる。

 さらには逆立ちなんてこともしてみる。

 

 でも、これは夢でもないし、つねればちゃんと痛いし、逆立ちしても何も変わらない。

 

 私はまたドサリとベッドに横になった。

 急にこんな展開になって、どうしたら良いのか分からない。もし魔物に襲われたりしたら、どうしよう。怖いな……。おばさんやおじさんが襲われるのも怖い。

 なんで平和なゲームをやらなかったんだろう。

 こんな事なら『光の聖剣物語』になんてハマらなきゃ良かった。


 そんな後悔を頭の中でぐるぐると考え込みながら、私はいつの間にか目を閉じて眠ってしまっていた。

 

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