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マリアの事情



 如月マリアが何故あのような過激な真似をしてでも泰助を手に入れようとしたのか…

それは菫に対するライバル心だけではない。

マリアにもいろいろと事情があった。



 今は高校2年生の半ばにさしかかっている。高校生活も実質はあと1年ぐらいのものだ。

3年生の後半は学校に出てこなくなる日も結構増える。

そんな高校生生活を考えてマリアはふと気付いた。


私は誰とも付き合ったことがない…


中学の時もみんなの羨望を集めて沢山の下僕を従えたが、納得できる男子がいなかったために彼氏は出来なかった。それにそこまで苦労して作る気もなかった。


そして高校生… 入学当初から自分の取り巻きを作るのに時間をとられ、気が付けばもう2年生になっている。学校内で確固たる地位を築いたが、よくよく考えれば 『彼氏いない歴=年齢』というかなりヤバい状況になっていることに気付く。


これは不味い… 女王である私がこれではまるで「モテないボッチ」と同じだ…


そんなことはマリアのプライドが許すはずもない。

だが、いざ付き合うと言ってもマリアにはとてつもなく高いプライドがある。


どこの誰でもよいはずがない。マリアはこの学校でも菫とトップを争うほどの美少女。

当然その彼氏も学校内でトップクラスのイケメンでなければならない。


だが2年生となった今、主だったイケメンはそのほとんどに彼女がいる。

マリアの彼氏候補第1位も本当は二条秀雄であった。

秀雄は誰もが認めるイケメンであり、尚且つ人柄も優れている。マリアとしても文句は無いのだが、佳蓮という彼女がすでにいる。


人の彼氏を横取りする・・・やろうと思えば簡単だが、世間体を考えてマリアにはそんな恥かしいことは出来ない。そうして秀雄に負けないくらいイケメンで尚且つ彼女がいない者…


そう考えたとき、唯一残っていたのは泰助であった。

顔だけで考えると泰助はそこまで秀雄に引けを取らない。

ただし、なぜ泰助が残っているのか… それには当然の理由がある。


それは皆が知っていること… 泰助はおっぱい星人

その風評のせいで女子生徒が泰助の傍に近寄らない… なので余っている。


マリアも流石に「私の彼はおっぱい星人」なんてシャレにもならないので泰助を無視していたが、最近になって噂が変化してきた。泰助が奈瑠美と菫に意識を集中しだしたために学校でおっぱいを追いかけるようなことが無くなり、そのため泰助に対する風評も下火になっていた。


そんなこともあり泰助に注目しているとある噂が聞こえてきた。


「柳瀬君と烏丸さんはもうすぐ付き合うみたいだよ」

「あの烏丸さんにもとうとう彼氏ができるのか… けど、美男・美女のカップルだな…」



注目していた泰助が何とライバルと思っている菫の彼氏になろうとしている。

この話を聞いた時、マリアは直ぐにある計画を思いつき実行へ移そうと考えた。


それは、『菫の目の前で泰助を奪ってやる』というもの。

マリアにとってこれは一石二鳥だった。

彼氏をGETできることと菫に勝利できること…


こんな絶好の機会は無い!


マリアはどんなことをしてでも泰助を落としてやろうと情報をかき集めて泰助の弱点を研究し、最終手段に自分のおっぱいを使うこともためらわないと決心した。


マリアは勝利するためならどんな方法も使う… そこに一切の妥協や迷いは無い。

そして菫から泰助を奪うことに関しても良心の呵責などかけらも感じない。


逆に菫に自分の実力を見せつけて完膚なきまでに叩き潰したいと思っている。

マリアから言わせればいつまでもちんたらやっていた菫が悪い…

欲しければさっさと捕ってしまえばいい… それをしなかった菫が悪い… そうとしか思わない。



 そうして泰助を奪い取ることに成功したマリア。

マリアは午後の授業の間も達成感に酔いしれ最高の気分を味わっていた。

烏丸菫… これで勝負はついたわね。彼女が求めていたものを私は奪い取った。


私の完璧な勝利だ。


しかも柳瀬泰助… 顔だけで言えば二条秀雄と比べても遜色はない。

あとはその性格を私が矯正すれば私にふさわしい彼氏となる。


美しいものには美しいものが一番よく似合う… 私達はそれを実現している。

そうして全て上手くいったことに満足していたマリアだが、あることを思い出す。


そう言えば私は泰助に放課後迎えに来いと言ったな…


………付き合うって… 何するの?…



 泰助をGETすることだけ考えてたマリア、その後の予定など考えているはずもなかった。

泰助に言った「放課後迎えにきて」も一度言ってみたかったセリフなだけである。


マリアは最近クラスの女の子が彼氏にそう言っているのを見て一度やってみたいと思っていた。

マリアにはどうやって彼氏と付き合うかを聞けるような相手は誰もいない。


まさか自分の下僕たちに聞くわけにもいかないし、まして彼氏いない歴がバレるのは絶対に阻止したい。そんなことを考えると急にマリアは緊張してきた。


な、なんで私が彼氏と付き合うごときで緊張しなければいけないの… 私はマリアよ…


そう強がってみるが、経験したことないものを理解できるはずもない。

そこでマリアは考えた。次の休み時間はすべて検索にあてよう…



そして授業が終わり検索開始。

するとなんだかんだと無数に出てくる付き合い方。マリアは取り敢えず放課後の過ごし方について詳しく検索をかける。


フムフム… なるほど。 一緒に帰る、カフェなどによる、近くの店でショッピング… 何となく理解した。でもこの「ゲーセン」ってなーに? ゲイセン… ゲイ専? ゲイのカップル専用ってこと?

それにこの「公園でチョメチョメ」ってなに? そんな遊びでもあるの?


マリアは基本的に超お嬢様… 庶民の事情にそこまで詳しくない。

取り敢えずマリアはその中から今日はカフェにでも寄ろうと思い、近くの店を検索した。

カフェならマリアもよく利用しているので別に心配することは何もない。


よし、これで準備OK。

私が何も知らないことがばれるのは非常に困る。

私は皆の羨望を集める美少女… 当然男性との付き合いも経験豊富で慣れている…

………………

………ヤバい、もう少し勉強しておこう。



マリアはそれからもネット検索を駆使して情報を集めまくった。

だが現在のネット社会ではでたらめな情報も大量に流れている。マリアは検索すればするほどその情報に翻弄されていく。



 そしてその日の授業もすべて終了、いよいよ泰助が迎えに来る時間となった。

マリアは泰助と付き合いはじめたことを下僕たちに伝え、今後は泰助との付き合いを邪魔しないように空気を読めと指示を出した。今日は泰助と一緒に帰るので解散ということにして、マリアは教室で一人泰助が迎えに来るのを待っている。



やがてみんなが帰り教室に残る人も少なくなった頃に泰助はマリアを迎えにきた。


「マリア… 迎えに来たぞ」


そう言って泰助はマリアの席へと近づいていく。

昨日まで何の関係もなかった男がわざわざ自分を迎えに来るためだけに教室までやってくる。

しかもかなりのイケメン…


これぞまさにお姫様の待遇… その光景にマリアは満足する。


いい… 凄くいい… なんかこういうのって良い…


彼氏を迎えに来させていた女の子たちの気持ちがよく分かる…



「遅かったじゃない、泰助… フフ… それじゃ、帰りましょうか」


マリアは満足といった顔をして泰助を誘い一緒に教室を出ていった。



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