佳蓮の事件簿2
俺は今、佳蓮が先輩女子2名に吊し上げられている現場を観察している。
先輩に畳み込むような悪口を言われている佳蓮だが、その表情を見ると目をキッと見開いて鋭い眼光を向けている。
お~お~、相も変わらず憎たらしい表情をして…
そんな性格だから周りに敵を作るんだよ。
でも雰囲気は最悪で、先輩女子は今にも佳蓮に掴みかかりそうな険悪なものだ。
俺はその緊迫した雰囲気を見ていて……… 必死に笑いを堪えていた。
佳蓮の顔をよく見てみると怒っていながらも目には涙が浮かんでいるようだ。
あれがいわゆる… 鬼の目にも涙か。
などと感心していると、先輩女子は何やら捨て台詞を吐いてこっちに向かってくる。
これはヤバい… 急いで階段を降り、少ししてから再びゆっくりと階段を上り始める。
“今上ってきましたよ~” って感じを前面に押し出し、先輩女子とすれ違うと佳蓮の元へ近寄った。
佳蓮を見ると踊り場でそのままうずくまって、膝を抱えて座り込んでいる。
「………佳蓮」
俺が呼びかけると少し顔を上げ、一瞬驚いたような表情をした佳蓮は、直ぐに顔を膝に埋めて低い声で
「何で泰助がここにいんの…」
不機嫌そうにそう言ったが、その声は微かに震えていた。
あの佳蓮が涙を流しながらへこんでいる…
俺は… 自分の太ももを思いっきり抓った。そうしないと笑いが抑えられない…
「…プッッ か、佳蓮… なにがあった?」
やべー、出足でふいちゃった… ばれたらしばかれる!
「プッッ?」
しっかり聞こえてるし…
「どうしたんだよ、佳蓮」
「な、何でもないわよ…」
「何でもないのか… このこと秀雄は知ってるのか?」
知ってる訳ねーよな… 知ってたらこんなとこに佳蓮を行かせるわけねーし…
「た、泰助… 絶対にこのこと秀雄には内緒だからね」
「内緒はいいけど、どーすんの?」
「じ、自分で何とかするから…」
佳蓮は俺にそっぽを向いてそう言ったが、どこか言葉に力がない。
「佳蓮… 本当に大丈夫なのか?」
「大丈夫だって言ってるでしょ!」
とても大丈夫そうには見えないから言ってみたが… やっぱり意地を張りやがる。
「………佳蓮」
「な、なによ! もう!」
「パンツが見えてるぞ… ピンクの…」
「…それを先に言えよ」
佳蓮はむくっと立ち上がると、俺を睨み付けて捨て台詞を吐くとプイっと顔を背けて教室に戻っていった。
「絶対秀雄に言ったらダメだからね… 言ったら殺す!」
お~ 怖い怖い。 あの睨み付けてきた目は本気だな。
菫の暗殺からようやく逃れたのに佳蓮に殺されてたまるか…
それだけ偉そうに言うんだったら自分で頑張れ… 俺には関係ない。
それから教室に戻って午後の授業を受けていたが、先輩女子とすれ違う時に何やら聞こえてきた言葉が気になって、ずっとその言葉を思い出そうとしていたらようやくその言葉が判明した。
どうしたもんか…
授業が終わり休み時間となった時に、取り敢えず秀雄に確認してみる。
「秀雄、佳蓮のバカとまだ付き合ってんの?」
「泰助… いい加減普通に佳蓮と呼べ」
「そんで… どうなの?」
「どっかの馬鹿が佳蓮の頭を撫でようとしたらしいが、それでも俺は佳蓮と上手くやってるよ」
「佳蓮の頭を撫でる馬鹿か… そんな勇気のある馬鹿なんてホントにいるのか?」
「ああ、俺の目の前にな…」
いや~ん、秀雄ったら知ってたんだぁ~ イ・ジ・ワ・ル…
「兎に角、泰助… もういらないことはやめてくれ… ホント頼むわ」
仕方ないな… 親友の秀雄の頼みだ、聞いて進ぜよう…
秀雄と喋ってみたが、どうやら佳蓮に起こっていることは全く知らない様子。
ホントに佳蓮はどうするつもりなのかね…
授業もすべて終わり放課後となったが、いつものように佳蓮が秀雄の元にやってこない。
佳蓮はいつも必ず授業が終わると俺達の教室に来て秀雄と一緒に野球部に行く。
「秀雄、佳蓮はどうした?」
「何か今日は用事があるから部活に出れないって… ラインが入ってた」
「そうか、… 秀雄も大会近いんだろ、頑張れよ」
「おう、試合は観に来いよ」
そう言って秀雄は元気に部活へと向かっていった。
さてさて… 本当にどうしたもんか。
やっぱ放っておこう… 面倒くさい。
いや、待てよ… ま、いいか。
下駄箱に行き靴を履き替えて家路につこうと思ったが、ちょっと寄り道しようかと思いいつもとは異なる道を歩き始めた。
歩き始めて15分、学校近くの公園に到着。ここはひなびた公園で日中でも殆んど人はいない。
公園の中に入っていくと… 何やら言い争っている声が聞こえる。
そーっと近寄って覗いてみると… やはり佳蓮と昼間の先輩女子がそこにいた。
俺は階段で先輩女子とすれ違った時に、「放課後」という言葉と「公園」という言葉を聞いた。
もしかしてと思ったらやはりビンゴ。
先ずは状況確認、耳を澄ませて会話を聞く。
「だから、言うこと聞いてさっさと別れればいいんだよ。あんたに二条君は勿体ないから」
うんうん、俺もそう思う。
「何で他人のあなたたちにそんなこと言われなきゃならないの」
佳蓮、俺の時みたいにもっと鬼にならんかい… ぬるいぞ。
「どうしても聞かないの?」
「聞くわけないでしょ!」
あの佳蓮がその程度の脅しで言うこと聞くわけねーよな。
「だったら仕方ないね。あんたたち、こっちに来て」
先輩女子がそういうと、どこからともなくヤンキー2人がやってくる。
「ちょっとここでこいつの記念撮影をしてあげようと思って…」
「そうか… なかなかおっぱいデカくていい女じゃねーか」
何やら話を聞いていると佳蓮を裸にして恥ずかしい写真を撮って脅そうとしている感じ…
「い、いや… なにすんのよ」
佳蓮は怯えて後ずさりするが、もう一人の男が後ろに回り佳蓮の両腕を抑えた。
「これからそのデカいおっぱいを撮影してやるよ」
先輩女子がそう言った瞬間… 俺は急いで…
携帯のカメラを起動した。
ちょ、ちょっと待って… 俺にも撮らせて、お願い。
俺が急いでカメラモードを起動していると、男の一人が佳蓮に近寄り胸をじっと見ながらスケベ面をして、
「けど、ほんといい乳してるよなー」
と言って佳蓮のおっぱいに手を伸ばそうとした。
「はぁ~い、みんなそのまま… 笑って、笑って…」
俺はみんなの前に出て行き、そう言って全員揃っている状態で記念撮影をしてあげた。
なんて気が利く俺… やっぱ俺って空気が読めるいい男。
一瞬みんな何が起こったのか分からず硬直… しかしすぐにヤンキーが脅しに来る。
「なにしとんじゃ お前!」
「記念撮影しただけですが何か?」
「それをどうするつもりなんだ、あぁ~っ?」
「家に帰ってさっそくネットにアップしようかと…」
「われなめとんのかー!」
いや~ん、ヤンキーって怒りっぽくて、げ・ひ・ん
さっさと逃げようかと思ったけどさ、怖がる佳蓮の胸を無理矢理揉もうとしてたんだよね、こいつら…。
なんかすっげーイラついてきたんだけど…
仕方ない、最近溜まったうっ憤を晴らさせて貰おう。ヤンキーさんたち、ご協力感謝します。
最近色々と痛い目(佳蓮の10連コンボ、菫の背骨折り等)にあっていたので、こいつらに八つ当たりしようと思っちゃた。てへっ…
取り敢えず襲い掛かってきた一人目のヤンキーの腕をとって、手首を回して地面に寝かすついでにもうひと捻り…あら不思議… ヤンキーの手首は変な方を向いちゃいました。
なにか、う~ん、う~んと言って手首を抑えて唸ってまちゅ。
あれ? もうかかってこないんでちゅか?
すると怖い怖いヤンキーの片割れが怒鳴りながら襲ってきましたとさ。
「なにさらしてんじゃー おんどりゃ~!」
今度は腕を捕っていつもは曲がらない向きに試しに曲げてみると… 何と曲がるではないですか。
新発見でちゅ! 人間やればできてしまうんでちゅね。
肘が「かくかく」言って大笑いしてまちゅ。
ヤンキーさんはぶらぶらになった肘を抱えて顔色を真っ青に変えて絶賛悶絶中。
あれだけ元気だったヤンキーさんは1分も経たないうちに疲れておねんねしましたとさ。
ヤンキーさんたちはとぉ~ってもお疲れだったみたいでちゅね。
おちまい。




