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ガンズオブスプリンターズ  作者: サラマンドラ松本
第三章 平和の守護者
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三章最終話 平和の裏で

「いやぁ、長いようで短かったな……」


オリバーに運転を任せたビルが、大きく伸びをしながらサムに話しかける。


「まさかガイラスが介入してくるとは思わなかったからね……想像以上の大仕事になってしまった。もっとも……僕ら二人は楽しちゃったけどね……」


「まだ二人とも前回の作戦(アイアンエデン)の傷も癒えきってないもの。こういう時ぐらい、私達に任せて頂戴」


「ありがたいよ。でも……」


話すサムの視線は、アナのほうに向く。


一連のことで疲れたのか、アナは仮眠用の簡素なベットで、テリーと共にくぅくぅと寝息を立てていた。


「今回は休暇のつもりだったのに、結局彼女に無理をさせたことが心残りでね……」


「俺たちの仕事はこういうことの連続だ。いたし方あるまい」


刀を手入れしながら、巌流が会話に入る。しかし、しきりにアナのほうを見る彼を見て、皆は彼の胸中にある感情を見透かしていた。


「そうねぇ……”例の力”をまた使ってたけど、体調崩さないか心配だわ……お薬調合しとかなきゃ」


「あ、そうだ。薬で思い出したんだけどさ」


と、グローブを外した颯が、指の柔軟を行いながら皆の元に歩いてくる。


「エリー、あとでこれ調べてくれないかな」


そう言って、颯はポケットからあるものを取り出し、エリザベスに手渡す。



それは、ガイラスが使用した、注射器だった。



「これは……あの時の……」


「そ。かなり粉々になっちゃってるけど、かろうじて液体の付着した部分を回収した。これ調べたら、今回の黒幕がわかるかもと思って」


「黒幕?だれかバックがいると?」


「だってそうでしょ?注入しただけで体つきが劇的に変わるほどの薬剤、一介やぁ、長いようで短かったな……」


オリバーに運転を任せたビルが、大きく伸びをしながらサムに話しかける。


「まさかガイラスが介入してくるとは思わなかったからね……想像以上の大仕事になってしまった。もっとも……僕ら二人は楽しちゃったけどね……」


「まだ二人とも前回の作戦(アイアンエデン)の傷も癒えきってないもの。こういう時ぐらい、私達に任せて頂戴」


「ありがたいよ。でも……」


話すサムの視線は、アナのほうに向く。


一連のことで疲れたのか、アナは仮眠用の簡素なベットで、テリーと共にくぅくぅと寝息を立てていた。


「今回は休暇のつもりだったのに、結局彼女に無理をさせたことが心残りでね……」


「俺たちの仕事はこういうことの連続だ。いたし方あるまい」


刀を手入れしながら、巌流が会話に入る。しかし、しきりにアナのほうを見る彼を見て、皆は彼の胸中にある感情を見透かしていた。


「そうねぇ……”例の力”をまた使ってたけど、体調崩さないか心配だわ……お薬調合しとかなきゃ」




「あ、そうだ。薬で思い出したんだけどさ」


と、グローブを外した颯が、指の柔軟を行いながら皆の元に歩いてくる。


「エリー、あとでこれ調べてくれないかな」


そう言って、颯はポケットからあるものを取り出し、エリザベスに手渡す。



それは、ガイラスが使用した注射器の破片だった。



「これは……あの時の……」


「そ。かなり粉々になっちゃってるけど、かろうじてシリンジ部分を回収した。これを調べたら、今回の黒幕の手がかりになるかも」


その言葉を聞いたビルの表情が、一気に曇る。


「黒幕……ガイラスに暗殺を依頼した奴か」


「注入しただけで体つきが劇的に変わるほどの薬剤、よほどの知識がないと製造は無理。快楽殺人鬼が作れるわけがない。依頼人は、この薬を作った人間だろうね」


「だが何のために?暗殺だけなら、薬なんか渡す必要ないだろ?」


「あるとも」


ビルの疑問に、巌流が答える。


「奴が使えば、耳の早い裏社会には、あの薬剤の効果が知れ渡る。販売目的なら……今回の事件、格好の”販売プロモーション”だろう」


「使わなかったら?」


「社会的混乱が広がり、裏の介入が容易になる。どのみち販促になるわけだ」


「……そんな派手なこと、今どきどこがやるよ……今残ってる犯罪組織だって馬鹿じゃねぇ。そこまで活性化したら、お上(世界政府)が潰しにかかることぐらいわかるだろ」


「……いや、巌流の話もあながち間違いじゃないかもね」


今度は、サムがビルの疑問に答える。


「今回の一件、最初からおかしかったんだ。僕らはヴァルダーナ寺院側の依頼だと聞いたのに、あちら側は”WDOの提案”と言った。それに、最初の暗殺未遂犯は今だ捕まってないにもかかわらず、ガイラスの援護はしていない。”協力関係にない”んだ」


「裏で懸賞金がかかってるかもって話だったろ?どうなんだよ、颯」


「いろんなとこ確認したけど、そんな話まるで出てなかったよ」


「つまり金でもない。成否関係なく事を重大化させて、WDO介入の足掛かりに利用したんだろうね」


「一度目の暗殺未遂は布石か……」


「そのうえで、厳戒態勢となった警備体制の中にガイラスを突っ込ませる。そうすれば追い詰められる確率は上がるし、必然、薬を使う可能性も上がる……ってわけね」


「奴の無計画さと無鉄砲さも織り込み済みってわけか……ずいぶんと綿密にプロファイリングしてんだな」


「……慎重で計画的、暗殺依頼を複数人にできるほど、資金も潤沢にある……今後より一層気を引き締めていかないといけないね……」


眉間にしわを寄せながら、サムは皆に話す。


そんな彼の視線の先には、壊れた注射器が、苦々しい光を放っていた。





















同刻 世界のどこか 護送車列隊の一台


「ん……」


「おや、目覚めましたか。存外効きの早い薬ですね」


ガタガタと揺れる移送車両。その拘束寝具の上で、ガイラスは目を覚ます。


まだ意識がはっきりとしない中、ガイラスは自身に声をかけてきた、足元付近に座るヘルメットをかぶり武装した男に話しかけた。


「ここは」


「護送車両の中です。あなたは現在、特殊収容施設「パンドラ」へと身柄を明け渡されることになっていますよ」


「パンドラ……?パンドラだと!?」



その言葉を聞いた瞬間、ガイラスは跳ね起き、男の首を掴む。


「ふざけんじゃねぇ!!今すぐ進路を変えろ!!!」


恨みのこもった怒気を放ちながら、ガイラスは男を怒鳴りつける。



しかし、当の男は驚くほど冷静だった。



「そう怒らずに。何の得もありませんよ」


男が話した直後、隣から「カチャッ」という音が耳に入る。


ガイラスが目をやると、武装した隊員が銃口をまっすぐ向けていた。


「そんなもんで俺を殺せるとでも思ってんのか」


「今のあなたにならば、十分でしょう」


見透かしたように男は話す。



確かに男の言う通り、ガイラスは今、極度に弱っている。


戦いのダメージの修復にほとんどのエネルギーを使っているため、装甲の硬度を維持できていないのだ。


まして、体力のない今、下手に傷を負うことは死を意味する。



それを承知していたガイラスは、悪態をつきながら手を下ろした。


「……くそっ……なんで起こした。じき到着か?」


「あぁ……そういえば、要件がまだでしたね」


そう言うと、男は腰のポケットから小さく厚みのあるディスクを取り出す。


そして、にやりと笑って告げた。




「ボスが話したいそうです」




男がつぶやいた直後、ディスクがホログラム映像を映し出す。




「やぁ。久しぶりだね、ガイラス」




そこには、黒いローブに身を包んだ赤い髑髏顔があった。




その映像を見たガイラスの顔に、再び激情の色が戻る。




「ヴェール!!!てめぇ!!!」




ガイラスは怒りのあまり爆速で起き上がり、ホログラムに顔面を近づけた。


「てめぇが暗殺なんて依頼しやがったせいでパンドラ送りだ!!!何とかしろ!!!」


「困るな、僕のせいにされちゃあ。それはひとえに君の力不足だろう?引き受けたのだって君だ。今回の失敗は、君がしくじっただけのことさ」


「なにが『君のせい』だふざけやがって!!スナイパー手配したの、ありゃてめぇだろ!!それにあの薬!!!頭がボーっとして思い通り動けやしねぇ!!粗悪品渡しやがって!!!責任取れ!!!!」


激昂するガイラスをなだめるように、ブラックヴェールはゆっくりと話す。


「そう怒るな友よ。しょうがない理由があってね」


「理由だぁ?!」


「そう。今回君に任務を依頼したのは、この瞬間を作るためなのさ」


「……なんだと?」


困惑するガイラスをよそに、ヴェールは淡々と続ける。


「元来、虫の超人、超獣は、成長期の時期、または身体に強い負荷がかかると、適応した強力な体へと変わるため、”変態”を遂げる。”三回”と制限はあるがね。君も昔体験したんじゃないかな?中学生ごろの時期、それと……”五年前”に」


「……その話はするな。今でもあの野郎(ジャスティスマン)にやられた傷がうずく……」


「まぁいい。君はすでに三回中二回、変態を行った。一度目は成長期のものだから変化は大きいが、二度目はたいして差異がなかったはずだ。せいぜい、装甲が硬くなったこと、動きに邪魔な部分が削れたことぐらいかな?」


「……ストーカーか?てめぇ」


「よく調べただけさ」


若干の不気味さを感じつつ、ガイラスは再び尋ねる。


「で?それと今この瞬間に何の関係がある」


「わからないか?君は今回の戦いで大きなダメージを負った。確実に”三度目”が来る。その時に、強力な体に変わる”手伝い”をしたいんだ」


「手伝いだ?」


「君が二度目の変態で大した差異がなかった理由。一番の要因が、”栄養不足”だ。傷の治療に専念するあまり、逃亡先で”狩り”をほとんどしなかったろう。それがいけなかった。至極勿体のないことだ」


「じゃあなにか?お前なら、俺に安定して”栄養”を供給できると?」


「そうとも。無論食事だけじゃない。君の好きな娯楽も、可能な限りさせてあげよう。酒。たばこ。頻繁にはできないが、殺しも……」


「そいつぁいいや。そんじゃ、このままお前んとこのねぐらまで移動か」


「いや、これらはパンドラ内で行う」


「なに!?」


瞬間、落ち着きつつあったガイラスが、再び激昂する。


「どうせお前の身内で固めてんだ、このまま逃がしてくれよ!!」


「君のパンドラ移送は、既に大々的に報じられた。逃がせば世界的な追跡が始まるだろう。我々も君も不利益が大きすぎる。その手は避けた方がいい。安心してくれ。パンドラ内に何人か協力者を潜り込ませてある。彼らのおかげで、君専用のVIPルームを用意した。不自由はないと約束しよう」


ヴェールののらくらとした独特な話し方に、次第にガイラスは疲れはじめ、不貞腐れたように話を進めた。


「……ったく、まぁそれで手打ちにするか。で?それだけか?」


「話が早くて助かる。今の条件を踏まえたうえで、君と”商談”がしたい」


「商談?」


「我々は、君の変態を全力で助けよう。その代わり、君は私の言うことを”三つだけ”聞いてもらいたい」


「体のいい配下にするつもりか?それならごめんだ。俺ぁ誰の下にもつかねぇんだよ」


「君の自由は尊重するさ。永続的に縛り付けることもしないと約束しよう。ほんの些細なお願いを、三つだけ。それを聞いてさえくれれば、晴れて君は自由だ」


「……回数増やすのもなしだ」


「もちろんさ。それじゃあ……」


と、ヴェールがディスクを持つ男に目をやる。


すると、即座に男はディスクを置くと、右手のグローブを脱ぎ手のひらに十字の傷をつけた。


「?何するつもりだ」


「お気になさらず。さて……」


息を整えた後、男は血の滴る右手をガイラスに差し出す。


「ギリアン・ガイラス。あなたの要求は、変態のサポート。お間違いありませんね?」


「あ?……あぁ」


「では、ギリアン・ガイラス。あなたは変態後、ブラック・ヴェールのだす、回数の増加並びに貴殿を永続的に縛り付けることのない指示を三つ、無条件で承諾することを了承しますか?」


「何のつもりだ。俺ぁ回りくどいのは嫌いだ」


「すぐ終わりますから……して、了承しますか?」


「……あぁ」


「わかりました。では、この手と握手を」


「……いいだろう」


ガイラスが渋々男の手を握った直後



ディール(契約完了)



ジュウウウウ!!!



男の掛け声とともに、焼けつくような痛みがガイラスの手のひらに走る。


「いっっってぇ!!!?」


ガイラスが自身の手のひらをのぞくと、そこには五芒星のマークが刻まれていた。


「てめぇ何しやがった!!!!」


痛みに激昂したガイラスは、男の胸ぐらをつかむ。


「申し訳ありません。これが私の能力ですから」


「能力だぁ!!?」


そんな男をかばうように、ヴェールがガイラスに呼び掛ける。


「あぁ、彼は組織の”ディーラー(契約人)”でね。傷つけずに頼むよ」


「契約だぁ!?」


ガイラスはディーラーと呼ばれる男をぎろりとにらみつける。


しかしディーラは、こともなげにガイラスに笑いかけた。


「……くそったれが!!!」


悪態をついて、ガイラスはディーラーから手を離すと、自身が拘束されていた寝具に腰を下ろす。


「わざわざこんな刻印刻ませたんだ、約束は守れよ」


「もちろんだとも。そのためのディーラーさ」


ヴェールの不気味な笑い声が、狭い車内に響く。


次第に見え始めてきた不気味に口を開くパンドラは、今のガイラスにはホテルのように見えていた。


to be continued

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