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ガンズオブスプリンターズ  作者: サラマンドラ松本
第三章 平和の守護者
48/55

正義とは

ーー子供の頃から、ヒーローが好きだった。



友達や周りのみんなは、ガーデハイトで昔流行っていたコミックに出てくるヒーローたちに憧れていた。


ビームを出し、空を飛び、機械で体を包み、怪力で悪を倒す。そんなヒーローに。



でも、僕が憧れていたのは、まだ常世が"日本"と呼ばれていた頃にいたヒーローたちだった。



光の国から来た戦士。



悪に立ち向かう孤高のライダー。



地球を守る5人の英雄。



そして、どんな人にも手を伸ばし、誰かを守るためなら自らを犠牲にすることすら厭わない、頭がパンでできたヒーロー。ただ悪を倒すだけじゃない。もっと別の何かを持った彼らに憧れていた。


だから、お年寄りに席を譲ったり、ごみを拾ったり。そんな誰でもできる小さなことをやって、自分も正義のヒーローになろうと頑張ってた。そのたびに笑われた。


「お前はヒーローになれない」って。


わかってる。僕は超人じゃない。まして得意なこともない。運動も勉強も苦手な、臆病で怖がりな僕は、きっとなれないって。



そんなこと、僕が一番わかっていた。でも、あきらめきれなかった。






「ジャスティスパーンチ!!」


僕が生まれるずっと前。

二度の戦争が終わって数年、犯罪がベルトリアで多発していた頃。


ある男が現れた。


彼はどんな状況でも人々を助け、悪を説得し、時には力を使って倒していた。飢餓に喘ぐ人々に炊き出しを行い、温かい寝床を提供したこともある。


彼は顔を隠し、一度も名乗らず、どんな報酬も受け取ったことはなかった。でも、技に必ず「正義ジャスティス」とつくことから、人々はいつしか、彼を『ジャスティスマン』と呼んでいた。


彼はあの混迷の時代で、まだ見ぬ悪を挫き、人々を守り助け、希望を与える。まさに正義の象徴。平和の守護者だ。



そんな彼が、僕はどんなヒーローよりも好きだった。



カッコよかったから?強かったから?みんなに好かれていたから?……それもあるかもしれない。


でも、一番の理由は、彼がいつも笑っていたからだと思う。


どんなヒーローも、時には泣いて、時には苦い顔をした。怒り、落ち込み、呆然自失としていたこともある。でも、僕が生まれる前から、何十年もこの国を悪から守り続けてきた彼の顔に、笑顔以外の表情があったことは一度もない。



そんな”強さ”が、僕は好きだったんだ。



彼を好きになってからは、何があっても笑った。つらい時も、苦しい時も。いじめられていた友達を助けてから、ただの無能力の人間だとに馬鹿にされ、出来損ないだといじめられても、僕は笑っていた。



でも、いじめられてからは、困った人を助けに行くことが怖くなって、できなかった。




そんな卑怯な僕が、一番嫌いだった。









寒い冬の日だった。



新聞配達のアルバイト中、たまたま通りかかった路地裏で金属音が聞こえた。恐怖よりも好奇心が勝った僕は、その路地に入っていった。


少し歩いて、街灯一つが照らす広い空間が見え始めたとき。

灯りの下で、ジャスティスマンが誰かと戦っているのが見えた。相手は暗がりにいてで姿は見えなかったけど、彼よりも大きかった。腕から何か鋭いものが生えていたのを、今でも覚えてる。



彼は苦戦してた。



身体中に傷ができて、血をダラダラと流しながら、息も絶え絶え。


いつも上がっていた口角は、そのときばっかりは下を向いていた。



その反面、相手の男は笑ってた。



血が滴るゴツゴツした手をフリフリと揺らして、奴は笑ってた。


それがどうにも許せない。その気持ちは、きっとジャスティスマンと同じだったと思う。



彼が苦戦している理由は、すぐにわかった。



彼のすぐ後ろ、地面に座り込んでいる女性。彼はこの人をかばって戦っていた。



その時、僕の頭に、ある考えが浮かんだ。



彼女を助けようと。



ジャスティスマンを動きやすくするためにと。



身の丈に合わない考えが浮かんだと、僕の冷静な部分が思った。



でも、体は動いていた。



彼女の腕を掴んで駆け出すだけ。簡単だ。学生時代から鍛えてきた。こんな距離平気さ。直ぐ逃げられる。大丈夫。大丈夫。

そんな楽観的な考えが、僕の心と体を支配していた。



だからこそ、気づかなかった。僕が出てくることが、一番まずいことだって。






ふいに、僕を影が覆う。






それと同時に、何かが刺さる音がした。僕が女性の腕をつかんだ直後だった。




顔に何かが飛んできた。もう片方の手で拭うと、血だった。




何があったか、左を向けばわかる。でも、僕は見たくなかった。その目に映るのが、想像している最悪な場面なんじゃないかと思って。それでも、僕の興味は正直だった。




首がゆっくり左に曲がる。





その時目に入ったのは、胸を鎌のような刃で貫かれたジャスティスマンだった。






「ジャスティスマン!!ジャスティスマン!!!」


男も女性も逃げ去った路地で、僕は彼を抱えて叫んでいた。


彼は僕をかばって刺された。本当なら受けなくてよかった傷だ。


血が止まらない。どれだけ手で押さえても、どれだけ力を入れても、それを朝笑うかのように、赤い鮮血がどくどくあふれてくる。


僕が泣きながら傷口を抑えていると、彼が話始めた。


「君……大……丈夫……かい……?」


「僕は大丈夫だよ!!でもあなたが!!」


「はっは……少し……油断してしまったな……ゴフッゴハッ……」


苦しそうに咳をした彼の口から、血飛沫が飛ぶ。

苦しいはずなのに。痛いはずなのに。僕が出なければ、こんな傷負わなかったのに……


「ごめんなさい、ジャスティスマン……僕の……僕のせいで……」


こんな時でも、僕は泣いて謝ることしか出来ない。


何の力もなく、無力で馬鹿な僕には。


周りの皆の言うとおりだった。


僕をいじめてたやつらの言うとおりだった。


僕はヒーローになれない。それどころか、人を不幸にするだけのクズ野郎だって。


そんな私情も入った涙が、ぼたぼたと彼に垂れていく。



と、突然ジャスティスマンが僕の目に手を伸ばして、涙をぬぐってくれた。



「泣くな……君……この傷は……君のせいじゃない……ひとえに私が油断していた……それだけのことさ……」


「でも……こんな役立たずの僕が出ていったから……」



涙が止まらない。



「僕が馬鹿だった!!弱いくせに、ヒーローにあこがれたから!!だから身の程知らずのバカなことして、あなたを傷つけた!!ヒーローになろうなんて、身の丈に合わない夢を持ったから!!!」



感情が。思いが。口をついて出続けた。止めたいのに、止められなかった。


同情されたいわけじゃない。悲劇の主人公ぶりたいわけじゃない。


こんな時でも、自分の心を止められない。目の前で、僕のせいで人が傷ついているのに、止まらない。



心根までもが弱いだけ。芯の底の底から、僕はクズだったんだ。






「ふふっ」


ふいに、彼が笑った。


「懐かしいな……昔の自分を思い出すよ……」


「……え……?」


「私もね……昔は……泣いてばかりだった。そのせいで……よくいじめられたし……そんな弱い自分を責めたものだ……」



彼の言葉に、僕は唖然としていた。


ジャスティスマンがいじめられてた……?泣き虫だった……?


信じられなかった。僕を励ますために言っているんだと思った。



彼の言葉は続く。


「でも……今やジャスティスマンだなんて……呼ばれて……まるでヒーローさ……あの日あこがれた……」


血を吐きながら、彼は話し続ける。


「そんな私が……なぜ……どうしてジャスティスマンになれたと……思う……?」


「えっ」



言葉に詰まった。



だって、彼は彼だ。無敵のヒーロー、ジャスティスマンだ。生まれたときからそうだ。


そんな僕を見て、彼は答えてくれた。



「正義の心が……あったからさ。今の君のように……ね……」



「ジャスティスマン違う!!僕は無謀なだけだ!!あなたのような正義とはまるで違う!!」


「無謀で結構……!正義とは……”■■■■■■■”こと……なんだから……」


「え……?」



僕が尋ねた直後だった。



「ガハッ!!ガフッゴフッゴフッ」



血を吐きながら、彼がせき込み始める。



「ジャスティスマン!!」



叫ぶ僕の手を、彼は固く握る。



そして、真剣な顔で僕に語り掛けた。


「君……名も知らぬ君……私は……じき死ぬだろう……天国へ行くはずだ……だが……そのことは……誰にも言わないでほしい……」


「ど……どうして……?」


「笑えなくなってしまうからだ……」


僕の手を握る力が強まる。


「私がいなくなれば……悪がまた動き始める……そうなれば……人々はまた笑えなくなってしまう……だから……だからどうか……」


「わかった!!約束するよ!!だから、だから!!」


僕が叫ぶと、彼の顔に再び笑顔が戻った。


「なら……よかった……」



彼は空を見上げる。雪が降りしきる空を。



「君のような……正義の……心が……あるものが……いれば……この国は……やっていける……私が……いなくなっても……」


「ジャスティスマン……」


「忘れないでくれ……君の”正義”を……なにが……正しいの……か………を…………」



僕の手を握っていた力が、次第に弱くなり始める。



だんだんと彼の手が冷たくなっていく。



目がうつろになっていく。




それでも、笑顔だけは消えなかった。











あの日からだ。あの日から僕は、彼の衣装を身にまとった。そして、彼の”真似事”を始めた。

ずっと鍛えていたおかげで体系が似ていたし、動きも変わらない。ばれることはなかった。



それでも、心の中では何かがつっかえていた。



彼の死を隠すため。彼を死なせてしまったことへの贖罪のため。そんな気持ちを抱えてヒーロー活動をやり始めた僕の胸には、嬉しさや感動よりも、人々をだます罪悪感と、自己嫌悪であふれていた。




そこから、正義が何なのかわからなくなっていた。




そうして悩み続けているうちに、あの日ジャスティスマンが言ってくれたことが何なのか、思い出せなくなっていた。






「あなたは私のヒーローよ」






うつむく僕に、小さな女の子が言ってくれた。


不思議な力を持った、アナという女の子が。



彼女の言葉を聞いた時、思い出した。



あの日、ジャスティスマンがなんて言ってくれたのか。






「無謀で結構……!正義とは……『手を差し伸べる』こと……なんだから……」






手を差し伸べること。アナが言っていた正義は、彼と同じ答えだった。



そして、もう一つ思い出した。



その言葉の後、彼が……ジャスティスマンが僕の目を見ていってくれた言葉が。




「だからこそ……手を差し伸べた君は……”ヒーロー”だ」




その言葉を思い出した瞬間、僕の胸にあった様々なとげが、消えてなくなるような感覚がした。


「お前は無能力だから」


「運動音痴のバカだから」


「泣き虫だから」



「「「ヒーローにはなれない」」」



今までの人生で投げかけられた、夢を否定されてきた言葉。


それを、僕があこがれている人が、最も好きなヒーローが、吹き飛ばしてくれた。



そんな素敵なことを、今まで忘れていた。



正義を見失っていた。



でも、彼女が。アナが思い出させてくれた。



だったら……正義が何かを思い出したのなら……!!



何を立ち止まっている!!パウロ・ボーズマン!!!何をうずくまっている!!!!


きっとやれることがある!!!必ず!!!



今の僕にできることは!!



……意気込んだはいいけれど、考えは何もまとまっていない。



けど、僕はすでに駆け出していたーー
















同刻 ブルケート中央広場


「ギハハハハハハハハ!!!」


声高らかに笑い声をあげながら、ガイラスは巌流とテリーに切りかかる。


「どうしたどうしたぁ!!敵を討つんじゃなかったのかぁ!!」


ガイラスの猛攻が二人を襲う。


ゼノンを超える速度と、暴虐性からくるパワー。


SIUきっての戦闘力を誇る二人ですら、防御に徹するのが精いっぱいだった。


そんなガイラスの体を、数本の糸が縛る。


「今だ二人とも!!」


「応!!」


「うん!!」


一瞬の隙を逃さず、巌流の刀が、テリーの爪が、寸分たがわずガイラスの首へと向かう。



しかし



「甘いわぁ!!!」


ガイラスは体に巻き付く糸を力任せに引きちぎり、二人を吹き飛ばす。


そして、颯とつながっている一本を掴むと、思い切り引っ張った。


「うわわ!!」


唐突に引き寄せられた颯は、体勢を崩し、そのままガイラスの元へ引き込まれていく。


「まずは一ぉ人!!」



空中でなすがままの颯に、ガイラスの鋭い鎌が向かう。


彼の顔に鎌が突き立てられんとした、まさにその時



ビュン!!



数本の青いレーザーが、ガイラスの体を焼く。


「がっ!?」


ガイラスがよろけた直後、間髪入れずにラプターが颯を捕まえ、ガイラスと距離をとった。



「颯!!大丈夫!?」


「アナちゃん!ありがとう。助けられちゃったね」


「ガーデハイトで助けてもらったもの」


「ふふっ。確かに」


軽く談笑しつつ、二人はガイラスを眼前に据え、戦闘態勢をとる。


と、ガイラスはよろめきながら、二人をにらみつける。


その眼光は、赤黒く輝いていた。


「てめぇ、小娘……良いところで何度も何度も茶々入れやがって……!!」


「ガイラス!!おとなしく捕まりなさい!!なんでこんなことするの!!」



そんなアナの問いを聞いた直後、ガイラスは大きな舌打ちをして、叫びだした。



「ったく!!どうしてどいつもこいつも人の行動にいちいち理由をつけようとしやがる!!理由なんかあるか!!楽しいからやってるだけだ!!!」


「た、楽しい……から……?」


「てめぇにもなんかあんだろ!!誰かと遊ぶとか!!ゲームするとか!!人生になくても困らねぇが、あれば楽しい”趣味”が!!!酒にタバコ!!ギャンブルみてぇななぁ!!」



ガイラスの口角が上がり始める。



「俺のは”殺し”だ!!誰かを切って血を浴びて!!手足をもいで体を割って!!そんなときに見せる表情を見るのが、たまらなく楽しいんだよ!!!そして何より、そんな奴らはべらぼうにうめぇ!!食事は人生にぁかかせねぇ!!趣味とは違げぇんだよ!!どうせ食うならうまいもん食いてぇ!!それが生物の考えだろうが!!!」



そう言って声高に笑うガイラス。



かたやアナは、彼の言葉を聞き愕然とする。



彼は、ゼノンのように理想があるわけでも、確固たる目的があるわけでもない。



楽しいというあいまいな理由で、人を殺し、食す。



初めて会った、私利私欲のために動く、純粋な悪。



そんな存在と初めて相対したアナの胸に、言いようのない思いが去来していた。



そんなアナの心境を知ってか知らずか、颯はそっと彼女に耳打ちする。


「いいかいアナちゃん。僕らが戦う敵は、ゼノンのような大義の元に動く奴らだけじゃない。こういう自分本位の奴もいるんだ。厄介なのは、断然こういう奴だよ……!」



しかし、その言葉はアナには届かない。



「……なんで……」


「あ?」


「なんでそんな……自分のためだけに人を殺せるの!!命はあなたが弄んでいいものじゃない!!」



そんなアナの言葉を、ガイラスはあざけりながら言い放った。



「何言ってんだ?この世の、俺以外はすべておもちゃさ」



その言葉が、アナの怒りに火をつけた。



「お前ぇ!!!!」


複数のラプターを展開し、アナはガイラスへ突っ込んでいく。



「馬鹿が」



吐き捨てるように言った直後、ガイラスは体から複腕を四つ生やし、苦戦することなくラプターをはたき落していく。


「そんなコバエ、邪魔にもならねぇよ!!」


「このぉ!!!」


アナが激昂しながら拳を握る。



と、その拳を包むように、青い膜が現れた。



「!!なんだ!?」



驚愕するガイラスを意に介すこともなく、アナはその拳をまっすぐ突きだした。



「これ以上!!誰も傷つけるなぁ!!!!」



アナの拳がガイラスに直撃した直後。青い衝撃波が周囲を包み込み、すさまじい爆風を引き起こす。


と同時に、二人の体は宙に浮くほど吹き飛んだ。


「アナちゃん!!」


即座に颯は糸を射出し、アナの体に巻き付け引き寄せる。


颯たちの元に引き寄せられたアナは、驚きのあまり目をぱちくりとさせながら、自身の拳を見る。その手は、まだ青色の膜につつまれていた。


「こ、これって……」


「その光……ゼノンとの戦いで発現した光か……?」


「すごい!特訓の成果だ!」


驚く巌流と喜ぶテリーをよそに、アナは自身の手のひらに集中していた。


(なんで出たのかわからないけど……この感覚を忘れちゃダメ……出し続けられるように……自由に操れるように……!)



アナが意識を集中していると、遠く前方からがれきの崩れる音が聞こえてくる。



四人がその方向を見ると、がれきをどかしてガイラスが起き上がってきた。体の何か所かから、ぼたぼたと液体を垂らしている。複腕があった場所だ。


(咄嗟に複腕使って防いだが、全部持っていかれるとは……)


考えながら、ガイラスは傷口に目をやる。


すると、痛々しく開いていた傷がたちどころに再生し、痕も残らず元へ戻る。


(なんだかわからねぇが、あの小娘……厄介だな……先手必勝でつぶすか……!!)



考えがまとまった直後、ガイラスは四人めがけて走り出した。



狙いをアナに定めて。



「!!させるか!!」


そのことに気づいた巌流とテリーが、アナとガイラスの間に割って入る。


「破天一刀流!!」


「アッパークロー!!」


二人の技がガイラスに到達するその刹那。


「邪魔だぁ!!!」


ガイラスの目にもとまらぬ爪撃が、二人の胴にかすり傷をつけた。ガイラスは二人をひっかいた後、わき目も降らずアナの元へかけていく。


「これしきの傷!!」


「待て!!」


巌流とテリーが、ガイラスの後を追おうと振り向いた直後。



激しいめまいと痺れが、二人の体を襲う。



「!?」


「う、動……けな……!?」


困惑する二人に、ガイラスがしたり顔で言い放った。


「蜘蛛の麻痺毒だ!!人間サイズの濃度のな!!たっぷり味わってやがれ!!」


「く……くそ……」


二人は、後を追おうと力を籠める。


しかし、体が動かない。


そのまま二人は、その場に跪いてしまった。


「アナちゃん!!」


そんなガイラスを止めるため、颯が糸を数本、ガイラスに向かって射出する。


しかし


「それぁもう見飽きたぁ!!」


「うわっ!?」


ガイラスは苦にするでもなく糸を掴むと、そのまま颯と共に振り回し、後方へ投げ飛ばした。



これでもう邪魔はない。ガイラスは恍惚な笑みを浮かべ、アナにとびかかった。


「くたばれ小娘!!」



ガイラスの鎌が、爪が、アナに向かう。



アナは急いで防御しようとするが、到底間に合わない。



鋭い爪がアナの脳天を貫かんとした



その時






「ジャスティスパーンチ!!!!!」






突然ガイラスの顔面を、誰かが殴りつける。


「がっっ!?」


唐突な横からの衝撃に、ガイラスの体はあらぬ方向へ吹っ飛んでいった。


思わず目をつぶってしまっていたアナが、恐る恐る前を見る。



そこに立っていたのは、涙目のパウロだった。



「パっ、パウロ!?」



驚くアナに、パウロは笑いかける。



「アナ!!僕も戦う!!これ以上、この町の人々に手は出させない!!」



涙を浮かべ、無理に笑うパウロ。



しかしその目に、以前までの迷いはなかった。


「来いガイラス!!僕が……いや、”私”がジャスティスマンだ!!!」


to be continued

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