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ガンズオブスプリンターズ  作者: サラマンドラ松本
第三章 平和の守護者
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平和への道

「今回はありがとうございました」


そう言って、ダー・ラッタはサム、レイモンドと固い握手を交わす。




政府官邸での演説……もとい会見を終えてから一時間後。


答えども答えどもあふれ出てくる記者たちの質問をかいくぐり、ダー・ラッタたちヴァルダーナ寺院の面々は、裏口から自国「パリーナ」への帰路に就こうとしていた。


そんな中、SIU一行とレイモンドが、見送りと例を兼ね、ひっそりと会いに来ていたのだ。


「しかし、本当によろしいのですか?パリーナまで護衛できますが……」


「これ以上皆さんに労力をかけさせるわけにはいきませんよ、サム。それに、今回の事件で我々を守り切ってくれたことだけで十分ですから」


「いえ、至らぬところは多々ありました。我々の不徳の致すところです……」


「何を言いますか。事件の翌日に護衛を申し出てくれただけでも、我々はありがたく感じているのですよ」


「そんな…………え?」



と、ここでSIU一行に疑問が浮かぶ。そして、その疑念を真っ先に口に出したのは巌流だった。



「ちょっと待ってください。”申し出た”?皆様が我々にご依頼したのでは?」


「?……いえ、我々は誰も依頼等は行っておりませんが……」


「おかしいですね……確かに我々は”行脚に同行している寺院関係者からの依頼”ということで来たのですが……」


「はて……誰か、WDOにご依頼しましたか?」


巌流の言葉に疑問を感じたダー・ラッタが付き人達に尋ねるも、首を縦に振る者はいなかった。


「どうやら、何かの行き違いがあったようですね……」


「まぁ……特段不利益があるわけでもないようですし、結果オーライということで」


朗らかに話すダー・ラッタの言葉で、一行は疑念を一度振り払うと、再び別れの挨拶を始める。



と、ダー・ラッタの元にアナが駆け寄ってきた。


「ダー・ラッタさん!」


「おや、アナ!今回は大活躍だったと聞きましたよ?」


「えへへ……ダー・ラッタさんのおかげで、いつもより動けた気がする」


「私の?」


「うん!一日目の夜に教えてくれた、”正義とは何か”。あれのおかげ」


「そうでしたか……私の言葉が助けになれたなら、またとなく嬉しいことですね」


そう言うと、ダー・ラッタはゆっくりとかがみ、アナの頭をそっと撫でた。


「アナ。あなたの思う道を行きなさい。あなたの行いは、きっと人々を笑顔にできるはずです」


「はい。ありがとう、ダー・ラッタさん。お元気で」


「えぇ。またいつか、どこかで会いましょう」


そう言って立ち上がったダー・ラッタは、サムたちやレイモンドに軽く一礼をすると、車に乗り込む。


ダー・ラッタの搭乗を確認した車は、エンジン音と共に彼方へと走り去っていった。




ダー・ラッタ一行を見送ると、今度はレイモンドが口を開いた。


「皆さん、今回は本当にありがとうございました。本来ならば、我が国で完結させなければいけないことであるというのに……」


「気にしないでくださいよ、大臣。突然のことでしたのに様々面倒を見ていただいて、感謝しています」


「我々はせいぜい、宿泊場所を手配しただけですよ……」


「それだけだとしても、我々にとってはありがたいことなんですよ」


「そうそう。久々だぜ、あんないいホテル泊まったの」


「あれぐらい豪華なとこ、滅多にないものねぇ」


ビルとエリザベスが、ホテルのことを思い返しながら話し始めたのをきっかけに、皆も口々に話し始める。


「ほんと!!ご飯おいしかった~」


「運動場もよかった。設備もメンテナンスも行き届いている。訓練にもってこいだ」


「監視でほとんど外にいたけど、係の人が差し入れを持ってきてくれたりしたの、嬉しかったなぁ」


「私、あんなふかふかなベットで寝たの初めて……!」


皆が口々に笑顔で話すさまを見て、レイモンドは笑いをこらえきれず、思わず噴き出した。


「あっははははははは!皆様気に入っていただけたようですな!」


「申し訳ありません大臣……」


「いえいえ!がっかりされるよりはうれしいですよ!」


ひとしきり笑った後、レイモンドは再び手を前に出す。


「改めて皆さん、此度は本当にありがとうございました。今度は任務ではなく、ぜひプライベートでお越しください。我が国一同、心よりお待ちしております」


「こちらこそありがとうございました。またいつか、よろしくお願いします」


サムは皆を代表して固い握手を交わす。



「ミナサン、オマタセシマシタ!」


オリバーが運転する送迎車が到着した。


「それじゃあ、みんな行こうか」


「「了解」」


皆はレイモンドに一礼すると、次々車内に乗り込んでいく。


「レイモンドさん」


と、笑顔で見守るレイモンドの元に、アナが駆け寄ってきた。


「アナさん!」


「ありがとう、見て見ぬふりをやめてくれて」


「いえ、功績が認められてのことです。不謹慎ですが……今回の事件がなければ、政府も認めることはなかったでしょう」


「ううん」


レイモンドの言葉を優しく否定し、アナは笑いかける。


「あなたが一歩踏み出したから、みんなが動いたの。あなたのおかげよ」


その言葉を聞いたレイモンドは、照れくさそうにはにかみながら答えた。


「……つい忘れてました。意外と難しくなかったので……ね」


言葉を交わし、互いに笑いあう二人。


そんな二人に、サムは申し訳なさそうに声をかけた。


「アナ。もう行くよ」


「あ、うん」


サムの言葉に簡素な返事を返したアナは、再びレイモンドに向き直り、笑顔で手を伸ばした。


「ありがとう、またね」


「えぇ、またいつか」


握手を交わすと、アナは手を振りながら車に乗り込む。


搭乗を確認し、車はエンジン音を鳴らして走り出していく。そんな車の後姿を、レイモンドは名残惜しそうに見つめながら、手を振り続けていたのだった。




一行の車が彼方に消え、レイモンドは降っていた手を下ろすと、小さくつぶやきながら官邸に戻っていった。


「まったく……彼も照れ屋なんですから……」






数十分後 ブルケート郊外


「よぉし、到着」


荷物を地面におろしながら、ビルはつぶやく。その眼前には、数日の間停泊していたバトルホークが鎮座していた。


「さ、みんな荷物を積み込んで。直ぐに出発するよ」


「ったく、観光は無しかよ~」


「ビルは二日目にしたからいいじゃん。僕とオリバー、それにサムと巌流は、今回観光無しなんだからね?」


「おかげさまで、楽しかったわよ~」


「ごめんね、僕らだけ楽しんじゃって」


「オ気ニナサラズ。……私ハ監視ツイデニ街ヲ見レマシタカラ……」


「え、ずる~い。僕そんな余裕なかったよ?」


「まぁまぁ。今度また来ればいいさ。その時は、僕らもたっぷり楽しむとしようよ」


「その通り。今回は任務なんだ、しょうがないことだろう」


「僕は君と違って、行く街行く国を楽しみたいの。気を張りすぎて変になっても知らないよ?馬鹿真面目さん」


「まじめで結構。うつつを抜かしてへまをするよりはましだ」


颯と巌流のいつもの言い合いを見て、皆の顔は笑みで満ちた。




そうこうしているうちに荷造りは完了し、オリバーとビルがエンジンをかける。



コオオオォォォ



バトルホークのエンジンが次第にうなりを上げ、プラズマエンジンは青い光を放ち始める。


『さぁ、出発するぞ。全員乗った乗った!』


広大な草原をのんびりと眺めていた皆は、ビルのアナウンスを聞き、ぱっかりと開いた後部ハッチから乗り込んでいく。


「いやぁ、これでおしまいかぁ」


「色々あったけど、なんだか名残惜しいわね」


「これだけのどかなんだ、今度はゆっくりとしたいものだな」


「なんだかんだ言って名残惜しそうじゃん、巌流」


「……少しな」


巌流の言葉に、皆は笑い出す。



と、最後尾のアナの足が、ハッチの一歩手前で止まった。



「……?どうかしたかい?アナ」


「……ううん。なんでもない」


「何かあるなら遠慮せず言っていいのよ?」


「忘れ物しちゃった?僕が取りに行こうか」


「違うの颯。ただ……」


そう言って、彼女は広大な平原へ振りかえる。



「もう一度……彼と話したかったなって……」



「……彼も忙しいのよ、きっと」


「今日から本格的に始動するもんね。二代目ジャスティスマンとして!」


「もう先代はいいのか?テリー」


「世代は変わっても、ジャスティスマンはジャスティスマンだよ!ずっと応援するさ」


「この国に来れば、また彼と会えるかもしれない。次回はそれを楽しみに、また来よう」


「……うん、そうだね」


サムの言葉に笑顔でうなずき、アナは踵を返し、一歩踏みだそうと、足を前に出した。





「待った!!!」



後ろから、聞きなじみのある声が響く。



アナが思わず振り返る。



彼女の眼前にいたのは、ジャスティスマンの格好をしたパウロだった。


「!!パウロ!!」


あまりの嬉しさに、機内へと向いていた脚は一気に外へと方向を変え、そのまま一直線に駆け出して行く。


まるでロケットのように、アナはパウロに抱き着いた。


「よかった!もう一回会いたかった!!」


「はははっ!そこまで喜んでくれるなんて……うれしいな!」


パウロは笑顔でアナを抱きしめると、そのままぐるぐるとアナを持ち上げ回転する。


ひとしきり回った後、パウロは笑うアナをそっと着地させ、彼女の目線までしゃがみ込んだ。


「アナ。本当にありがとう。君のおかげで、僕の迷いは晴れた。これで胸を張って、ジャスティスマンと名乗れるよ」


「ううん、あなたはずっとジャスティスマンだった。今までも、これからも。正義と平和のために戦う、平和の守護者だったわ」


「……ありがとう。いつか全ての人にそう思ってもらえるように、頑張るよ」


言葉を交わし、二人は笑いあい、固く手を握る。


数秒の間、心地よい沈黙が流れる。


その沈黙を破ったのは、パウロのほうだった。


「さ、もう行かなきゃ。君もだろ?アナ」


「……うん」


名残惜しそうに、アナの手はパウロの手を離れていく。


「じゃぁねパウロ。今度は遊びに来るから」


「あぁ、またおいで。待ってるよ」


別れを告げると、アナはバトルホークへと駆けていく。



思い返せば、二人はどこか似通っていた。



互いに誰かの想いを継いだ。



互いに正義に悩み、迷っていた。



そして、互いに夢を持っていた。



そんな二人が出会ったことは、恐らく偶然ではないのだろう。

そんな二人だからこそ、互いに迷いを打ち消し、また夢へとひた走れるようになれたのだろう。



多くのものを得た。アナとパウロは、互いにそう感じていた。



「よぉし!出発するぞ!!」


アナが乗り込んだのを確認し、バトルホークは後部ハッチを閉じ、徐々に地面から離れていく。



「……またね、”ジャスティスマン”……」


「またいつか……”アナ”」



聞こえぬほどの小さなつぶやきが重なった直後、バトルホークは彼方空へと飛びったっていく。



パウロは……いや、ジャスティスマンは、その軌跡をただ眺めていた。


to be continued

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