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ガンズオブスプリンターズ  作者: サラマンドラ松本
第三章 平和の守護者
44/47

ヒーローの素顔

「ジャスティスマン!」


さっそうと現れた彼の姿を見て、冷ややかだった市民の視線に、熱が帯び始めた。


「彼が来たぞ!」


「もう安心だなぁ」


安どと熱狂の声と共に、先ほどまで店や暴漢たちを写していた携帯は、一斉に彼を写す。

そんな観衆の歓喜に少し照れたのか、ジャスティスマンは口元を緩ませた後、すぐに咳払いをして、気を引き締める。


「さぁ君たち!こんなことはやめるんだ!」


「う、うるせぇ!!アンドロイドは全員悪だ!!こんな店やって、俺たちを油断させて情報を抜き取る気なんだろ!!」


「その情報を使って俺たちを殺す気なんだ!!二週間前みたいによぉ!!」


「なんでこいつらが悪いのに、俺たちが責められなきゃなんねぇんだ!!」


口々に叫んだ男たちの一人が、持っていたバールをアンドロイドの店主めがけて振り上げる。


「元はと言えば!!こいつらが攻めてきたのが原因なんだろうがぁ!!」


一切のためらいなく、バールは店主の頭めがけて振り下ろされた。



ガシッ



「やめるんだ」


と、いつの間にか二人の間に立っていたジャスティスマンが、男の手を止める。


「なっ!いつの間に……」


「君」


驚く男に、ジャスティスマンはそっと声をかける。その声に、以前会ったときのような明るさはなかった。


「君の不安感はわかる。だが、その発散先を暴力にしてはいけない。それに二週間前、彼らが蜂起した理由も君たちと同じ。”自分も殺される”かと、不安で恐ろしかったからだ。その気持ちは、今こうして動いている君にもわかるはずだ。違うかい?」


「う……」


ジャスティスマンの言葉に、男たちは黙り込む。


と、突然ジャスティスマンが明るい声色で、男たちに話し始めた。


「さ!今日はマルティショールの二日目だ。祭りはまだまだ続く。しっかり反省したら、祭りを楽しむこと。良いね?」


「あ……あぁ……」


「それと……」


ジャスティスマンは、視線を店主に向けると、地面で膝をつく彼に手を差し伸べる。


「おとうさん。お店を直すの、手伝いますよ。一緒に頑張りましょう!」


「あ、ありがとうジャスティスマン!本当にありがとう!」


と、一連の光景を見た観衆から、沸き立つような歓声が響く。


「すげぇぜジャスティスマン!力を使わないで、話し合いで解決しちまった!」


「とってもスマートで、かっこいいわ!!」


「いつもありがとう!」


次第に大きくなる歓声に比例して、ジャスティスマンの周りに人だかりができていく。


「ジャスティスマン!サインしてくれ!」


「こっちみてー!」


「握手してくれ!」


「はっはっは!みんな落ち着いて!一人ずつ順番だ!」


ジャスティスマンの声が群衆の歓声にかき消されていく中、さらに大きな音を立て、ジャスティスマンに土煙が近づいてきた。

土煙を起こした主は、満ち満ちて隙間のない群衆を、持ち前の機動力で機敏にかわし、ジャスティスマンの前に着地する。


「ジャスティスマン!!サインください!!」


「テリー!あいつ、いつの間に……」


呆れるビルをよそに、テリーは星のごとく輝く目で、ジャスティスマンに手を差し出す。その手には、昨日アナに見せたフィギュアが乗っていた。


「おや、そのフィギュア……」


「はい!子供のころから大ファンで!ずっと持ってたんです!」


「それは嬉しいな!それじゃぁ、胸のあたりに……」


手慣れた動きで、ジャスティスマンはフィギュアを受け取り、胸のあたりにサインを書く。


「これで良いかな?」


「はい!ありがとうございます!」


サインをもらったテリーは、再び凄まじい速度でアナ達の元へかけていった。


勢いに一瞬あっけにとられ、海割のようにきれいに分かれた群衆だが、すぐに向き直り、ジャスティスマンにまた群がるのだった。



そんな群衆の端の端。サインをもらったテリーが、アナ達の元に帰ってくる。


「ただいま~」


「びっくりしたわよ、テリー。急に駆け出してって」


「えへへ……感激でつい……」


「相当うれしかったんだね」


「うん!でも……」


と、テリーの顔が曇る。


「ジャスティスマン……多分すごく疲れてる」


「え?」


「そんなもんだろ。あいつは俺たちと違って、日夜奔走してる。顔のしわの一つも増えるってもんさ」


「そうじゃなくって。このサイン見てよ」


そう言って、テリーは手に握るフィギュアを指さす。


「『Justice man』の”sとt”、それに”eとm”のところ」


「つながって書いてるな。そりゃあ、あの人数相手するんだ。時短術だろ」


「今までどんな時でも、彼はサインを省略したりしなかった。それが彼の誠実さを示す方法のひとつだから。それに……」


フィギュアをバッグにしまったテリーは、自身の鼻を指さす。


「においが違った」


「におい?」


「お前、前回の任務の時いなかったろ。なんでにおいがわかる?」


「その時のおみやげに持ってきてくれたのが、彼が作ったクッキーだったでしょ?包装紙と箱に残ってたにおい、今でも覚えてるよ。ただ、その時のにおいと明らかに違う。人が疲れ切ってる時のにおいだった」


三人が話している中、アナがキョトンとした顔で皆に尋ねた。


「ねぇ。みんなジャスティスマンに会ったことあるの?」


「あぁ、説明してなかったな……」


途端に、皆の顔が仕事の顔になる。


「以前一緒に仕事したことがあるの。それこそ……ギリアン・ガイラスの確保のために」


「えっ!?」


驚くアナに、ビルは話し始める。


「あれは……四、五年前だったか。もともと奴はこの国(ベルトリア)を拠点に動いてた。被害が出始めた初期のころ、世界政府の依頼で俺とサム、エリザベスとレオンが調査と確保に行ったんだ。その時、独自で捜査を進めていたジャスティスマンと、非公式で合同捜査したんだ。結局、奴は深手を負わせたところで逃亡。捜索の甲斐なく姿をくらましたがな……」


「その時、別れ際にお土産でクッキーをもらったのよ。テリーはその時のにおいを覚えてたのよ」


と、エリザベスが何かお思い出したかのように「あ」とつぶやく。


「そういえば。今の話で思い出したんだけど、昨日彼を見たとき、動き方が前と違ったような気がするわ」


「……もしかしたら、ガイラスの事件を寝ずに追ってるのかもな……」



話ながら、三人はジャスティスマンを見つめる。



笑顔で皆の応対をする彼の口元は、すこしだけ曲がっていた。






夕方




「は~楽しかった!」


様々な軽食やら景品やらを両腕いっぱいに抱え、四人は帰路につく。


「まさかドッグレースで五回連続一位を的中させちゃうなんてねぇ。すごいわよテリー!」


「みんなの調子がわかったからね。インチキみたいなものだよ」


「そういうエリーだって、常世から来てた”カタヌキ”とかいうやつ。すんげぇ早かったよな」


「手術でメス握り続けてたから。あれくらいお茶の子さいさいよ!」


「それなら、ビルとアナだってすごかったよね!二人一組のイベントリレー!」


「あんなの、キッドの普段の訓練に比べりゃ、へでもねぇさ。なぁアナ」


「うん。もっと早くクリアできたかも」


皆が思い思いのアトラクションを楽しみ、満足げに話す。そんな中、アナがふと「あ」と声を上げた。


「?どうしたの?アナちゃん」


「その……おトイレ……」


「そういや、俺たちも行ってなかったな」


「それじゃあ、帰る前に行っちゃいましょうか。私が荷物見てるから、皆行っちゃいなさい」


「は~い。それじゃ、終わったらここ集合ね」


「うん」


「あいよ」


軽く話し合い、テリーとビル、アナは手洗い場へと向かっていった。




数分後


「ふぅ……」


すっきりとした表情でハンカチで手を拭きながら、アナが手洗い場から出てくる。


「えっと……確かこっちだったような……」


記憶を頼りに、アナはエリザベスが待つ場所へと歩き出す。


そのさなか、彼女の脳裏に今日の思い出が浮かんだ。


初めて食べた出店の軽食。

今まで見たこともないようなイベントやアトラクションの数々。

そして、自分と同じように、祭りを楽しむ人々の笑顔。


彼女がゼノンとの戦いを経て守りたいと誓った世界が、今日一日はこの場に凝縮されていた。


「こんな日が……毎日続けばいいのにな……」


誰に聞こえるでもなくぼそりとつぶやいたアナ。その顔には、声のように抑えることのできない笑顔が浮かんでいた。



と、アナにもう一つ、今日の出来事がよぎる。



(そういえば。あの出店の店主さん、大丈夫かな)


アナが思い出した店。それは、悪漢たちに襲撃を受けた射的の店だった。


(何事もないといいんだけど……)


アナが胸に沸いた一つの気がかりを思い、ある裏路地の前を通る。



と、アナの足が止まった。



「え?」



アナの視線の先。ごみ箱や室外機が取り付けられている路地の奥。そこには、店を襲った三人の男たちが、何やらこそこそと集まっていた。

その手には武器が握られている。どうやら、先程のジャスティスマンの説得では足りなかったようだ。


即座に身を隠したアナが、聞き耳を立てる。


「くそっ!ジャスティスマンの野郎……」


「アンドロイドなんざ、悪に決まってんだ。なのに味方しやがって!」


怒鳴り名がら、男の一人がごみ箱を蹴飛ばす。


そんな男を眺め、リーダーと思しき男が、鉄パイプを握りながらかみしめるように話し出した。


「まぁいいさ。奴がいなくなった後、俺たちがたっぷりあいつをシメてやるだけのことよ」


「そうだな。どうせここを通るんだ、逃げられやしねぇ」


「バラしてパーツ屋にうっぱらってやろうぜ」


話ながら、男たちは不気味に笑う。


そんな話を聞いて、アナが黙ってみているはずもなかった。


「あの人たち……!懲らしめてやらなきゃ!」


アナがほほを膨らませながら、路地に一歩足を踏み入れようとした



その直後



「き、君たち……そんなこと考えるのは、よ……よすんだ……!」


路地の奥から、大きな衣装バッグを小脇に抱えた、眼鏡をかけラフな服を着た金髪の青年が、男たちに声をかける。その細い手足は生まれたての小鹿のようにプルプルと震えており、青年がいかに勇気を振り絞っているかが、一目で分かった。


「あ?なんだてめぇ?」


「乱暴しちゃだめだ……!み、みんなで手を取り合って……」


「いきなりしゃしゃり出てきて何キレイゴトのたまってんだコラ。てめぇのその棒きれみてぇな手足、叩き折っちまうぞぁ!!」


「ひぃっ!」


凄む悪漢たちを前に、青年はその場でしりもちをついてしまった。


「ギャハハハハ!!こいつめちゃめちゃビビりだぜ!!」


「ヘタレのくせに、何いっちょ前に俺たちに説教垂れてんだこの野郎!!」


「ひ、ひぃい……」


おびえる青年を前に、悪漢二人はさらに勢いを増す。


と、リーダーの男が二人を押しのけ、おびえる男の前に立つ。


「おう兄ちゃんよ。ジャスティスマンの野郎に感化でもされたか?」


リーダーは、手に持っていた鉄パイプを青年の頭のすぐ横に叩きつける。激しい金属音と共に、先端にこもった殺意が、あたりにあふれた。


「俺たちぁな。二週間前のあのクソみてぇな事件のせいで、家も仕事も失ったんだよ。あのクズ鉄ども、さんざこき使ってやったってのに、急に暴れだしやがったからよぉ。全部パーだぜ。そんなことも知らねぇで舐めた口ききやがって。てめぇ何様のつもりだ?あぁ?」


リーダーの言葉に、殺意がこもる。


しかし、突然青年は、毅然とした表情でリーダーの目を見つめた。


「そんなの……君たちが日ごろ彼らをぞんざいに扱っていたから起こったことじゃないか。自業自得さ」


その言葉に、悪漢たちの怒りのボルテージがふり切れた。


「よし。てめぇ殺すわ。あのアンドロイド襲う前の肩慣らしだ!!」


ブチギレたリーダーが、鉄パイプを振りかざす。


「ひ!」


思わず青年は、顔を手で覆った。



ガン!!



鈍い音が路地に響く。


しかし、青年に痛みはなかった。


(あ、あれ?)


疑問に感じた青年が、腕の隙間から前を見る。そこに映っていた光景は、彼の目を疑いたくなるようなものだった。


なんと、小さな女の子が悪漢たち二人の顔面を蹴り飛ばしてた。もう一人は、先端のとがったドローンのようなものが頭に激突している。


「え……?え!?」


彼があっけにとられたのは、悪漢三人がのされた後のことだった。


呆然と口を開けていると、眼前の女の子が手を伸ばす。


「大丈夫?お兄さん」


「あ、あぁ。ありがとう……」


戸惑いながらも、青年は彼女の手を取るのだった。






数分後


駆けつけた警察によって、悪漢たちは逮捕。アナと青年は、簡単な事情聴取を終え、近くのベンチに座っていた。


二人の間に、すこし気まずい沈黙が流れる。


が、年の項というべきか。先に声をかけたのは、青年からだった。


「あ、あの。さっきはありがとう」


「いいの。けがはない?お兄さん」


「うん。おかげさまで。それにしてもすごいね、あの体捌き!何か格闘技でも習ってるのかい?」


「えーっと……ちょっと……ね」


気まずそうに話すアナに、青年は笑いかける。


「ははは、いいずらいこともあるよね。ごめんごめん」


と、青年が不意に笑顔で手を差し出す。


「僕、パウロ。『パウロ・ボーズマン』。さっきはありがとう。えー……っと……」


「私アナ。どういたしまして。ボーズマンさん」


「そんな堅苦しい呼び方しないで!パウロでいいよ」


「じゃぁ……よろしく、パウロ」


二人はにこやかに握手を交わす。



と、アナの眉がピクリと動いた。


「?どうしたんだい?」


「……ううん。何でもない」


そう言って、再び二人は座りなおす。


と、次に口を開いたのはアナだった。


「ねぇパウロ。なんであなたは、あの時飛び出していったの?怖くなかったの?」


純真な顔で尋ねるアナに、パウロは照れくさそうに答えた。


「いや、怖かった。でもね、間違ってるものを見つけて、そのまま見ないふりはしたくなかったんだ。まぁ……弱いしヘタレだから、君に助けてもらっちゃったんだけどね……」


「それでもすごいわ。ああいう人たちに向かっていくなんて、とても勇気が必要だもん」


「君は難なく倒したじゃないか」


「それでも、すこし呼吸を整えないと歩みだせない。あなたは、整えないで止めに入った。すごいと思う」


「そ、そうかな……」


照れくさそうににやにやと笑いながら、パウロは自身の頭をかく。


「そうだよ。まるでジャスティスマンみたい」



と、突然パウロの動きが止まった。



「……彼とは似ても似つかないよ。大違いさ……」


そうつぶやく彼の顔に、先ほどまであった太陽のような明るい顔はない。


代わりにあるのは、暗くよどんだ、後悔と悲しみのような表情だけだった。



と、アナが平然と話す。



「ううん。そっくりよ。特に、”そのバッグに入ってる衣装”とか」


「え!?」


動揺するパウロが止める暇もなく、アナは素早く彼の隣においてあった衣装バッグを開ける。



そこに入っていたのは、ジャスティスマンの衣装一式だった。



「!!」


「あなた、もしかしてジャスティスマン?」


アナが顔色一つ変えずに聞いた質問。


その答えは、冷や汗を滝のように書くパウロから、すぐには出てこなかった。











同刻 パトカーの中


先程捕えられた悪漢たちは、パトカー内で文句を言いながら、座席を蹴り、罵声を浴びせ、運転手を困らせていた。


「とっとと下ろせやポリ公コラ!!」


「いつになったらつくんだあぁ!?」


「うるさい!!静かにしてろ!!」


警官の喝に、男たちは舌打ちをしながら鳴りを潜める。しかし、小声で話すことはやめなかった。


「チっ。あのクソガキ……いいとこで邪魔しやがって」


「ここから出たらただじゃ置かねぇ。必ず見つけ出してやる」


「落ち着けお前ら。まずはこの後どうするかだ。隙を見て……」



ガシャン



突然、社内にガラスの割れるような音が響く。



ギャキィイイイイイ!!



と同時に、突然パトカーの運転が荒くなり始めた。


「うお!?」


「なんだ当然!?」


困惑する中、男の一人が文句を言うため、運転席をのぞき込む。


「おいポリ公!なにして……ひぃっ!?」



男の目に映ったのは、首から上がなくなっている、警官の死体だった。


「うわぁ!?」


「な、なんだよこれ!?」


「おいどうにかしろ!!」


「無理だよ!!手錠もかけられてるし、アクリル板が邪魔で運転席にいけねぇ!!」


「じゃぁどうしろってんだ!!」


男たちが口論を続ける最中、パトカーは、電柱へと向かって直進していた。



ガシャァアアアン!!



すさまじい衝撃音が辺りに響き渡ると同時に、パトカーは動きを止める。


と、後部座席のドアがけ破られ、男たちが顔を出す。

どこかにぶつけたのか、リーダーの頭からは血が出ていた。


「いってぇ……急に何だってんだ……」


「そ、そんなことよりよ。今のうちに逃げちまおうぜ」


「そうだな。おい行くぞ」


男の提案に賛同したリーダーが、もう一人に声をかける。


しかし、返事がない。


「?おい?」


リーダーが振り返る。



そこに立っていたのは、警官のように切り落とされた男の頭を片手で持つ、大男だった。



「ひ!?」


「ギ、ギリアン・ガイラス!?」


ガイラスは、おびえる男たちをよそに、遺体を片手に頭にかぶりつく。


「っぺっ。まじぃ。やっぱ頭スッカラカンのクズは美味くねぇな」


「な、なんでこんなところに!?」


「いちゃ悪いか?」


話ながら、ガイラスは問いかけた男の体を尻尾で真っ二つに切り裂く。


辺りに鮮血が飛び散り、周囲を赤黒く染め上げた。


「ひ、ひぃいい!な、なんでこんなことに……」


恐怖のあまり、しりもちをついて後ずさるリーダーに、ガイラスはゆっくりと近づく。


「俺様が朝方に食い損ねちまったからな。ま、運がなかった自分を恨みな」


男の頭に再びかじりつきながら、ガイラスは尻尾の先端をリーダーに向ける。


「動くなよ。ずれるといてぇぞ」


尻尾がリーダーの頭に向かう。


と、苦し紛れの恨み節を、リーダーが吐いた。


「畜生!!ジャスティスマンに会わなけりゃこんなことにはぁ!!」




ピタッ




突然、ガイラスの動きが止まる。


「……なに?」


と、突然ガイラスは尻尾をリーダーの首に巻き付け持ち上げると、自身の眼前に持ってくる。


「が!!く、苦し……」


「おいてめぇ。今なんて言った」


苦しさでもだえる男に、ガイラスは問う。


「あ……?」


「今なんて言ったって聞いてんだよ」


ガイラスの締め上げる力が増す。


「ぐあぁ!!ジャ、ジャスティスマンに会わなければ……って……」


「どこで会った」


「マ、マルティショールの会場……」


「そうか」



ゴキッ



首を折る音が辺りに鈍く鳴る。


だらりと力の抜けたリーダーの遺体を投げ捨て、ガイラスは踵を返す。


その顔は、怨嗟と憎悪で満ちていた。


「あの野郎ぉ……生きてやがったのか……」


ぼそりとつぶやき、ガイラスは飛び立つ。


辺りに残ったのは、死体と血の海だけだった。


to be continued

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