↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
稀代の悪を目指しましょう  作者: 同田貫
理想と現実の狭間で
56/166

悪知恵を絞りましょう

ゴートレニア城地下。


ここではその王と側近達が密談を交わしており、各国の近況報告を兼ねた定例会を開催している。


「我が君ローグとベルヘルミナ、両国供に宣戦布告し、戦争状態へと突入しました」


「お互い総力戦の構えをみせており、支配地域から続々と徴兵と派兵を繰り返しています。自国内で政変や内乱が起きない限りは、今暫くは現在の状況は続いていくと愚考いたします…」


「結構結構、我等が宿敵達が勝手に同士討ちし、勝手に数を減らしてくれている。実に喜ばしい事ではないか。そうは思わないかウナウル?」


「末端の私には、我が君の深慮遠望はのぞけません。ただ手足となって泥臭く働くだけです、両国の王族の関係者を殺傷できたのは、神の思し召しかもしれませんが」


「面白い言い回しだな、自分達で仕掛けた事を神の思し召しとはな。他の周囲の国々はどうだ?追従する姿勢をみせているか?」


「静観を貫いています、横槍を入れて無用な火の粉が舞うのを嫌っているのでしょう。借りてきた猫の様なおとなしさです」

「次は何をいたしましょうか?」


「御用伺いの分際で、それしきのこと自分で考えて判断せよ!何の為に普段から貴様は暗殺の技を磨いておるのか?」

「あぁ嘆かわしい、嘆かわしい」


「下賎な者め…」


【安い挑発で、私の方から仕掛けるのを待っている。乱心した下郎を切り捨てる理由が欲しいのだろうが、今はどうでもいい…】

【さっさと帰って煙草吸いたい…】


かしづくウナウルに、壇上から上機嫌に報告を聞くゴートレニア国王と、いつもの王の従者達がこちらを粘つく視線で見下ろしている。

だが今回は、同僚のホトホルと百足老、蜘蛛足と蠍の尾もいる。

前回よりも大分気持ちは楽だ。


「あまり虐めて下さいますな、彼女は彼女なりの誠意をみせてるだけです。従者の方々にはどうか広い心で受け止めてほしいですな」


「…う、うむ左様か」


百足老のさりげないフォローに、従者達が押し黙り、ウナウルも目の前のたんこぶ供への溜飲が下がる気持ちで一杯だ。

そんな三文芝居を楽しんでいたゴートレニア王が、思い出した様に話を本筋へと戻す。


「開戦し数ヶ月も経てば、両国供に落とし所を探すだろう。賠償金か領土の割譲か、人質の交換もあるかもしれない。だができる事なら、彼等には講和する空気を起こさない様な闘争を望んでおる。何か妙案はあるか?」


そんなにポンポン策は閃かない。

いたら軍の参謀にでもなっているだろう。

一同が視線を逸らし、考えあぐねては、呟く様にぽつぽつと意見をしゃべっていく。


「では、両国内の破壊活動は?」


「却下だ、相手側の神経を逆撫でするだけだし、犯人探しでボロがでるやもしれぬ…」

「他には?」


「要人の家族の誘拐?」

「それも駄目だろうな、戦争中にそんな愚を犯せば、第三国の可能性を疑うだろう」

「他は?」


「「………」」


「では今宵は解散とする、また別日に皆で知恵を絞るとしよう。各自軽挙妄動は慎む様に、それから行動する時は一報せよ」

「…以上だ」


バラバラに解散し、定例会は閉会した。

顔なじみ達とも挨拶をし、ウナウルは唯一可能性がありそうなムツキ達の宿へ足を運んだ。





「やーどうもこんばんは!」

「ムツキちゃんにおちびちゃん達、野郎達ご機嫌いかがかな?少し相談があるんだけど…」


昨日の今日で出会ったばかりなのに、またウナウルがこの宿の部屋へ馴染んでいる。ホトホルもいつの間にか部屋の隅の壁に寄りかかり、タイチョーと身振り手振りで会話してる様だ。


「また厄介事?」


「そうだね、難問だよ。ローグとベルヘルミナが開戦したのは知っているでしょ?この戦争を出来るだけ長引かせろとの命令を受けてね、貴方達に知恵を借りにきた訳さ。可能性のありそうなね」


「ん〜、長期化させる方法ね…」


意味深な笑顔のウナウルに、悩んでる素振りだけみせるムツキ。彼女達の中では既に一つの案が浮かんではいる。ただ実行する算段が浮かばない。


『無作為な兵士の怪人化』という案が。


「下手な芝居はやめてくれ」

「ヤハウェの刑務所で実行した事を、更に大規模に行う訳かムツキ?僕達だけじゃ手が足りない」


「なり損ない達じゃたしかに役不足だわ、けど優しいウナウルちゃんが行動部隊を束で貸してくれるよ。それくらいの気概はみせてほしいかな?」


「わかった善処しよう。そちらも怪人化させる手段を模索してくれると助かるわ」


「また戦う事になるんですかムツキさん?」


「ゼン、これは必要悪よ。世の中聖人ばかりでなく血に塗れた悪人も必要なの、だから何も心配はいらないわ。ただ私達は行動あるのみ」


コモレビとゼンも薄々勘付き、色々と質問しているが、シズネだけはただ黙ってウナウルを睨んでいる。少女の眼には、先生を危険に晒す害悪でしかなく、完全には信頼しきっていない。

万が一こちらに牙を剥くなら、その時は私が先生の盾になる。国とか立場とか、知った事か。


「…そんな情熱的な瞳を向けないでよシズネちゃん、昂ぶって濡れちゃうじゃない」


「私はお前を監視している。私にとって先生は命の恩人で恩師なの、もし私達を裏切る真似したら覚悟してね…。私は本気だから!」


「おっかないなぁ、それに女の子がそんな顔したらモテないよ?綺麗な顔してるのに」


「茶化さないで!貴方も似た様なものよ、顔は笑顔なのに目が鋭すぎる。本心はどこにあるの?」


「…今はまだ内緒。そのうちね」


「………」

ウナウルはのらりくらりの態度で、シズネの詰問を切り抜けて沈黙したままの少女と対峙する。

彼女の心中はわからぬままに。


時間だけがゆっくりと進む。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。