武闘大会に参加しましょう
『来たれ挑戦者達よ!』
『武芸を尊び、鍛え上げた己の肉体で栄誉を掴み、自身の限界のその先へ!』
『人種、性別、種族、年齢一切不問』
『拳と拳の肉体言語、いざ開幕!』
※大会本戦上位入賞者には、報奨金と別途記念品の贈呈があります。
※本戦は予選通過者200名によるトーナメント方式
※予選は30人1組の勝ち抜き戦
※殺生の禁止、武器の持込禁止
※自身の肉体に準ずる部位や能力は不問とする
※対戦者のギブアップ、または対戦者どちらかが戦闘続行不能と判断した場合勝敗を決める
※誉れ高い王家の血筋の方との特別試合有り〼
※前回大会の成績上位入賞者はシード待遇
詳しくは大会委員会発行のしおりを参照下さい。
第106回ゴートレニア秋季武闘大会委員会
お申し込みは大会運営本部まで。
「これは、なんて情熱的な文章だ!」
「……うぅっ!」
「…そうですかね?」
無駄に暑苦しい広告文に足を止め、釘付けになっているコモレビとタイチョー。
ゼンはまたかと溜息を吐く。
最近二人の思考回路をなんとなく理解してきた、彼等は自分よりも遥かに人生の先輩なのだが、心は僕と同じ少年のままなのだ。
腕試しのまたとない好機に震えている。
コモレビは素振りの動作を何回も確認し、タイチョーは肩をポキポキと鳴らしている。
ムツキとシズネの待ち合わせ場所の近くに、こんな広告があったのだから仕方ない。
コモレビ達の熱い勧誘に、ムツキは簡単に、シズネは渋々に、ゼンは成り行き任せだった。
「参加するわ!」
「おっし、流石ムツキ話が早くて助かる!」
「うぅっー!」
「…なんでこんな野蛮な事を?」
「あっ、ゼンはお留守番よ」
「…えっ?」
「能力がまだ開花していないのに、無茶させたら大怪我じゃ済まないでしょ?」
「なり損ない一号、二号君彼を見ててね」
「「ううっ!」」
ムツキな無慈悲な一言に、すっかり意気消沈しうなだれている。だが、そんな彼にご褒美を忘れないムツキ。
飴と鞭を使い分けている。
「当日はチケットを数人分買ってきてあげるから、なり損ない達と観戦するように、いい?」
「はいっ!」
「ん、よろしい!」
満面の笑みを向けるゼンに、ムツキの顔が綻んでにやけている。
ぽんぽんと頭を撫でて、通りにあった出店で購入した粉物を与えている。
「ゼンに甘くないかいムツキ?」
「そう?普通よ、普通」
「もしかして妬いてるのかなコモレビ坊や?あとで優しくしてあげるから」
「いや別に、そういう訳じゃ…」
普段から身内には甘々だなと、彼女の一面を知れて思わず嬉しくなるコモレビ。
シズネも嫌々と言う割には満更でもない表情だ。
単純に亜人と戦える機会に喜んでいる。
「あ、でも私達お尋ね者だから変装しなきゃ」
「たしかにそうですね、先生」
「うっ!」
「何に変装するか?」
取り敢えずの用心は必要だと説くムツキ。
つい観光気分だったが、自分達は帝国に追われている身だ。どこに帝国の目があるかわからないからその意見は一理あった。
少し思案し、煙に包まれたかと思うとムツキはシズネの顔で大人びた姿に化けていた。
シズネには金髪のカツラを被せ、タイチョーには木彫りの仮面、僕には頭巾を被せてきた。
シズネはともかく、僕とタイチョーは変装というよりかは、顔を隠しただけだ。
ちょっと雑過ぎないか?
「いい?軽挙妄動は慎しむ様に!」
「はい先生!」
「うぅっ!」
「なんだかなぁ、不満はないけどすっかり君のペースじゃないか。大会登録用の偽名とかは考えているかいムツキ?」
「ふっ…」
「コモレビ、私に隙はないわ!刮目して見なさい、これが私達の新たな魂の名よ!」
「………」
コモ・サン
ムツ・サン
オシズ・サン
タイチョ・サン
流暢な字体で、即席すぎる名前の羅列が紙に記されており、彼女なりには改心の出来なんだそうだ。なんだかツッコム気力も削げた。
もう、これでいいや。これで。
彼女は相変わらず得意げで、シズネが素敵な名前ですと煽てているし、タイチョーもしきりに頷いていたりと、自分が少数派みたいだし。
まぁ、いいか。
大会委員会の事務所でどこかドヤ顔のムツキが、名前の用心を受付の人に提出している。
見るからに偽名感丸出しなのに、すんなり受理された。受付の方曰く、高貴な方や名のある武芸者、風来坊などは偽名をよく使うきら問題ないのだそうだ。
受付の奥の待合室に通され、更にその奥が予選会場となっているのだそうだ。
わいわいと喧騒に包まれている。
「今年こそは某が優勝を頂く故…」
「わはは、笑止貴様なぞ地面でも舐めていろ!」
「きゃんきゃんと煩い犬どもね」
「あん?」
「其方名前は何と言う?」
「さぁ、誰でしょうね」
堪忍袋の緒が短そうな獣人がメンチをきりあっている。兎耳の女性が、虎頭と馬頭に負けない迫力だ。
眉間にこれでもかと皺が寄っている。
受付を終えた予選参加者達を見ると、獣人もいれば斑模様の爬虫類顔の亜人に、頭から角を生やした者達など、統一感がない。
「へ、一筋縄じゃいかなそうだな…。こりゃあ俺の全力を出さざるを得ないか…!」
「この俺の右腕に封印されし邪竜の…」
「あのさ、ムツキそんな事僕は言わないよ?」
「ふっ、馴れ合いは不要か…」
なんだか変な役になり、勝手にいい声でアフレコを入れていたムツキに緊張の色はない。
シズネなどは狐の獣人に断りを入れて、尻尾に頬擦りしてご満悦な様子だ。
タイチョーは壁に寄りかかり沈黙している。
皆違う予選会だけどきっと大丈夫だろう。
僕も負けられないな…。




