表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ガンズオブスプリンターズ  作者: サラマンドラ松本
第三章 平和の守護者
47/47

暴かれた秘密

「な……」


ガイラスの大声が広場に響き渡る。


「ジャ……ジャスティスマンが……死んだ……?」


「そんな……嘘だ……」


群衆から、徐々にうろたえった声が聞こえ始める。


その声を聴いたガイラスの口元はさらに弧を描く。


「嘘じゃねぇよ本当さ!!それぁこいつもよく知ってるはずだぜ!!」


そう言って、ガイラスはパウロに指をさす。


「そうだろ偽物!!あの日てめぇが俺とあいつの戦いに割って入ったせいで、あいつは死んだんだからよぉ!!!」


これ見よがしに、ガイラスは笑いながら声高に叫ぶ。


「そ……れは……」



そんな彼の言葉を、パウロは否定できなかった。



しかし、そんな彼とは裏腹に、群衆からは戸惑いの声が出始めていた。


「ジャスティスマンがいない……?」


「私達、これから何かあったら、どうすればいいの……?」


「いや、それよりもだよ……こいつは俺たちをだましてたのか……?」


「どうして何も言わない!何か理由があるなら言ってくれよ!!」


群衆からどよめきと叫び声が響く。



彼らは信じられなかった。そして、信じたくなかったのだ。


ジャスティスマンの死を。


彼の不在を。


パウロの活動は、ファンの真似事の一環であると。



そして、まだ希望は無くなっていないと。



しかし、パウロの口から出た言葉は、群衆が望むものとは真逆だった。


「……そうだ……あの日……僕が出しゃばらなければ…………」


彼の言葉を聞き、群衆の顔は絶望に変わる。


と、ガイラスの口から唾液が流れ始めた。


「いいねぇ……そろいもそろって絶望の色だ」


ガイラスが垂らした唾液のしずくが、地面に一滴垂れた直後。



ビュン



突然ガイラスが地面に超速で降り立つと、着地地点にいた人々の首を斬り飛ばした。


「き、きゃあああああああ!!!!」


鮮血の雨が降り注ぎ、叫び声が響く。


そんな混沌の中心で、全身を赤黒く濡らしたガイラスは、半月のごとき笑顔で頭をかじりながら、捕食者の眼光を周りに向ける。


「さぁて。次はだれを食おうか?」


その瞬間、群衆の恐怖が限界を超えた。


「うわあああああ!!!」


「誰か助けてくれえええ!!!」


あちこちで人々が叫び、ぶつかり、逃げまどう。


そんな光景を、ガイラスはバラエティー番組でも見るかのように笑いながら、頭をかじっていた。


「ギャハハハハ!!こいつぁいいや!たった一人の死を大ぴらに言っただけでこの混乱!!これぁしばらくはうまい飯にありつけそうだなぁ!?ギャハハハハ!!」



と、笑うガイラスの目に、パウロの姿が入る。



パウロは、恐怖のあまりその場にしりもちをついて、ガイラスを眺めていることしか出来ないでいた。


そんなパウロに、ガイラスはゆっくりと近づいていく。


「情けねぇなぁヒーロー気取り。ジャスティスマンはそんな間抜け面しなかったぜ?」


「あ、あぁあ……」


「はっ。所詮はまがい物。あいつに”アテられた”だけの、ただのパンピーか」


話しながら、ガイラスはパウロの髪を掴み、軽々と持ち上げる。あまりの痛みに、パウロの顔がゆがみ、口から悲鳴が飛び出した。


「がああああ!!」



そんな彼の叫びを無視し、ガイラスは彼に尋ねる。



「おい、お前なんであいつ(ジャスティスマン)の真似してんだ?贖罪のつもりか?」


「!!」


その言葉に、パウロは一瞬目を見開く。


「!!はっは!!図星かよ!!お前ごときがあいつの真似して罪滅ぼしってか!?笑わせるぜ!!」



笑いながら、ガイラスはパウロを投げ捨てる。



「そうだ、いいことを教えてやる。お前みてぇな奴はな、英雄にはなれねぇんだよ。馬鹿で。非力で!独りよがりで!!誰も助けることのできない!!!てめぇみてぇな奴はなぁ!!!!」



ガイラスはパウロを蹴り飛ばす。



「俺からもいってやるよ!あの日てめぇが英雄気取って首突っ込まなけりゃぁ、少なくともあいつ(ジャスティスマン)ぁ死ななかった!」



その言葉に、パウロの目は涙でにじむ。



「わかるか?てめぇは誰も守れねぇ!どころか、誰かを殺しちまうんだよ!!正義感とエゴがでかいだけの、体の吊りあわねぇ無能なせいでなぁ!!」



叫びながら、ガイラスはパウロの首を掴む。



「がっ!!」



息ができない苦しみで、パウロの顔がゆがむ。



そんな彼を見て、ガイラスは満面の笑みで鎌を構えた。



「あばよ、ヒーロー気取り。何にもなれない無能で哀れな自分を呪って死んで行け」



ガリィイン!!



と、ガイラスの鎌に何かが飛びつく。


それは、テリーだった。


「……ったく、いいとこだったってのに……侍の次は犬っころか」


「この人でなしめ……!これだけ人を殺しておいて、なぜ笑っていられる!!」


ガイラスの鎌を爪で押しながら、テリーは涙目で問う。


「……てめぇはコメディ見て笑いこらえんのか?」


「!!お前ぇ!!」


普段温厚なテリーが、毛を逆立て激昂しながらガイラスに襲い掛かる。


しかし、ガイラスはパウロを投げ飛ばすと、余裕の表情で攻撃をよけていく。テリーの爪は、ガイラスの体をかすめて空を切るのみであった。


「おせぇおせぇ。どいつもこいつものろすぎだ。あくびが出ちまうぜ!!」


ガイラスの蹴りがテリーの腹にクリーンヒットし、彼の体をはるか後方に吹き飛ばす。


「がっ……っは……!」


「はっ。所詮は犬か」


ガイラスはおいてあった人の頭を食べきると、あたりをきょろきょろと見まわす。


「さて……肝心のターゲットはどこに行ったか……」




ヒュン



一本の糸が、うなりをあげてガイラスの体に巻き付いてきた。


「あ?」


ガイラスが困惑したその一瞬。凄まじい速度で颯が飛んできた。


「そぉら!!」


糸を使って弓矢のように射出された颯の、超速の蹴りがガイラスの胴に命中する。


「ぐ……」


吹き飛ばされたガイラスは、即座に自身の強靭な足でブレーキをかける。接触すると同時に、コンクリートの地面はえぐれ、がれきが周囲を舞う。


「……今朝ぶりだな、糸野郎」


「随分な暴れっぷりじゃない。思春期か何か?」


「ガキみてぇな見た目のてめぇに言われたかねぇな!」


そう言って、ガイラスは自身の体を縛る糸を、いともたやすく引きちぎる。


「せりゃあ!!」


その一瞬の隙をついて、巌流が再びガイラスに一太刀を浴びせた。


「っち……」


巌流が続けざまに放った二撃三撃を素早い身のこなしでかわし、ガイラスは距離を開ける。


と、目覚めたテリーと颯がすかさずガイラスを囲み、三角形の布陣が完成した。


最大限の警戒と怒りを胸に、三人はじりじりとガイラスに距離を詰めていく。


そんなトライアングルの中心で、ガイラスはまたも不敵に笑っていた。


「けっ。どこまでもしつこい野郎どもだぜ」


「当り前だ。貴様のような極悪人、逃がしてなどなるものか」


「これ以上、犠牲者は出したくないしね」


「なにより……ジャスティスマンの仇……!!」


三人の殺気が強まる。


しかし、ガイラスは笑っていた。


「おぉ……!いいねいいねぇ!その殺意!!たまんねぇぜ!!よぉしテンション上がってきた!!久々に殺し合いと行くかぁ!!!」


ガイラスの叫びと同時に、三人はガイラスへと飛び込んでいくのだった。






「大僧正!こちらです!急いで!」


巌流、颯、テリーがガイラスと戦っている同時刻。


ビルとサムは、SPたちと共に、ダー・ラッタの護衛に当たっていた。


二人がダー・ラッタの身を低くさせ、車へと運んでいる最中。突然ダー・ラッタの足が止まる。


「!?おい何してる!」


「いかがされましたか、大僧正?」


「……酷い」


そう言って、ダー・ラッタは立ち上がる。


「!!危ないです!!かがんで!!」


「私のせいで……こんなにも人々が……」


「あなたのせいじゃありません!さあ早く!」


と、ダー・ラッタがガイラスに向かって歩き出した。


そんな彼を、サムは手を掴んで引き留める。


「何のつもりです大僧正!!」


「私が死ねば……これ以上被害は出ないはず。行かせてください、サム。私が死ぬことで多くが助かるのなら、本望です」


震える声で話すダー・ラッタに、サムは両手で彼の肩をつかみ話す。


「大僧正。あなたのお気持ちもお考えもわかります。しかし、ここであなたが死んでしまっては、奴はまた逃げてしまう!!我々のエージェントが、奴を止めるべく尽力しています。あなたは、自身の身の安全を優先してください!」


「しかし……」


と、ダー・ラッタの服の襟を、ビルが思い切りつかんだ。


「おいメカ坊主。ふざけたこと抜かしてんなよ。あんたが死んだところで状況はよくならねぇ。あいつの”キルリザルト”にあんたの名前が載るだけだ。意味わかるか?無駄死にだ!!奴はあんたを殺しても殺しをやめるわけじゃねぇ!!それどころか、あんたが死ねば、何万人もの人が悲しむ!!後を追う奴もいるかもしれねぇ!!その意味わかるか!!」


叫びながら、ビルはダー・ラッタを自身に引き寄せる。


「いいか?今あんたが死んでも、事態は何も変わらない。悪化するだけだ。それに、俺たちゃ、あんたを守るために来たんだ。それだけ、あんたはすげぇんだ。あんたの死は損失なんだよ。それがわかったら、ごたごた言ってねぇで、さっさと車に乗りやがれ!!」


そう言って、ビルはダー・ラッタから手を離す。


一瞬唖然としていたダー・ラッタだが、すぐに何かを考え直したように、サムとビルの間に戻っていった。


「……そうですね……死んだところで、状況は好転しない……失礼しました。気が動転して……」


「……わかりゃいいんだ」


「いいんです。お気持ちはわかりますから。さ、急ぎましょう」


落ち着いて話すと、サムは再びダー・ラッタの姿勢を低くさせる。



と、ダー・ラッタがあることに気づいた。



「そういえば……あの子……アナはどこに?」


「え?!」


ダー・ラッタの言葉を聞いた二人は、急いで辺りを見回す。



先ほどまで一緒だったアナがいない。



「アナ!!おいどこだアナ!!」


「こんな時に……!!ビル!!大僧正を安全な場所へ!!僕はアナを探す!!」


「わかった!!さ、行くぞ!!」


命令を聞いたビルは、急いで大僧正と共に避難する。


そんな中、サムはエリザベスとオリバーに無線をかけていた。


「二人とも!アナを見てないかい!?」


「アナちゃん?!どこかに行っちゃったの!?」


「コノ人混ミノ中ニ紛レテイルノナラ、スグニハ見ツカリマセンヨ!」


「くそっ!!いったいどこに……」


と、サムの眼が一点を見つめる。


アナを見つけたのだ。



彼女の前にはうずくまるパウロがいた。








「パウロ!ねぇパウロ!」


アナの呼びかけに、パウロはほんの少し反応する。


「……アナ……」


「!よかった、生きてた!怪我してない?大丈夫?」


パウロが生きていたことに、アナは安どのため息を漏らす。



だが、パウロは顔を地面に向け、うつむいたままだった。



「……?どうしたの?」


「……アナ……僕……僕は何で生きているんだろう……」


「……え……?」


アナがパウロの顔を覗き込む。


その顔は、涙でにじんでいた。


「だってそうじゃないか!……英雄(ジャスティスマン)を殺して、それがばれたくないから彼の真似をして……なのに……それなのに……誰も助けず、守れない……あいつの言うとおりだ。ただの真似事……自己満足のクズ野郎さ……」


「そんなこと言ってる場合じゃないでしょ!ほら立って!安全なところまで逃げよ!」


アナがパウロの腕を掴んだ途端、彼はその手を振り払った。


「放してくれ」


「なんで!」


「僕はここで死ぬべきなんだ!そうじゃなきゃ、さっき殺された人々に……今まで奴に殺されていった人々に合わせる顔がない!!」



パウロは地面を殴りつける。



血がにじむ拳で、何度も何度も。



「……あの日…………僕が死ねばよかったんだ……」




パウロのか細い声は、悲鳴と戦闘音にかき消されていく。




群衆は逃げまどい、ガイラスは戦闘に明け暮れている。SIUの面々も、各々の役目に心血を注いでいる。




彼の言葉を聞く者はいない。






ただ一人を除いて。






パチンッ




突然、パウロのほほをアナが叩く。


「そんなこと言わないで……!」


「え……」


「この世に死んだほうがいい人間なんていない!!二度とそんなこと言わないで!!」



この日、初めてパウロはアナの目を見た。



彼女の目は、パウロと同じく涙がにじんでいる。



しかし、その奥底に何かが燃えていた。



パウロがアナの目にくぎ付けになっていると、彼女はくるりと背を向ける。


「……私、みんなの援護に行ってくる。ここは危ないから、パウロは逃げて」


「な、なんで!君も危険じゃないか!!行っちゃだめだ!!」


「行かなきゃいけないの。私も、守りたいものがあるから」


そう言って、アナは歩き出していく。


「アナ!!」


パウロはアナの腕を掴もうと、精一杯手を伸ばす。


しかし、彼女の腕は彼の手をするりと抜け、前へと進んでいった。



と、アナが立ち止まり、くるりと振り向く。



「パウロ。あなたは卑怯者じゃないし、無力じゃない。受け売りだけど、正義は手を差し伸べることだって。それなら、あなたは誰よりも正義を知ってるし、そのために動ける人だもの」


「な……そんなこと……」


「前に会ったとき、私を車から助けてくれた。お祭りの時も、お店を襲おうとしてる人たちを止めた。それに、さっきから守れなかったことを……手が届かなかったことを悔やんで泣いている。今だって、私を守るために手を伸ばしたじゃない」


「……でも……」



再びうつむいたパウロの肩を、アナはポンと優しく叩いた。



「パウロ。誰が何と言っても、あなたは私のヒーローよ。正義の道を示してくれた、すごい人。だからお願い。死なないで」



アナはニコリとほほ笑みかけると、再び背を向け、ガイラスに向かって走っていく。


「あ……」


パウロは、無意識に手を伸ばす。


しかし、その手はアナには遠く届かない。


「……正義……」


パウロは、伸ばした自分の手を見つめる。


先程地面を殴りつけたせいで、彼の拳からにじむ血が手のひらにたまり、小さな水たまりを作り出す。



その表面に映る自身の顔は、先ほどとは何か違う気がした。


to be continued

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ