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稀代の悪を目指しましょう  作者: 同田貫
夜を歩く者達
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ここではないどこかへいきましょう

コモレビ達がヤハウェに滞在して約半年。


欲望だけが蔓延するこの街で、ある変化の兆しがみえていた。無論悪い意味でだが…。

警備部門のマクベスが、力で無理矢理に抑え込んでいた勢力が彼がいなくなったことで、自分勝手な事を言い始めていた。


『交易品にかける関税を上げろ』

『ユメミ草の利権をこちらにもよこせ』

『ヤハウェの方針決定を合議制にしろ』


都市側が代表側に無理難題をふっかけている。

街全体が内戦前のきな臭さが覆っている。

今はまだ、ローグ連合を警戒した帝国の駐留軍がいるからか、表立った行動を起こしてはいないが、それも秒読み段階だろう。


代表側は今までの恩を仇で返す気なら上等だと、全面対決の姿勢だ。

対する都市側も、代表の強硬的な政策に嫌気がさしたことや、今回の無理な出兵には納得がいかないといった様子だ。

お互いに兵隊を掻き集め、住み分けがなされている区画ではバリケードが築かれ、見張りと歩哨まで立つ始末だ。



正直めんどうだ。

自分達の群れで、味方同士で憎みあうなんてとても滑稽だわ。

心底どうでもいいが、一応恩義もあるしどーしたもんかと首を捻るムツキ。


シズネはシズネで、ムツキの指示待ちといった様子で、じっと壁際に佇んでいる。

コモレビは街頭で土嚢を築いている町の住民と、代表側の私兵達を交互に見ては、どちらに与するのが正解か思案しているようだ。


ゼンだけは状況が解らずオロオロしてる。

数日間彼の能力がなにかあれこれ試行錯誤したが、結局謎のままであった。


「意識を集中して!」

「何もない空間に自分の想いをぶち込むの」

「考えないで!感じるの!」


「……あの、シズネちゃん?」


「まだよ、まだまだ、ゼン諦めないでっ!」


「……」

「…う、うん」

誰もいない公園で繰り広げられるシュールな光景。

渋々従うゼンと、意気揚々なシズネ。

通行人達には子供のごっこ遊びにみえるらしく、微笑ましい視線に晒され続けている。

幼少児の子供に真似されしてる、恥ずかしい。


「シズネちゃん?僕はやっぱり無能力なんじゃ?」


「そ、そんなことないもんっ!」

だが、空回り気味なシズネの指導は、成果が上がらずに二人共しょんぼりしていたので、ムツキが宥めるのに苦労した思い出がある…。


宿屋に先払いして長期滞在しているコモレビ達だが、ゼンが目覚めた今この街にいる目的そのものを失っている。


なによりも、この前の戦いで悪目立ちしてしまった事が、一番不味い気がする。

それに、人の口には戸は立てられない。

噂が街中に広まり続け、宿屋の客も私達だけ。他の客は出払って閑古鳥が鳴いている状況だ。

当の宿屋の主人は、寂れてる宿屋ですからさして気にしませんよとはにかんだ笑顔をみせる。

だが善意に甘えるのはよくないと思うので、部屋の中では緊急会議が執り行われていた。


なり損ない達には、宿屋の買い出しや家事炊事、洗濯、薪割り等の雑務をこなす指令を出し、余った者には雑草毟りや清掃をいいつけた。


「…はいコモレビ君、何か意見を述べよ」


「うーん…」

「いい稼ぎが入ったしここいらが潮時じゃないかムツキ?これ以上は旨味がないと思うな、それにこの前みたいな奴らの同業がきても厄介だし、別の街か国にいかないか?」


「ふむふむ、…はい、じゃあシズネは?」


丸テーブルに腰かけるコモレビが、現実的な案を出してくるのを、ベットで寝そべりながら、したり顔で聞くムツキ。


「私は、先生がしたい事に従います!」


シズネは思考放棄のイエスマンと化していた。

全幅の信頼というか、なんというか。

それはそれで嬉しいムツキ。


「じゃあ最後にゼン君、なにかある?」


「僕は、色々な所に皆さんと行きたいです!」


いやいや、物見遊山の観光じゃないんだよ…。

まぁいいか、私もこの街は気に入っていたけど、

降りかかる火の粉は躱すに限る。

火中の栗を拾うのは、勇敢な誰かにしてもらおう。私達がやる必要はないしね。


「では、私達ジョンドゥはこの街からお暇する事にします!さらば麗しきヤハウェ!」


「なぁムツキ、僕達はジョンドゥで決定なのかい?もっとこう、妖精の尻尾とかさ?」


「それなら、私は魔女の帽子とかがいいです!」


「えっー…。いいじゃんジョンドゥ、なり損ない達の方が数も多いし」


お菓子を食べながら自分達の呼び名をどうするかの会議のほうが長引いたのは秘密だ。


身支度を整えて、付近に待機していたなり損ない達を引き連れて宿屋をあとにする一行。

雑談しながらわいわいと盛り上がっていたが、ヤハウェの出入り口である正門がなんだか騒がしい。

いつもなら朝から夕方までは開いているはずなのに。


代表側と都市側とで、開けろ開けないの押し問答をしている。剣呑な雰囲気で、人も物流も完全にストップしていた。


「あー、これはやばいわね」

「先生、どうします?」

「強引に通るか?」

「ここは平和的に話し合って!」


別々の意見が飛び交う中、私達が介入したら騒ぎが一段とでかくなるはずだ。

どうしたもんか…。


私達、そこ通りたいだけなんだけど


「お前達が来たからこの街はおかしくなった!」

「ローグ連合の回し者だろう?立ち去れ!」


こちらにまでとばっちりがきた。

前途多難だ…。

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