見えざる者達と対峙しましょう
都市ヤハウェとの一進一退の攻防が続く。
ベルへルミナ帝国の貴重な財源であるヤハウェを疲弊させる為、数年前から隊商への攻撃は開始されていた。
こちら側が勝利する事もあれば、あちら側に敗北する事もある。向こうにも生活があるのはわかっているが、意地がある。
ユメミ草が帝国以外の国のへ公然と輸出され、民草達をじわじわと嬲りながら蝕んでいる現状。
その利益を吸い上げるヤハウェは、反帝国派の標的とされていて、不特定多数の勢力に狙われ続けている。
だが帝国もこの重要地を死守したい構えで、ヤハウェの私兵として帝国軍を駐屯させ、国境線沿いに方面軍を展開させ睨みをきかせている。
ローグ連合国。
過去に帝国と幾度も激戦を繰り広げ、先先代の皇帝の頃一応の休戦協定を結ぶも、仮想敵国として帝国を掲げ、国防の一環としている。
国土は帝国の数倍、大小の国々が統合された経緯がある為に、国旗は青地に星の紋様があるものを採用している。
また帝国の皇太子派の亡命先でもあり、新ベルへルミナを旗揚げする際は、強力に支援するとの密約がなされている。
無論、領土の割譲などを条件にだが。
そのヤハウェ攻略の最前線である地方都市マガルニアで、ある噂が流れている。
『ヤハウェは悪魔憑きが住んでいる』
『悪魔が化けた魔女が護衛についた』
『凶事の前触れだ』
そんな馬鹿なと、マガルニアの司令部も最初は相手にしていなかったが、隊商襲撃隊に被害が増加しているのと、その襲撃隊から歪な形の焼死体がいくつも搬送されてきた事で、悪魔憑きもしくは悪魔の存在を信じる事となる。
司令部は中央から悪魔祓いの専門家を数人呼び寄せ、遺体の実況見分をさせていた。
「ふむ、ふむふむ…ん〜」
「ヨハン爺、何かわかったかい?」
「急かすでないわウィリアム!この仏さん達を見てやはり違和感を感じないか?」
悪魔祓い達は兵士の遺体をまじまじと見つめ、しきりに身体を触り、遺品や衣類の燃え残りを凝視している。その様子を周りの兵隊達固唾を呑んで見守っている。
「通常の焼死体ではないな。焼死体は身体の一部が折れ曲がったり、どうしても全身の火傷にはムラがでる。それがこの仏さん達にはなく、高音で一気に火焔にのまれたように均一だ…」
「なにより悪魔憑きの怨みの念が凄まじいの。拒絶と何者かへの強い復讐心、それに…渇望の様な匂いが残滓の中から嗅ぎとれる」
「では人為型の悪魔憑きか?爺さん」
「ふむ、自然発生型の悪魔と、それに魅入られて悪魔憑きになった者の仕業かの。悪魔は同族を増やす傾向がある…」
「自然発生型か、ここ数百年は現れなかった生粋の化け物だな」
「腕がなるのぉウィリアム」
「なんで嬉しそうなんだよ爺さん…」
悪魔には数種類のタイプがある。
召喚型。
術者や今際の際の人間の願いや願望によって、姿を現わす悪魔達。
だいたいが低位から中位で、高位の悪魔を呼び出した例もあるが、それは例外だ。
術者や召喚主を排除すれば、召喚された悪魔も霧散し、何処かへ消え去る。
人災型とも呼ばれる。
人為型。
悪魔側から契約を提案し、代価や代償を支払い悪魔憑きとなった元人間。
怨みの念が強ければ強いほど強力な個体となりやすく、悪魔の僕となるケースもある。
大半が理性を失うが、理性を保ち人間のフリを装う個体もあり、召喚型に比べて厄介。
吸血鬼や狼男などの例がある。
常闇を歩く者達。
自然発生型。
歴史上に何体かしか確認されていない悪魔達。
戦乱や大災害など、世の中が乱れると顕現するとされる名前持ちの悪魔。
天界からの使者ともされ、神の代理として地上に住まう人間に試練を与えるとされている。
国が滅び、大国は無数に分裂して果てなき内乱となるなど、逸話が多く残る。
天災型や使徒とも呼ばれる。
ヤハウェの隊商襲撃隊に悪魔祓い達も加わり、不穏な気配が漏れ出していた。




