泰助 落ちる…
「私の彼氏になれるのよ、光栄に思いなさい」
冗談を言っているようでもなく真剣に、まるで下僕に命令するかのようにマリアは泰助に言った。
そしてその後、マリアはまるで何かに勝利したかのような愉悦の笑みを浮かべてゆっくりと菫の方を見る。
マリアに余裕の表情で見られた菫は… まるで馬鹿が訳の分からないことを言っているといった感じでひたすらに首を傾げてキョトンとしていた。
「返事は?… ま、聞くまでも無いけど…」
マリアはそう言って余裕の表情で笑っている。
「………やだ」
「………よく聞こえなかったんだけど…」
「絶ってーやだ! なんで俺がお前の下僕にならんといかん?」
泰助も流石にマリアだけはムリだと思っている。SSランクのオッパイなんて早々にお目にかかれないもの… しかも限りなくハーフに近い女の子の美乳を揉めるチャンスなど二度とないかもしれない。
それを考慮してもやっぱりマリアはムリ…
あいつの場合、彼氏は奴隷の中でもちょっと位が高い程度にしか思っていない。
基本泰助は自分の気持ちに対して真っ直ぐに行動する。人に命令されるのは大嫌いだ。
自分の思惑通りにならない泰助を見てマリアの苛立ちと焦りは隠せない。マリアの表情は一段と険しいものとなる。
だが、何を思ったのかマリアはその険しい表情を一変させて急に怪しい微笑みを浮かべ始めた。
「あなたは本当におっぱいハンターなの?」
泰助はその言葉に鋭く反応する。今までは何の関心も示さなかったが、おっぱいハンターと言われれば泰助のプライドに火がつく。
「当然だ。俺はこの学校の女子のオッパイの殆んどを評価できる」
「じゃあ私のオッパイの評価は?」
「………………」
マリアに聴かれた泰助は答えに詰まる。評価はとっくにしている… 最高ランクのSS。
この学校で唯一のSSランク… だが泰助はそれをマリアに言いたくない。
こんな高飛車で高慢な女のオッパイがこの学校で最高だなんて腹が立って泰助も口にしたくない。
だが… 泰助にはプライドがある。おっぱい評論家としての…
いかに嫌な奴であろうともおっぱいの評価は曲げるわけにはいかない。
「…お前のオッパイは… 最高ランクのSSだ…」
「そう?… ま、当然よね。私以上の人がいるわけないし…」
泰助に最高だと言わせて満足げなマリア… 急に表情に余裕が出てきた。
さっきまで泰助を睨んでいた鋭い目つきは、今は怪しく妖艶なものに変っている。
「おっぱいハンターなんて言ってるのにどうして最高のものを狙わないの?」
「…そ、それは………」
今度は泰助が言葉に詰まり始める。
「あなたそれでもプライドがあるの? 私だったら絶対に狙うわよ…」
狙わない理由はただ一つ、こいつの性格が破滅的に悪いからだ…
泰助はそう言いたかったが、最高のおっぱいを狙わないおっぱいハンターと言われて、その言い訳がそれではあまりに情けないと泰助は感じていた。
確かに真のおっぱいハンターであれば、どんな苦境にも負けずに最高を目指すべきだ。
泰助が答えに窮して気持ちに揺らぎが出てきた瞬間をマリアは見逃さない。
弱みを見せた泰助に一気に攻め込んでこの勝負を自分の勝利へと導いていく。
「柳瀬泰助… 私を彼女にすればこの最高のオッパイが手に入るのよ。そんなチャンスを逃すの?」
気持ちが揺らぎ始めた泰助を仕上げ始めるマリア…
誰の言うことも聞かずに自由奔放な泰助がマリアに言い伏せられて操られている。
それは周囲にいる人間も同じであった。クラスには奈瑠美や秀雄、それに菫もいるのだが、誰も何も言えない。マリアの圧倒的な雰囲気にのまれて、まるで劇場の観客のように黙ってじっと見ている。
「私の彼氏になったらこのオッパイを自由にしていいのよ?」
マリアは最後の仕上げに入っていく。
マリアは感じている… あと一歩で柳瀬泰助は落ちる…
余裕の表情で泰助を見下していたマリア… だが泰助は急に顔を上げてマリアに向かって言った。
「お前さ、そんな偉そうな事言っといてどうせ付き合ってもおっぱい触らせねーんじゃないの?」
泰助は「どうだ!」と言わんばかりに切り出した。
バカみたいにプライドの高いマリア… どうせ約束なんて反故にして触らせるわけがない。
泰助はマリアがはったりを言ってると思い、そこを責めてやろうと考えた。
「私を誰だと思ってるの? 約束を反故にするなんてそんな下衆なことする訳ないでしょ」
「そんな言葉誰が信じるか…」
泰助はそう言って聞く耳持たないと言った感じでマリアを無視しようとすると、マリアは泰助に近寄りいきなり泰助の手を掴んだ。
「なら契約の先払いってことで…」
そう言ってマリアは泰助の手を自分の豊満な胸に押し付ける。
しかも大きく手を開かせておっぱいを鷲掴みにさせておまけに自分でその手を強く胸に押し当てている。
「彼氏になったら当然直に触れていいのよ」
クラスの皆が見ている前で公然とオッパイを触らせているマリア…
見ていた全員が唖然としている。
「………お前の意志は分かった。付き合ってやるよ…」
泰助は冷静な表情でマリアに向かって言った。
「当然ね… これからはマリアと呼びなさい… いい? 泰助」
「ああ、わかった… マリア」
そう言うとマリアはいきなりつかつかと歩き出しある場所で立ち止まった。
そして勝ち誇ったような愉悦の笑みを浮かべて見下すように言った。
「烏丸菫さん、今日から泰助は私の彼氏になったのでこれからは近付かないでくれるかしら」
そう言うとマリアは「オッホホホッ~」っと高笑いをしながら踵を返して泰助に近寄る。
「泰助、今日の放課後は私をクラスまで迎えに来るように…」
そう言いながら泰助の頬を手で撫でる。
「わかった、迎えに行く…」
「それじゃ、待ってるからね…」
そう言うとマリアは悪びれる様子を微塵も感じさせずに堂々と教室から出ていった。
マリアが教室から出て行った後もしばらくは誰も言葉を発しなかったが、やがて奈瑠美と秀雄が泰助に詰め寄った。
「ど、どいういことだ、泰助! なんでマリアの申し出を受ける?」
「た、泰助君… ダメ…絶対にダメだよ… 私は許さないからね」
二人を見て泰助はケロッとした顔で何も気にしてない感じで二人に言った。
「別に俺が誰と付き合っても勝手だろ」
一体何が悪い?といった感じで泰助は二人の言葉を聞いても全く動じなかった。
秀雄は全く聞く耳を持たない泰助にイラついたが、ふと心配になって菫の方を見た。
菫はただボーッと前を見てる… 正確には何も見ていないのだろう…
ただ瞬きもしないその瞳からは涙が今にも零れ落ちそうになっていた。
その姿を見た秀雄は初めて泰助に対して真剣な怒りを感じていた。




