泰助と菫
「菫、その辺適当に座れよ」
俺の部屋に入った菫は昨日と同じでボーっと突っ立っている。小さかったころは俺の部屋を自分の部屋の様に自由に使ってたことを考えればあの頃とはまるで異なる。菫はテーブルの傍にちょこんと小さくなって座る。
これから奥義「あたま撫で撫で」で菫を懐柔しなければなれないのだが… 技を発動するにもタイミングが重要。下手をうって魔物(佳蓮)のように反撃をされてはたまらん… というか菫に反撃されたら間違いなく俺は死ぬ。
そんなことを思いながら菫を見ていると、ふと昔の懐かしい思い出が頭をよぎってくる。
そう言えば二人でこうして俺の部屋にいるなんて何年振りだろう…
そんな思いで菫を見るとやはり思う。
いつ見てもこいつは本当に美しいな。
菫とはいつからあんまり喋んなくなったんだっけ…
………そうか… 中学2年生ぐらいからだな…
中学2年生の時に半殺しにされたり手首を折られそうになったり…
あの時の体験が俺の体にトラウマを刻んだんだっけ。あれ以来2人でいることはめっきり少なくなったけど
それでも不思議と気が付けば菫は俺の傍に居る。
俺は菫に世話をやいて貰わないと生きていけないんで助かってるが、あいつは何で俺の傍に居るんだろう?
俺といると変な男から言い寄ってこられないからある意味あいつも俺を利用してるのかな。
高校に入った時も凄かったな… 菫を紹介しろとひっきりなしに周りの男連中から言われた。
結構真面目に紹介してやったけどみんな玉砕してたっけ?
そう言えば俺は菫をどう思ってんだろ? 幼馴染として以外に…
今まで菫を女として見たことが殆どないもんな…
俺から菫を女として見たとき… やっぱり最高に魅力的だと言える。
あのSランクおっぱいが…
菫のSランクおっぱいがどのように成長してきたのかを知っているのは俺だけだ。
誰かにくれてやるのは本当に惜しい…
はっきり言って俺のものにしたいと思った時もあったが、やはり恐怖には打ち勝てなかった。
あいつのおっぱいを見ると触りたい誘惑と、殺される恐怖が交互に頭をよぎる。
あいつのおっぱいはもはやエデンの園にある禁断のおっぱいだな。
素晴らしい美しさを見せるが、それを手に取ると天罰を食らう。
菫のことを考えると気持ちが複雑になりすぎるから面倒くさいんで考えることをやめたんだっけ…
でも、もしあの暗殺拳がなければ俺は菫をどう思うんだろうな…
そんなことを思いながら菫の方を見ると、菫は下を向いたまま少し落ち着かない様子でもじもじとしている。いくら最近は会話が少なくなったとはいえ、いつもはこんなにだんまりを決め込むことは無い。
それに… お互い喋らないから重い空気になるはずなのに菫は何処か微笑んでいるようにも見える。
今日の菫は本当によく分からん… が、俺にはやることがある。
奥義「あたま撫で撫で」を発動するタイミング… さて、いつにするか…
そんなことを思って菫を見ると菫と目が合った。
何となく目が合った俺は、これまた何となく菫の方へ近づいた。さらに何となく菫の名前を呼んでいた。
「菫…」
俺は何をやってるんだろう?………
俺に名を呼ばれた菫は何処か虚ろな表情となり、ゆっくりと俺に近付いてきた。
そして… そっと俺に抱きついた。
菫は俺の腰に腕をまわして頭を俺の胸に埋めるような感じで抱き着いている。
そんな菫を見ると俺も無意識のうちに菫を抱きしめていた。
丁度いいな… このまま奥義を使おう。
奥義「あたま撫で撫で」を使うには絶好の体勢… というか菫が自らその体勢をとったような感じだ。
そう思って菫の頭を撫でようとするが… 俺は暫くそのまま菫を抱きしめていた。
昨日とは違い気持ちに余裕がある今、菫を抱きしめていると何とも言えない安らぎを感じる。
何かこういうのもいいもんだな…
俺の腕の中には柔らかくしなやかな菫の体がある。それに…
俺の胸には菫のSランクおっぱいがしっかりと密着している。
何かこういうのもいい! こういう間接おっぱいもいい!
おっと、喜んでる場合じゃない。先ずは俺の暗殺を思いとどまらせねば…
菫の頭に手を当て、ゆっくりと丁寧に菫の頭を撫でる。
艶々として潤っている菫の髪の上を俺の手が滑っていく。髪の毛に触れる滑らかさが手に感じられて何とも心地よい。
菫の表情を見ると目を瞑りまるで子供のような無邪気な表情をしており、心地よさそうにしている。
そして頭を撫でる俺の手が首筋にかかると身体を少しピクっと反応させ、その時に「うぅ…ん…」
と微かな声を出す。
菫を懐柔させるために撫でているつもりだった俺は、いつの間にかその心地よさに自分自身も穏やかな気持ちになってきた。
今の菫の顔は昔一緒に遊んでた頃の幼かった時の顔そのものだ…
まだ幼かったときの俺達は本当に仲が良かったよな。
菫、俺にとってお前は大切な幼馴染… お前にとっても俺は大切な幼馴染だよな…
俺はお前を本当に大切に思ってる。
だから……… すみれ…
おねが~~~い… 殺さないでぇ~ 殺さないで~…
俺はできうる限りの念をこの手に込めて必死で菫の頭を撫でた。
「念には念」という言葉があるぐらいなので、本当に念入りにやさし~く、やさし~く撫でた。
こうやって菫を抱きしめながら頭を撫ではじめてだいぶ時間も経った。
もうそろそろいいかな?…
そう思い菫の表情を見てみると、菫はほんのり頬を桜色に染め、目は薄びらきで口元は少し緩みとても穏やかな顔をしている。
そんな表情が菫の美貌と相まって女性としての妖艶な雰囲気を醸し出している。
抱きしめている華奢な背中から目線を遠くしていくと背中から続く美しい曲線はやがてその足先へと繋がっていく。
そして少しはだけたスカートから覗かせる色白でしなやかな足がとても艶めかしく見える。
………俺は菫を見て興奮している… こんなことは初めてだ。
泰助は中学2年生の頃から菫にあまり近付かなくなった。当然抱き合うような距離で菫を見る機会もない。その離れていた3年の間に少女は成長する。目で見ていて変化していることは分かるが、触れればその変化の大きさを本当に実感することになる。泰助はその変化の大きさに戸惑いを見せた。
泰助は無意識に頭を撫でていた手を下ろし、両手でしっかりと菫を抱きしめた。
菫もそれに反応して泰助を抱きしめる力を強め二人の体はより密着する。
やがて泰助の右手は背中からゆっくりと下がっていき腋の近くで止まる。
菫… 俺、お前のことが………
菫の胸に触れてみたい………
泰助の自然な感情が泰助の手をゆっくりと動かせていく。
泰助の手が胸に迫るのを感じとった菫はその意を汲み取ってそれを受け入れるようにじっとしている。
泰助、いいよ… 私の胸に触れて。私は泰助が大好き… それを感じ取って…
少しの間、二人の動きは完全に停止し、沈黙が訪れる…
だがそれはお互いの気持ちを確かめ合う大切な時間であった。
もっと菫に触れてみたいと思う泰助… その気持ちに応えようとする菫…
今、二人の気持ちは完全に一致した。
泰助… 私は… 私は本当に…
泰助のことが大好き~~~~~~~~~~~!
ベキベキベキッ! バキッッッ! グキーッ!
「ぐぎゃぁ~~~~~~~~~~ぁ!」
鈍い音が3度ほど響き、その後にこだまする泰助の絶叫… そしてその絶叫も直ぐに鳴りやむ。
泰助に初めて胸を触れられる緊張、そして泰助を愛する気持ち…
それらが最高潮に高まった菫は渾身の力で泰助を抱きしめた。
そして菫に最大の愛情を注がれた泰助は… 逝った。
3時間後、泰助の魂はようやく本体への帰還を果たし、意識を取り戻した。
目覚めた泰助はさっき起こったことを振り返る。
菫があんな手段で来るとは思わなかった。本当に油断したぜ。
あんな高度な暗殺テクニックを持っているなんて知らなかった。
おかげでリアルに三途の川を見てくることができたぜ。
もう奥義は封印しよう… なまじ暗殺者に近寄った俺が馬鹿だった………




