異形のモノたち
「な、なんだお前……」
ビルの言葉を待たずして、テレビ頭は銃口を頭に押し当てると、指を自身の画面の前でそっと立てる。
「黙ってろってか……?」
直後、テレビ頭が電子錠と口をふさぐ機械を取り出すと、ビルとシェリーに取り付け、地面へ張り倒す。
身動きが取れず声も出せない二人は、ただ地面に転がるしかなかった。
(くそ……まだ伏兵がいたのか……まだいるかもしれない、何とかしてサムたちと連絡を……)
「騾繧後※縺?¢」
ビルが考えていると、二体のテレビ頭はカメラ頭を起こし、未知の言語で合図のようなものを出す。
すると、どこからともなく大きな足音が聞こえてきた。
(!今度はなんだよ……)
二人の眼前に現れたのは、頭部がドラム型洗濯機の形をし、コンテナを抱えた人型のなにかだった。
同刻 アナたちの仮キャンプ地
「ビル?シェリー!?何があった!応答を!!」
サムは必死に呼びかけるが、二人から返事はない。
「捕まったのかしら……」
「あの二人をか?ビルはまだしも、シェリーをとらえるのは相当な手練れだぞ」
キッドとシェリーが不安げに話していると、レオンハルトが突然立ち上がった。
「心配だ……我が見てくる!」
『ダメだレオンさん。二人を拘束するような奴だ、ここで散り散りになれば全滅の危険が高まる』
「だが!」
「助けてくれ!!」
コナーとレオンハルトが言いあっていた矢先、二人が進んでいった方向から、ビルの声が響く。
「!!ビル!!今行くぞ!!!」
そのとたん、レオンハルトはハンマーを手に、矢も楯もたまらず飛び出していく。
「あ、おいレオン!!ったく……サム、悪いがここを頼む!!」
「わ、わかった!」
そんなレオンハルトを追うように、アレキサンダーは駆け出して行った。
「助けてってことは、やっぱり何かに……?」
「新手の超獣か?」
『ここらは植物型超獣が多いですからな……また何かにとらわれたのやも……」
「……だといいけど……」
『何か気がかりか、サム』
「……ガストン。”妨害電波を出す超獣”はこの辺りにいるかい?」
『俺が知る限りはいないが……どうして』
「テレパシーインカムは脳で直接やり取りできる。特定の妨害電波を出されない限り、通信がつながることはないんだ。そういう超獣がいないとなると……」
「第三者……?」
「だが何のために……?」
「助けて!!」
皆が議論していると、次はシェリーの声が響く。しかし、方角はビルの声がした方向とは真逆だった。
「!また!」
「どうするサム。何者かの仕業ならこれは意図的な分断工作だ。行けばどうなるか」
「……もし本人だったら、見殺しにすることになる。そんなこと絶対にできない!」
「そう言うと思ったぜ」
キッドマンは笑いながら言うと、銃を抜き立ち上がる。
「俺が見に行ってくる。みんなはここで待ってろ」
『キッドさん!!俺も同行しましょう!!』
「ダメだエンヴィー。大型超獣の襲撃があったらどうする。ほかの皆もだ、ここを守っててくれ」
そう言って、キッドは駆け出す。
しかし、そんな彼の背を追う足音がすぐに彼の耳に入った。
「僕も行きます」
「おいサム!」
「ここの防衛はエリーとエイペックスプレデターズの皆がいる。アナは心配ない。人出が多いほうがいいでしょう?」
「……わかった、とっとと行って済ませちまおう」
「エリー!みんな!アナとテリーを頼んだよ!」
「わかったわ!」
『了解!』
皆の返事を背に、二人はかけていった。
「みんな大丈夫かな……」
「大丈夫よ。こういうことがなかったわけじゃないもの。きっと大丈夫」
『みんなの場数は俺たちの比じゃない。心配しなくとも、すぐに帰ってくるさ』
そう言って、ガストンとエリーはアナを元気づける。
しかし、アナの胸中に居座る不安感は、今だ消えずにいた。
同刻 レオンハルト、アレキサンダー班
「おぉーい!!ビル!!どこだ!!」
大声で呼びかけながら、レオンハルトは迷うことなく、うっそうと茂る木々の合間を突き進んでいく。
「おいレオン!!待……ちょ、止まれ!!」
そんなレオンハルトに何とか追いついたアレキサンダーは、息も絶え絶えに彼の腰に手を置いた。
「む?どうしたアレクよ!我一人で十分だぞ!」
「はぁはぁ……考えもなしに……はぁ……走り出したのに……ふぅ……何が十分だって……?」
「何を言う!しっかりと考えておるぞ!」
「じゃあ言ってみろ!まさか声のする方向に行って、何かいればねじ伏せるなんて言わないだろうな!!」
「おぉ!よくわかったな!アレクよ、いつの間に心を読めるようになったのだ!」
「ったくこの爺さんは……」
ため息をつきつつ、息を整えたアレキサンダーは、背中のランスを手に構え周囲を警戒する。
「とか何とか言ってる間に、ここら辺が声のしたあたりだぞ」
「ふむ……特段なにかいるようには……」
と、二人のハンマーとランスが、ある一本の木に向く。
「何者だ!姿を見せよ!」
「おとなしく出てくれば、痛い思いはしなくて済むぞ!」
そう言って、二人は木へと歩み寄っていく。
じりじりと距離が縮み、緊張が色濃くなる。しかし、二人が感じ取った気配の主は姿を見せない。
「しぶといやつだな……どうする?」
「ちょうどいい、木ごとへし折ってくれよう!」
「賛成だ!」
そう言って二人が武器を振りかぶった。
その直後
「待って!!」
突然木の裏から、声が響いたかと思うと、二本の腕が飛び出した。
「い、今出ますから!」
そう言って、声の主は木の裏からゆっくりと姿を現す。
「む?」
「な、なんだ?」
スラン・バウイクという熱帯雨林に似つかわしくないグレーのスーツ姿の声の主。その頭部は、人間の頭部大のスピーカーだった。
「は、初めまして。お二方」
「くだらない社交辞令は結構だ。ビルとシェリーはどこだ」
「返答次第では、痛い目に合うかもしれんぞ?」
「えっと、お答えしたいんですが……生憎そうもいかず……」
「随分余裕だな。この状況見えないか?」
「なにぶん、こんな頭ですから……」
その言葉を聞いた二人は耐えきれず、スピーカー頭を地面に押し倒すと、それぞれの武器の先端を頭に向けた。
「だったらその減らず口もきけなくしてやろうか!!二人をどこにやった!!」
「返答次第ではただでは済まさんぞ!!」
「わわ!!待って待って!」
二人の威圧に焦るスピーカー頭は、焦りつつも再びしゃべり始めた。
「その前に一つだけ!一つだけお聞きしたいことが!」
「なんだ!!」
「来たのはお二人だけで……?」
「見て分からんか!!」
「そうですか……では」
すると、先ほどまで漂っていたスピーカー頭の軽薄な空気が消えた。
「私の仕事は終わりです」
ギュギイイイイイイイ
直後、スピーカー頭が強烈に不快な音を発し始める。
「ぐお!?」
「な!?」
突然の事に、二人は思わず武器を手放し、耳をふさぐ。が、なおも止まらぬ異音は、二人の鼓膜を揺らし続ける。次第に、二人を激しいめまいが襲い始めた。
「な……んだ……」
「くそ……頭が……」
ついに耐え切れず、二人はその場に膝をつく。
そのタイミングで、わきから新たに二人近づいてくる。
二人の頭はマイクの形をしていた。
「な、なんだ……こいつら……」
つぶやくアレキサンダーの口を、マイク頭は特殊な機械で塞ぎ、手足を電子錠で拘束した。
「何を……」
言い終わる間もなく、もう片方のマイク頭は、レオンハルトにも同様の措置を行う。
二人が動けなくなったのを見届けると、スピーカー頭は音を止め、背後に未知の言語で何かを呼び掛ける。
「諡俶據螳御コ??騾繧後※縺縺ヲ縺?>縺ァ縺吶h縲」
すると、背後からビルとシェリーをとらえた一団が姿を現した。
「繧医@縲√%縺?▽繧峨b蜈・繧後m」
「莠?ァ」
テレビ頭が呼びかけた瞬間、洗濯機頭は二人を軽々掴み、抱えていたコンテナに投げ入れると、即座にふたを閉じた。
「縺ゅ→莠比ココ」
何かをつぶやいたテレビ頭。その声を聞き、一行は二人の武器を手に、歩き出していった。
同刻 キッドマン、サム班
「ここらへんだな」
警戒しつつ、二人は声のした地点に到着する。
「開けていて見晴らしが良い。……待ち伏せにはもってこいだな」
「ですね……何が出るやら……」
ガァン!!
と、キッドマンが右前方に銃を向けると、迷いなく発砲する。
「!!キッド!」
「安心しな。スタン弾だ。それよりも……」
「ギャアア繧ョ繝!!」
着弾地点から叫び声が響くと同時に、何かが倒れる。二人は即座に駆け寄ると、声の主の姿を見た。
「!これは……」
「……これまた、奇怪な奴が出てきたな……」
二人が目にしたのは、レオンハルトたちが見たスピーカー頭とうり二つの者だった。しいて違う点を挙げるなら、スーツの色が黒であるということぐらいだろう。
「アンドロイドか?」
「以前、能力を抑制するために特殊な被り物をしている超人を見たことが」
「ふぅむ……ま、この際どっちだっていいさ」
放し終わると、二人は眼前のスピーカー頭へ銃口を向ける。
「しびれるだろうが話してもらうぞ。二人をどこへやった。何が目的だ」
問いかけるも、スピーカー頭はうめき声のような雑音しか発さない。
「相当効いてるな。そこまで電圧は上げてないんだが」
「演技じゃなければ、アンドロイドで間違いないですね。この状態では、話を聞くの難しそうだ」
「なら、いったん連れていくか。ゆっくり尋問して聞き出しゃいい」
そう言って、キッドマンはスピーカー頭を肩に担ぐ。
「意外と重いな……」
「変わりましょうか?」
「馬鹿言え。これぐらいなんてこと」
ガザザ!!
二人が話していた直後、背後の森林からけたたましい音が鳴り響いたかと思うと、縦型洗濯機の頭の巨人が駆け出してきた。
「!?」
「なんだ!?」
二人は反応するも一足遅く、洗濯機頭はサムの体を掴み武器を振り落とすと、自身の頭部に投げ入れ蓋を閉じた。
「てめぇ!ビルとシェリーだけじゃ足りねぇってか!?」
叫びながら、キッドマンは肩のスピーカー頭を地面に落とすと、即座に頭部に銃口を向ける。
「三人を放せ!さもなきゃ、お仲間にどでかい風穴があくぞ!」
続けてキッドマンに手を伸ばしていた洗濯機頭の手は、その場でぴたりと止まる。
「さぁどうした!!とっととお前の頭ん中の奴らを」
「縺翫>」
直後、キッドマンの背後から不気味な声が響く。
(新手!!」
キッドマンは素早く銃口を後ろに向け、引き金に力を籠める。
ブゥゥゥゥン
しかし、キッドマンの目に真っ先に入ったテレビ頭の紫に光る画面と音は、なぜだか彼の動きを止めると、その場で硬直させた。
(な……なんだ……体が……動かねぇ……)
活発な意識とは裏腹に、キッドマンの体は固まったかのように動かない。
そんなキッドマンの手から銃を取り上げると、テレビ頭はビルたちにしたように、高速具と口封じの機械を取り付けると、洗濯機頭に何かを語り掛ける。
「荳ュ縺ョ螂エ縺ッ縺ゥ縺?☆繧?」
「縺薙?縺セ縺セ驕九?縲ょョ牙ソ?@繧阪?豁ヲ蝎ィ縺ッ謐ィ縺ヲ縺溘」
「莠?ァ」
(なんだこいつら……なんて言ってやがる……)
キッドマンが考えていると、テレビ頭がスピーカー頭に突き刺さっている弾を取り出し、身なりを整えさせていた。
「縺ゅ→荳我ココ豌励r謚懊¥縺ェ」
未知の言語を聞きながら、キッドマンの視界は、コンテナの暗闇に変わっていった。
同刻 仮説キャンプ
「……おそい……」
不安がるアナが、空中であたりをきょろきょろと見まわす中、ガストンの肩に乗るエリザベスとエイペックスプレデターズの面々は、武器を手に周囲を警戒していた。
「確かに遅いわね……やっぱり待ち伏せ?」
『今は待つしかないでしょうなぁ……コナー、反応は?』
『特になし。まだ戻らなさそうですね』
『やはり!自分が見に行ってまいります!!』
『落ち着けエンヴィー。ここが手薄になることが狙いだったらどうする。これ以上防衛能力を下げるわけにはいかん。じっとしてろ』
『しかし!!』
『全員警戒!何か来る!!』
二人が言い合いをしていると、コナーが叫ぶ。
『なにぃ!?』
エンブラムがコナーのいる方へ向いた直後。
ガザア!!
木々を振り払い、巨大な人型の何かが、エンブラムのエグゾジャイアントに組み付く。その頭部は、大型の冷蔵庫の形をしていた。
『どわ!?なんだぁ!!?』
『なんだ!?冷蔵庫!?』
『エンヴィー!!動いてはなりませんぞ!!』
コナーとエンブラムが驚く中、バリトンはかまえていたプラズママシンガンの照準を冷蔵庫頭に構える。
バガッ
すると、突然冷蔵庫頭の頭部が開いたかと思うと、内部からとてつもない冷気を帯びた暴風が、バリトンめがけて吹き付ける。
『!!まずい!』
バリトンは即座に自身の肩に乗っていたテリーを抱え、背を向けて守る。
すると、風に当たった部分が徐々に氷り始め、バリトンのエグゾジャイアントを白く染め上げていく。
『冷気か!』
「やめなさい!!」
そんな中、アナがラプターに乗り、冷蔵庫頭に飛んでいくと、手のひらに目いっぱいの力を籠め、冷蔵庫頭に手を向けた。
【ブルーホール!!】
ドォン!!
放たれた光弾が冷蔵庫頭の頭部に直撃し、そのバランスを大きく崩す。
「やった!撃てた!!」
喜びつつ、アナがもう一発を放とうとしたその直後。
「アナ!後ろ!」
突然、背後からエリザベスの声が響く。
「エリー!?」
咄嗟に振り替えるアナ。
しかし
「違う!私じゃない!!」
「え!?」
声の主が違うことに、アナの脳が一瞬混乱する。
その隙をつき、バランスを崩す冷蔵庫頭を伝って、テレビ頭がアナにとびかかった。
「!!それぐらい!!」
アナは即座にラプターを使って反撃を試みる。
しかし、一歩遅かった。
ブゥゥゥゥン
テレビ頭が放つ奇怪な光線が、アナの体を硬直させる。そのままテレビ頭はアナを抱えると、冷蔵庫頭と共に森へと逃げていった。
「!!アナ!!」
冷蔵庫頭に向いていたエリザベスの注意がアナに向いた直後。
グアッ!!
突然、コンテナを抱えたドラム型の洗濯機頭の手が森の中から伸び、ガストンの肩にいるエリザベスの体を掴む。
「きゃ!!」
反撃の暇なく、エリザベスは洗濯機頭の頭部にしまわれてしまった。
『テメェ!!』
そんな洗濯機頭の首をガストンはとっさに掴むと、腰から抜いたナイフを洗濯機頭のわき腹に突き刺した。
しかし、洗濯機頭は意に介すことなくガストンのエグゾジャイアントを蹴り飛ばすと、ナイフを抜き捨て、即座に森の中に逃ていく。
『逃がすわけないだろう!』
言うと同時に、コナーのエグゾジャイアントは、背中にしょっていた巨大なスナイパーライフルを構え、逃げる洗濯機頭に照準を向ける。
ドガァン!!
突然、エンブラムのエグゾジャイアントが、コナーめがけて吹き飛んでくる。先ほど倒れた冷蔵庫頭が、とっさの隙で投げ飛ばしたのだ。
『ぐおお!?』
『エンヴィーよけて!!これじゃ狙えません!!』
『そ、そうは言っても!!』
ゴオオオオオ!!
もめる二人を、冷蔵庫頭の放つ冷気が冷やし、二人のエグゾジャイアントを固めつなげる。
あっという間に、動けるのはガストンだけとなってしまった。
『くっそ!動くな!動けばハチの巣だぞ!!』
冷蔵庫頭に勧告し、ガストンは腰に携えていた三連奏ミニガンを構える。
しかし、冷蔵庫頭は気にするでもなく、洗濯機頭のいる方へと走り去っていった。
『逃がすか!!』
「お待ちを!!」
突然、銃を構えるガストンの背後から声が響く。
ガストンが振り向くと、そこにはスピーカー頭が立っていた。
「これ以上ここにいない方がいい」
『あぁ移動するとも!お前らを廃材にしてからな!』
「そんな暇があるといいがね」
ブオオオオオオオオン
スピーカー頭が不敵な声を上げた直後、大笛のような音が鳴り始めた。別のスピーカー頭が鳴らしているのだ。
『なんだ!?』
「超獣を呼び寄せる音階です。じきにここには相当数の超獣が来る。早めの離脱をお勧めしますよ」
そう言って、スピーカー頭たちは森に走り出していく。
ザシュッ
「セイバー……エッジ……!!」
突然、バリトンの手から飛び出したテリーが、スピーカー頭の一体を、爪で切りつける。
「ガッ」
しかし、それでも足を止めることはできない。スピーカー頭は、一直線に森をかけていった。
「待て……!!」
走り出そうとするテリー。しかし、麻痺の後遺症で体が動かない。直ぐにその場に倒れこんでしまった。
ドドドドドドドドド
すると、周囲から無数の足音が響き始めた。
『くそっ!もう来たのか……テリー!これ以上ここにいちゃ危険だ!いったん逃げるぞ!!」
「そんな……!みんなが……!」
『ここで全滅すればチャンスもなくなる!!行くぞ!!』
「う……ま、待て……」
ガストンが拾い上げる中、必死に手を伸ばすテリー。
しかし、その手は皆に届くことなく、空を掴むだけだった。
to be continued




