Chapter・・・003 正しい処理
数年前に起きた、ある出来事。ニュースでは、「適切に処理された」と結論付けられ、誰も異議を唱えることなく、終了となった。
当時を知る主人公はその"正しさ"の中に、置き去りにされた大切なものがある気がしてならなかった。
それは事件の真相ではなく、誰かの感情だった。
その事件について、人々は口をそろえて言う。
【もう、キチント処理された】
処理、と言う語句は、礼儀を背負っている。もしかすると、"処分"という語句を含んでいるのかもしれない。
汚れたものを片付け、問題を解決し、何事もなかったように、リセットする。その状況が目に浮かぶようだ。
その出来事が起きたのは数年前。当時の私は、少し関わっていた。直接ではなく、ただ近くに、そばにいただけ。
報道は淡々としていた。関係者の説明・対応は迅速だった。"不備はない・適切だった・問題は浮上していない"もっともらしい言葉が正整した。
誰も泣かず、怒らず、疑わずで、そのことが、一番不思議に感じた。
時間がたつにつれ、話題にする人も減少していった。何気に話すと、
「今更、蒸し返して、どうなるの?何も変わらないでしょっ」という。
語尾が、悪モノのような錯覚が、現れる。
感情を測る基準になっているのかもしれない。
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私はその時の空気を思い出す。
説明が終わった瞬間、ほっと息をついたこと、納得したわけでもないはずなのに、終われた、という安心。
後日、当事者の一人を見かけた。変わらず普通に生活していた。笑っていたし、仕事もしていた。処理されたのは【出来事】だけだったのだろうか?
人が持ち備えているはずの"感情"は、どこへ行ってしまったのだろうか?「間違っていた」とは誰も言っていない。「傷ついた」とも言っていない。
正しさは何を基準にしているのだろうか?反論も議論も起きない。人の中の感情だけは、行き場を失うまるで迷子だ。
私は今でも覚えている。
「これ以上問題にする必要がありません」
何かが切り落とされた気持ちに陥った。大切な大事な何かかが・・・。
それ以来「正しい処理」と言う言葉を少しコワく感じる。




