表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ガンズオブスプリンターズ  作者: サラマンドラ松本
第三章 平和の守護者
52/55

青い輝き

(……くそ)


皆が話し合っていたころ。


ガイラスは再生不能となった体から感じる不快感に、顔をしかめていた。


(体が再生しない……頭もボヤつきやがる……撃ち込まれた薬品のせいか……)


先程から何度も複腕に力を籠めるが、腕はピクリとも治らない。


「ちっ……」


あきらめたのか、ガイラスは舌打ちを一つ鳴らす。それと同時に、複腕はすべて体内に引っ込んだ。


(ここで下手エネルギーを使っテも損だ。当分は逃げの方向で……)


考えながら、ガイラスが前を向いた直後。



「ジャスティスパンチ!!!」



パウロの拳が、風を切ってガイラスの顔面を殴りつける。


「がっ……っこんの!!」


一瞬ひるむも、即座にガイラスは腕の鎌を伸ばし、思い切り振り上げる。



グンッ



と、パウロの体が不自然に後退する。


まるで何かに引っ張られたように。


「張り切りすぎだよパウロくん!」


「あ、ありがとうございます!」


パウロの腰に括り付けられた糸を引っ張り、颯は笑顔で叫ぶ。


そんな颯と入れ替わるように、アナのラプターが三機、ガイラスめがけて高速で突っ込んでいく。


【ラプター ユーズトリプル ドリルスクリュー・レーザー!!】


アナの声に合わせ、三機のラプターが回転しながら光線を発射。ねじれドリルのように収束し、レーザーと化した光線は、まっすぐガイラスに向かう。


「くそっ!!」


吐き捨てるように言い放ったガイラスは、近くに止まっている車をラプターで盾を作る。


しかし、束になり威力が格段に増したレーザーは、車ごときでは止まらない。一瞬で照射面は貫通し、その周囲は赤熱し、どろどろと融解していく。


「ちぃっ!!」


舌を鳴らし、ガイラスは車を前方に蹴り飛ばす。



ガジャァン!!



直撃したラプターは軌道がそれ、あらぬ方向へ墜落する。


「うざったい真似しやがって!!まズハてめぇからだクソガキ!!」


直線状にいるアナに狙いを定めたガイラスは、足に力を籠める。



しかし、あることに気づく。



(……?(パウロ)はどこに……?)



疑問を感じた直後、ガイラスの視界の端で、何かが動く。



それは、ラプターに乗ったパウロだった。



「なっ」



ガイラスが驚く間もなく、パウロは思い切りラプターから飛び降りると、急速でガイラスに迫る。


しかし、ガイラスは動じない。


(どウセ来るのはパンチ!カウンターで頭から突き殺す!!)


心の中でにやりと笑みを浮かべ、ガイラスはこぶしを突き出せるよう、ひそかに構える。




その反面、パウロの脳内は、至極緩やかだった。



(今まで(ジャスティスマン)の戦い方を真似てきた。そうしなきゃ……偽物とばれてしまうから。でも……)



パウロは、こぶしを握り締める。



(今はもう、(ジャスティスマン)をなぞらなくていい。無理に(ジャスティスマン)にならなくていい!!)



パウロは、姿勢を変える。



「僕は僕のやりかたで!!お前を倒す!!!」



それは、パンチの構えではなかった。




「ジャスティスキィィィック!!!」




「がっ……あ……足技……!?」


横凪の鋭い蹴りが、抜き手を空ぶったガイラスの顔面を蹴り飛ばす。


「ジャスティスニードル!!」


ひるむガイラスの横に着地したパウロは、すかさず装甲の薄いわき腹に膝蹴りを食らわせる。


「ぐっ……」


その隙を逃さず、巌流が素早く距離を詰め、赤熱する刀を突き出した。


「破天一刀流 炎舞!! 紅蓮突破(ぐれんとつは)!!」


しかし、ガイラスは遅れながらも反応。住んでのところで鎌をクロスさせ、巌流の突きを防いだ。


だが、猛スピードで繰り出された技の威力までは殺すこと叶わず、ガイラスの身は大きく後ろに押しのけられた。


「いい蹴りだったぞ、パウロ!」


「巌流さんこそ!いい突きでした!」


「だが、まだ倒すには至らん!行くぞ!!」


「はい!」



二人が再び走り出す中、ガイラスは口の中を泳ぐ血を「ペッ」と吐き出すと、二人を眼前に据え、思考を巡らせる。



(致命傷ニナるレーザーを防がせて目の前を遮り、その隙に(パウロ)を視界外に移動させ、横から初出の攻撃……猪口才な真似を……)



ズギン



突然、ガイラスの頭に鋭い痛みが走る。



(ぐっ……何か妙だ……普段の俺ナラ、アンな一撃すぐ対応できた……)



頭を押さえ、ガイラスは立ち上がる。



(頭ガボーットする……考えがまとまらねぇ……が、内から絶エズ湧き上ガッてきやがるぜ……)



バキバキッ



と、またガイラスの体が大きくなり始めた。



「暴れマワレッてなぁ!!!」



先程よりもさらに素早く、ガイラスは二人に突進する。


「待ってました!!」


二人は突然足を止めると、にやりと笑って構える。



「破天一刀流 炎舞! 大日ノ出!!」


「ジャスティスキハイック!!」


刀剣と蹴りが、ガイラスの顎を的確に蹴り、切り上げる。


「それガドォシタァああああ!!!」


だが、ガイラスはひるまない。勢いを利用して回転し、尻尾を使って二人を薙ぎ払った。


「パウロ!巌流!!」


アナは二人に駆け寄ろうと、足に力を籠める。



ギュッ



突然、彼女の首を後ろから何かが絞める。


「あ……!?」


苦しみながらアナが後ろを見ると、先ほどガイラスが自切した尻尾だった。


「な……んで……」


「教エテヤルよ」


苦しむアナにガイラスが突進し、彼女の顔面を地に押し付けながら自慢げに話し始める。


「関節の付け根ニアル脳が、俺の指示で動イタノさ。神経節ってやつだ」


「ちぎれてから……ずいぶん経ってるのに……」


「そうなんだよなぁ。なんデダろうなぁ?あの薬撃ち込ンデカら、体がイツモヨリ動くんだよナァ!!」



バキバキと音を立て、再びガイラスの体が大きくなり始める。それに比例して上がる腕の力が、アナの頭をさらに地面へ押し付ける。



「あぁ!!」



痛みでうめくアナの声を聴き、ガイラスは恍惚の表情を浮かべる。



「そうそウソレダヨソれぇ!!もっと俺に!!キカセテクレよぉおおおお!!!!」



不気味な笑い声をあげながら、ガイラスはさらに力を籠める。



だんだんとアナの頭から、「ミシミシ」と嫌な音が聞こえ始めた。




プルルルル プルルルル




と、突然エリザベスから無線が入る。




『ごめんなさい!間に合わなかった!!』




グオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!




無線の声にガイラスが反応した直後、耳をつんざくような咆哮と共に、何かがガイラスにとびかかった。


「あぁ!!?」



それは、大型の獣……ではない。暴走したテリーだった。



「グオアアアアア!!!」


テリーは雄たけびを上げながら、無我夢中でガイラスの装甲に爪を立て、浅いながらも傷をつける。


「なんだテメェ!!」


ガイラスも負けじと蹴り、殴り、鎌で切りつける。


しかし、ゲノムワンによって硬質化したテリーの皮膚の前に、一切の意味をなさなかった。


「グオオオオオオオオ!!!!」


「があアアアアアアあ!!!!」


最早、今の二人の間に思考や知性は存在していない。本能のまま怒りに身を委ね、互いを攻撃しあう。まさに獣同士の戦いであった。




眼前の光景をアナが呆然と見ていると、エリザベスが皆に話し始めた。


『毒のせいでゲノムワンが過剰反応してる!解毒薬を撃たないと、ずっと暴れ続けるわ!5……いえ3秒でいい!彼の動きを止めて!」


しかし、その言葉に巌流は懐疑的な反応を見せる。


「……いや、しばらくこのままにしておこう」


『えっ!?』


「ただでさえ体力もパワーも頭一つ抜けてるテリーが暴走しているんだ、力づくで止めるのは難しい。それに、ガイラスも大してダメージが入っていない。決定打を討つためにも、ある程度体力を削らなければ」


「それでも危険なんじゃない?テリーだって、このままじゃすまないかもよ?」


「颯。俺は何も傍観しろとは言っていない。主力をテリーに置き換えるだけのことだ。アナ、ラプターのレーザーを使ってガイラスを攻撃し続けろ。俺が合図したら、あのパンチを見舞ってやれ。出来るな」


「任せて」


「よし。パウロ。あんたも、俺の合図でありったけを籠めてガイラスにぶつけろ。蹴りでも拳でも何でもいい」


「……はい、わかりました」


「エリー、援護射撃を頼む。ガイラスの関節部分を狙ってくれ」


『わかったわ』


三人に指示を出した巌流は、最後に颯に言葉をかける。


「颯、隙を見て二人を縛り上げ、距離を作れ」


「いいけど……多分僕の糸じゃ厳しいかも。さっきからガイラスに簡単にちぎられるし……」


そう言って少しうつむく颯の顔を、巌流はガッと掴み、無理やり上げる。


「いいか颯。お前の応用力と糸の練度なら、必ずやれる。俺はそう信じてる」


「えっ……」


驚く颯のほほから手を放し、巌流は刀を携え向き直る。


「俺が前線に立つ!攻撃はすべて防ぐ!だから全員、思いきりやれ!行くぞ!!」


「「応!!」」




掛け声が響いた瞬間、巌流が物怖じすることなく、二人に突っ込んでいく。


そんなことはお構いなしに、ガイラスとテリーはいまだ互いを引っ掻き、蹴り、殴りつけていた。


「このクソ犬がアアアアあ!!とっとトクタバレヤああああ!!!」


「グオオオオオアア!!!!」


腕を振り上げた二人の間に、小さな隙間ができる。


その隙間を押し広げるように、巌流が即座に割り込み、刀を構える。先程とは違い、その刀は燃えていなかった。


「破天一刀流!! 昇天!!」


巌流の刀がガイラスの腕を切り上げ、あらぬ方向へと飛ばす。


本来ぶつかり相殺されるはずだったテリーの拳は、まっすぐガイラスの顔面に伸び、鋭い拳が炸裂する。


「ぐがっ……」


拳をもろに食らい、ガイラスのバランスが一瞬、不安定になる。


それを待っていたかのように、ガイラスの背後に浮かぶラプターが五機、照準を合わせ待ち構えていた。


【ラプター ユーズフィフス!! ブラストホーン!!】


重なり合い、大きな角のような形となった五本のレーザーが、ガイラスの背中を焼き付ける。


「がアアアアアアアアあ!!!!」


あまりの痛みに、後ろに倒れていたガイラスの上半身が、前に飛びのく。


そんなガイラスの前身を、巌流の刀がとらえる。


「破天一刀流!! 倒伐(とうばつ)!!」



ザンッ!!



倒れこむガイラスの胸を、巌流の渾身の一撃がX字に斬る。


いくらガイラスの堅牢な装甲といえど、連続で斬られたXの中心はただでは済まない。中心部を起点に、ガイラスの装甲に小さなひびが入った。


その日々を確認した巌流は、大声で颯に呼び掛ける。


「颯!!今だ!!二人を縛り上げろ!!」


「う、うん!!」


颯に指示を出したその一瞬。それは、ガイラスの反撃を許すには、十分すぎる時間だった。


「何しヤガルコノ野郎おおおおお!!!」


激怒したガイラスの尻尾が、鎌が、鋭い牙が。巌流の頭に向かう。



しかし、その光景を見てもなお、彼の心は穏やかだった。




あの時(ゼノンと)の戦いから、ずっと悩んでいた……自身の太刀筋が、真に硬い装甲の相手に通用しないこと……幾度鍛錬を重ねてもなお、越えられぬあの硬さを……)



巌流は、大きく息を吸う。



(今はまだ、鍛錬が足りない……あの高みにたどり着けない……ならば、どう突破するか……)



そして、刀を握り締める。



(刀を使いこなすんだ……!刃だけじゃない!柄を!鍔を!!鞘を!!刀のすべてを使う!!アナがラプターを防御に、攻撃に、移動に使うように!!)



この時、巌流の頭に浮かんだ人物は、アナだけではなかった。



(……そして……颯の糸ように……!!)



「破天一刀流!!応技(おうぎ)!!極砕突き(ごくさいづき)!!!」



ゴギャアッ!!



「がっ……あぁっ!!!」


巌流の刀の頭によるすさまじい突きが、ガイラスの胸の小さなヒビを、大きな傷へ変えた。




同刻、颯の胸にも、ある思いが渦巻いていた。


(僕の糸じゃ、今のテリーもガイラスも縛っていられない……こんなの初めてだ……僕の糸が負けるなんて……)



渋い顔で、颯は指から糸を出す。



(でも……一本でダメなら……二本は?三本なら?いや、それらを束ねたら?)



颯の手の中で、糸は互いに結われ、一本の糸に変わっていく。



(応用だけじゃない。原点に立ち返るんだ。実直に……まっすぐ素直に……!アナちゃんの思いのように!)



やがて糸の束は、一本の糸に収束していく。


しかしその艶めきは、今までのどんな糸よりも、輝いていた。



(……巌流の刀のように!!)




「如月流糸術!!極!! 束糸縛山(そくしばくざん)!!!」



颯の糸は、テリーとガイラスの体をがんじがらめに縛る。


「グオオオオオオオオ!!!」


テリーは本能のままに暴れ狂う。が、糸は一切千切れることはない。

それはつまり、力が同格であるガイラスでも、容易に引きちぎることができないことを意味していた。



「今だ!!!」


ガイラスから飛びのいた巌流の掛け声を聞き、パウロとアナは駆け出す。



しかし、ガイラスもただ黙っているわけはない。


「コッココッこノオオオオお!!!!ごみどもがあああ!!!!!」


胸の激痛をこらえ、ガイラスは尻尾を巧みに動かし拘束から抜け出すと、向かってくるアナとパウロへ、標準を構える。


(来タトコヲ溶かしテヤル!!!!)


もやがかかり、思考すら難しくなりつつある中、ガイラスは気力を振り絞り、先端に特殊な液を溜める。それは、アナ達と初めて邂逅した際、闘争に用いた、ミイデラゴミムシの噴射液だった。


(サァコオオおおい!!!!)


ガイラスの発射体制が整った、まさにその瞬間。



バスッ



突然、ガイラスの尻尾がちぎれ、宙を舞う。その直後、「ダァン」と、銃声が辺りに響いた。


「ナっ!?」


ガイラスが背後のビルを見る。



その目に入ったのは、屋上でスナイパーライフルを構える、エリザベスの姿だった。


「なにもされてないからって、油断しすぎたんじゃないかしら?」


「ッ……!!このアマァ!!!!」


エリザベスの発言を知ってか知らずか、ガイラスは鬼の形相で悪態をつく。



しかし、すぐに注意は背後に向く。



ただならぬ気配が二つ、自身に迫っていたからだ。



本能から、ガイラスは即座に振り返る。



その眼前に映ったのは、青く輝く二つの拳だった。



(ずっと焦ってた……力が使えなくって……そのせいで、私の思いが……ゼノンの願いがかなえられないって……)



アナは、腕にエネルギーを溜める。



(でも、ジャスティスマンを見て感じた。パウロと会ってわかった!ただ強ければいいわけじゃない!!悪を倒すだけじゃいけない!!自分の信念を……”正義”を信じて、みんなに手を伸ばすことが!!願いを……思いを叶えるために大事なことなんだって!!)



腕のエネルギーは、大きくなっていく。



(もう迷わない。もう間違えない!私は私の!!(ゼノン)の願いをかなえるために!もう誰も悲しまない、明るい世界にするために!!困っている人を助ける!!そのために!!!)



「ガイラス!!あなたを止める!!」




(ずっと間違ってた。僕がジャスティスマンになった理由)



パウロの拳に、力がこもる。



(ただ彼の死を隠したかったからじゃない。僕があこがれたからじゃない!)



拳を、固く握る。



(彼がいることで守られていた笑顔を!!平和を奪いたくなかったからだ!!!この素晴らしい国を!!守りたかったからだ!!!)



硬く握る拳を、振りかぶる。



(多くの人が落胆しただろう!多くの人を悲しみ、僕を恨んだだろう!!)



拳は、うなりを上げる。




(それでも僕は!!!何があろうと!!この歩みを止めない!!この思いをごまかさない!!)



拳に血がにじむ。それでも、彼は止まらない。



(僕に頑張れと言ってくれた人のために!一人じゃないと言ってくれたアナのために!!)



「ガイラス!!お前を倒す!!」



「コノゴミカスドモガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!!!!!!!!」






アナとパウロの思いを乗せた拳は、止まることなく伸びていく。






やがて拳は隣り合い、横一列に重なりあう。






そんな二人の思いにこたえるように、青き光は、二人の拳を包み込んだ。






「ジャスティス!!!!」


【セレスト!!!!】




【「パアアアアアアアアンチ!!!!!!!!!!!!!!」】




二人の思いと正義を乗せ、重なる拳が、ガイラスの胸を穿った


to be continued

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ