↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
稀代の悪を目指しましょう  作者: 同田貫
理想と現実の狭間で
46/166

闇夜に紛れましょう

夜風が気持ちいい。


なんのしがらみもないこの時間は私の癒しだ。

通りを散歩し、野良猫に餌をやってじゃれつくと、必要以上に怖がらてしまい若干傷つく…。

待ち合わせまでの僅かな時間の隙間、人らしい生活とは無縁の毎日に潤いがほしい。


両手が血塗れの私を、ここじゃない何処かへ連れ出してほしい。魔女と呼ばれるムツキに何か期待してしまっている自分がいる。

いけない、いけない…。

他力本願なんて、どうかしている。


そんな思考を巡らせながら、ウナウルはとある宿屋にて彼女の昔馴染みと合流していた。

腐れ縁とも幼馴染とも違う、ビジネス的な付き合いだが、暗殺稼業の同業者だ。


頭が梟頭の亜人の彼はホトホルといい、遠くを見渡す能力に長けた亜人だ。

視野が広く、匂いに敏感な彼とのコンビで活動する事は結構多い。

今回も要人暗殺の標的の目星をつけたと、彼からの連絡を受けて、わざわざウナウルが訪ねてきた訳だが、どのように攻略するかで揉めている。


「私は往来の人混みに紛れた暗殺が一番得意だけど、ホトホルは狙撃を希望するのね?それだと私は役にたてなさそうだけど?」


「××××××××、×××××××××××!」


「あー…」

「私が標的に近づいて囮に?手段は任せるから窓際に誘導してくれって?そんな暇あったら私が暗殺した方が早くない?」


「○○○○○○、○○○っ」


「報奨金の六割を私に譲るからどうしてもって?別にいいけど、狙撃外したら私が肉弾戦で仕留めるからね?そこは勘違いしないでね」


「△△△△△△△、△△△△△△△△!!」


「そんな大袈裟だな、今回はあんたの熱意に応じただけだよホトホル!」

「それといい加減亜人語ばかりじゃなくて、大陸共通語を習得しなさいよ!だからあんた偏屈な変わり者って言われるんだからっ」


「■■■■■、■■■!」


「文法や単語が意味不明?そのうち慣れるわ」


吃音の様な喚き声の様な、独特の言語で会話するホトホルをピシャリと一喝するウナウル。

大陸共通語を習得すれば、国外での活動も増えて収入も安定するのに、彼は頑なに拒否している。人族に媚びるのが嫌なんだと…。

やっぱり変なこだわりだ。


「☆☆☆☆☆?」


「うーん、そうね」

「闇夜に紛れてとんずらされても困るしね、あんたの夜目に期待してるからね」


背中に担いだ強弓を手になんだか得意げなホトホルを、ヒョロイ腕が吹き飛ばないかと小突きながら茶々入れするウナウル。


標的は三軒隣の安宿にいる。

護衛を周りに侍らせ日中は隙がないのなら、夜か就寝前を襲うしかない。

ホトホルはその宿を見下ろす屋上へ陣取り、目標のいる部屋へと弓矢をつがえる。

幸いな事に、通りに面した窓の真後ろに部屋の出入り口があり、数分入口で世間話でもして話し込めば、後はホトホルの領分だ。

私はその標的の護衛と遊べばいい。



舞台は整った。

後はやるだけだ。

それで仕事に没頭していれば、彼女から色良い返事が聞けるかもと、淡い期待を抱く。

来る日も来る日も、こんな仕事で神経を磨り潰していく毎日はこりごりだ。

少しくらいご褒美があってもいい気がする。




「毎度どうも〜!」

「お部屋へのルームサービスでございます!ささっご遠慮なく、本日は季節のフルーツ盛りをご用意いたしました!」


「ほう、亜人にしては殊勝な心がけじゃないか!有り難く頂戴しようか!」


営業スマイルで標的と話し込み、ルームサービスですと扉を開けさせ、ホトホルの射線上へと標的を誘導し、同時に護衛の数を確認する。


【部屋の中に三人、浴室に一人、目の前のど阿呆を除いて四人か…。いけるか?】


一拍おいて、ホトホルが放った矢の一撃を側頭部に受けた標的は絶命し、フルーツの盛り合わせの中に置いていた曲刀で護衛を手早く片付け、慌てて出てきた浴室の護衛には蛇の毒をご馳走した。

泡を吹くほど美味しいらしい。


【ムツキは仕事受けてくれるかな?】


別の仕事仲間達が清掃業者の格好で標的達を回収し、安宿の一室を保全し、人の痕跡を消している。


「相変わらずの手並みだな…」


「やーやーどうも、いつも通りよろしく!遺体は念入りに焼却してね?この人達はいなかった…。この国にも、この宿にも」


「おっかないねーあんたの愛想笑いにその考え方も、我が王の教えなのかいウナウル?」


「…いいから早くやりな」


「こわいこわい、わかりやしたよと…」



お喋りに夢中な仕事仲間に毒づき、蛇の眼光で凄むウナウルだが、修羅場慣れした同業にはあまり効果がない。右から左に受け流されてしまう。

そんな態度にまた腹がたつ。


私の気持ちなんて誰にもわかりゃあしない。

これが私の日常。

あと何回続ければいい?あと何人殺めたらいい?

私はどうしたらいいの?


この道以外の世界を知らない彼女の瞳は暗い。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。