詳細を聞きましょう
「ようこそ!」
「さぁ座って、今朝市場で新鮮な茶葉を購入したから、一緒に飲みましょう!」
「…あー、お構いなく」
「お茶菓子に好き嫌いはある?」
「あまり甘過ぎなければ特には…」
「そっかそっか!シズネ、じゃあ右の戸棚にあるお茶菓子をここに持ってきて!」
「はい先生」
ウナウルは目を白黒させている。
扉をノックし、部屋の中へ案内されると熱烈な歓迎をムツキ本人から受けた。
ホトホルも、出された紅茶やお茶菓子を食べていいのか悩んでいる。
私の考えでは、拒絶されるものとばかり考えていたから、この歓待振りは予想外だった。
私達の対面のソファに座るムツキはニコニコと、お茶菓子を持ってきて隣に座る少女はじっとこちらを観察している。
やや後ろにいる少年と仮面の男性は、遠巻きに様子見といったところかな?
窓際の男性からは明らかな嫌悪感を感じる。
粘つく視線に忌避の眼差し、まるで腫れ物にでも触れるかの様な、そんな目。
いつも私達を見る亜人達の目。
便利な道具として扱う依頼人達の目。
慣れ親しんだ視線だが、私達暗殺者達を下にみるそんな瞳。やっぱり、理解できないよね…。
蛇の亜人は代々殺しを生業とする種族だ、殺し屋だったり、刑の執行人だったり、法の番人だったりと種類こそ違うが、やってる事は同じだ。
石を投げられないだけ多少はマシか…。
ウナウルは紅茶を一口啜ると、早速本題とばかりにムツキ達に仕事の話をする。
どう口説くかを頭の中で整理し、文面が怪しくならないように慎重に、丁寧に。
瞳を閉じ、ゆっくりと見開く。
「ではムツキさん、それにお仲間の方々、私達の仕事のお手伝いをしてくれると判断してもよろしいでしょうか?」
「ええ、但し私と隣のシズネだけ。他の三人は別口の仕事があるから動けない。期間限定でそれでも構わないなら相談にのるわ」
保険かリスクの分散だろうか?
まぁ得体の知れない仕事なら妥当だろう。
したたかな意思を垣間見た気がする。
「構いませんよ、私達も今繁忙期でして、猫の手を借りたい程忙しいので!」
「仕事の内容というのは、貴方方がお察しの通り殺しです。こんど我が君主催の舞踏会があるのですが、そこで釣り上げた各国の諜報機関の者に、我々が天誅をくれてやる事です」
「…手当たり次第ということですか?」
シズネと名乗った少女が不快そうに質問する。
至極当然よね、私が向こうさんの立場なら同じ質問をする自信がある。
ここはやんわりと否定しておこう。
余計な猜疑心を抱かせるのもリスキーだし。
「まさか、私達は快楽殺人者ではありません。国からの依頼で動く仕事人です!目標を狩ればそこでおしまい、また夕闇に佇むだけです」
「そんな事をずっとですか?辞めたいとか、辛いとかは思わなかったですか?」
ムツキさんの隣の少女が、私へ質問攻めだ。
真剣な表情だし、戯けた対応は控えるべきかな。こちらも本音を語ろう。
「辞めたくても辞めれないの…」
「えっ?」
「私達亜人は、その種族毎に仕事が定められているの。だからその法を犯せば周囲に迷惑がかかるし、なにより他種族から名誉を傷つけられてしまう。一人の身勝手が、破滅をもたらす」
「ゴートレニアとはそういう国だから」
「そう、でしたか。勝手を言いました…」
ぺこりと頭を下げる少女。
あれくらいの年頃の子は、なんでも疑問に感じた事は口にだしてしまう。仕方ない。
別に何でもないと手を振り、話を元に戻す。
「舞踏会の招待状は後日正式にお届けに参ります。当日は正装で、もし衣装がなければ貸し出しも行っていますので、ご入用の際は是非!」
「…当日の流れは?」
「舞踏会を優雅に楽しんでもらって、目標が帰路につく際に別個に襲います。やり方は自由です。路地裏でも宿屋でも、通りでも」
「あぁ、あと人目と同業者には気をつけて下さい。余計な諍いは、騒ぎの種ですので…」
「目標が万が一被ったら?」
「それも御心配なく、こちらで事前に割振りいたしますので、それでも邪魔する輩がいたら、それは『敵』と判断して下さい!」
「わかった」
「あと目標の遺体はこちらで回収しても構わない?検死とかするのかしら?」
「ムツキさん達で処理していただいて構いませんよ。私達に迷惑かける存在ですし、最期はムツキさんの研究材料にして下さい」
「あら?話が早いわね」
「この業界気配り下手は早死にしますから」
ひとしきり話し終え、ウナウルがムツキ握手すると、次の仕事があるので席を外す。
窓際の男性をひと睨みするのを忘れずに行い、最期部屋へと向き直り御辞儀する。
「ではでは〜皆様また逢いましょう!」
言いたい事だけ言うと、嵐の様に過ぎ去るウナウル達。思いの外好感触だったと上機嫌に夜の街を闊歩し、相方のホトホルと雑談を交えていた。




