本戦を始めましょう
「ご来場の紳士淑女の皆様方、大変長らくお待たせしました!」
「これより戦士達の祭典、第106回秋季武闘大会の開幕をここに宣言致しますっ!」
「「うぉぉぉぉっ!!」」
予選会から3日後。
歓声というより興奮した声が木霊する。
ゴートレニア市街にある大闘技場で、今まさに武闘大会の開会宣言がなされ、凄まじい観客達の熱気に会場全体が汗ばむ温度だ。
リングを囲む様に階段上に客席が設営されている。その隙間を酒や軽食を売り歩く商売人達が往来している。
ゴートレニア各地で数万人にものぼる予選参加者から、本戦出場を果たした総勢200名が、東組、西組にわかれてトーナメント戦の抽選をしている間に、司会進行の獣人の亜人が大会ルールを改めて選手や観客に説明していた。
こんなにも広い会場全域に、司会者の声が明確に聴こえるのはどういうカラクリだろうと、首を捻るゼンだが、わからない事は保留にし、なり損ない数人と一緒にムツキ達の出番を待っていた。
「今回大会の司会進行を務めます、ウナウルと申します。以後お見知りおきを!」
「さて、武闘会本戦はトーナメント方式!東と西それぞれ100名ずつに分かれて、時間無制限一本勝負の形式で行います!」
「予選会同様、不測の事態に備えて救護班が待機しております。また禁止行為、度重なる悪質行為にはそれ相応の対応をとりますので悪しからず…。戦意喪失、または戦闘続行不可能とこちらが判断した場合も、試合を中断致します!」
「早く試合やれー!」
「前置きがなげぇ、まだか〜?」
「ウナウルちゃん、今夜飲みにいこー!」
やいの、やいの。
長台詞を説明口調で延々と聞かされる観客達が、痺れを切らして思い思いの事を言っているが、司会のウナウルと呼ばれた女性に動揺はない。
青い髪をポニーテールにして、第1試合の選手紹介を始めると、ピタリと観客達のヤジは止んだ。
「おーけー、それでは早速いきましょう!」
「東組一番、人馬族の戦士レリト!類い稀な脚力で私達を魅了してくれるのでしょうか?」
「同じく東組二番、人魚族よりセイレーンのムスペル!あどけない表情の彼女はいったいどの様な妙技を披露してくれるのか?」
「では、両者前へ!」
「これより本戦第一試合を始めます!」
「始めっ!」
お互いが軽く礼をし、開幕を告げるドラが高らかに鳴り響く。
ドラの音を聴きながら、ムツキ達は選手控え室でお互いの番号を教え合っていた。
「私は東66番」
「僕は西の15番」
「東の40番です、随分と先です」
「……うっ」(西58番の紙を持っている)
トップバッターは予選会と同じシズネだ。
次にムツキ、三番手にコモレビ、最後にタイチョーだが、本戦は予選会とは違い時間無制限であり、本戦は何日間も続く長丁場だ。
初日はシズネの出番があるかないかというところだろう。雑談にも限界があるし、本戦の様子でも観に行こうとなったのだが、通用口の途中でけたたましい歓声が耳をつんざく。
「劇的な逆転勝利でした!」
「レリト選手が圧倒的な優勢だったにも関わらず、ムスペル選手の鮮やかな一撃。第一試合からハイレベルな戦いに胸が踊ります!」
「本戦第一試合勝者、ムスペル!」
人馬族のレリト選手は、白眼をむいて担架で運ばれていく。
ムスペル選手は、恥ずかしいのかそそくさと脇に入り選手控え室へと姿を消した。
「続いて第ニ試合、東組三番…」
短時間で終わる試合もあれば、長時間にわたる試合もある。リング上には生々しい破壊の跡があり、血の斑点模様もある。
どれだけ試合が激しかったかを物語っている。
試合は粛々と続く。




