青と紫
今回は久々の1万文字!!かなりボリューミーですが、ぜひ楽しんでいってください!
アナが目覚めるすこし前。
「破天一刀流!! 王鹿突・六連!」
巌流の鋭い月がゼノンめがけて繰り出される。しかし、ゼノンの素早い動きを前に、すべては空を切った。
しかし、技の隙間を埋めるように、光弾と銃弾が雨のように降り注ぐ。ゼノンはとっさに銀幕で全身を覆い全弾防ぐが、視界が遮られた瞬間を狙い、アレキサンダーが突っ込む。
「”グリング・スティンガ―”!!」
回転するランスがゼノンのまとう銀幕を巻き込み、ブチブチという音を立てながら引きちぎり、ゼノンの胸に突き立てられる。しかし、ゼノンに効き目があるようには見えなかった。
「所詮は突っ込んでくるだけか!」
「そんな脳のねぇ奴らに押されてる気分はどうだ!!あぁ!?」
アレキサンダーが身を引いた直後、怒鳴り声とともに、再びビルから光弾が発射される。ゼノンはそれらをよけると、後ろに飛び上がり、距離をとった。
確かにこの数分、ゼノンは攻撃に転じることができていない。それは、全員の連携の高さにあった。
(誰かの隙を誰かが埋める。攻撃しようにもすぐに追撃が来る……アナを殺してからか、連携密度が格段に増している…)
普段訓練をしてはいるものの、新メンバーであるアナを組み込んだ連携は、皆まだ慣れていない。しかし、アナが重傷を負ったことに対する怒りと、それに伴う戦線離脱によって、SIUの面々の連携は格段に上昇。ゼノンに攻撃の隙を与えないほどにまで至っていた。
(アナの離脱を考えると、これがこいつら本来の実力か…)
ゼノンが思考を巡らせる。その間にも、サムたちは次の一手を考えていた。
「どうする。現状有効打が俺のヒートエッジと、ビルのMAXチャージのエネルギー弾ぐらいしかないぞ」
「さっきの手ごたえからして相当硬い。あと12発は撃ち込まなくちゃいけねぇが……ここで嬉しくないニュースだ。さっきの一撃にかなりパワーを使っちまってな、撃てるのはあと一発が限度だ」
「となると…少しやり方を変える必要があるかもね」
「だったら俺に任せろ」
三人が話していると、アレキサンダーがランスを担ぎなおし、ゼノンをにらみつけながら話す。
「俺のランスなら、奴のコアを貫けるはずだ」
「無理するなアレク。君も相当ダメージを追ってるだろう?」
「馬鹿言うな…アナに比べりゃこんなこと、屁でもねぇさ」
「……わかった。それで行こう」
「サム、万が一のためにパワーは温存したい。俺も近接戦で行く」
「わかった。じゃあ僕が援護する。三人は近距離戦で奴を叩きのめしてやれ」
「「応」」
「さ…弔い合戦再開だ……!」
四人が話し終え、ゼノンに向かっていこうとしたその直後。
カッ
突如、背後でまばゆく輝く青白い光が辺りを照らし出す。四人が即座に振り返ると、煌々と光る青い光の塊が、浮かんでいるのが見えた。
「なんだありゃ!?」
「わからん…敵の新手か…?」
四人が困惑していると、青白い光球はすさまじい速度で四人に迫る。それぞれが迎撃するために構えるが、光球は四人を通り過ぎ、まっすぐゼノンの元へ向かっていった。
通り過ぎざま、光球から声が聞こえる。その声が聞こえたのは、サムだけだった。
「はぁぁぁぁああああああああああ!!!」
「!!この声!」
サムが声の主に気づく。其のことを声に出すよりも早く、光球はゼノンに向かう。そして、徐々に光球の大きさが小さくなるとともに、その中心の人物が姿を現した。
「「アナ!!!?」」
【ブルーホール マキシマ!!】
皆の歓声が響くよりも先に、アナの声が高らかと響く。その直後、アナをまとっていた光弾が彼女の手中に収まり、ゼノンめがけて放たれる。光弾がゼノンと接した直後、周囲を巻き込むような爆発が生じ、ゼノンの身体をがりがりと削っていく
「ぐが…」
ゼノンがうめき声をあげながらも、エネルギーをまとった右腕で光弾を殴りつけた直後、とってつもない爆発が生じ、部屋全体を包み込む。ゼノンは衝撃に耐えられず、再び壁際まで吹き飛ばされてしまった。
その場の全員が、顔を再び上げる。そして目に映ったのは、まるで神のように青い光を放ち、宙に浮いているアナの姿だった。
「アナ!!無事だったのか!!」
サムは感動から、アナを思わず抱きしめる。
「く、苦しいよサム…」
「ケガは!?もう大丈夫なのかい!?」
「うん。綺麗に治ったよ」
そういってアナは胸元を広げ、傷口があったところを見せる。アナの言うとおり、先ほどまであった裂傷は、跡すら残らずきれいに完治していた。それを見たサムの、アナを抱きしめる力が強まる。
「良かった……本当に良かった…!!君が死んでしまったのかと…!!」
「うぅ……サム、苦しぃ……」
抱き合い喜ぶ二人をよそに、他のメンバーは開いた顎が閉まらないでいた。
「な、なんで傷が治ってるんだ…?」
「あんな深手が跡形もなく…ありえない……」
「そもそもあの光はなんだ?それに、雰囲気も先ほどまでとどこか違う…何があった?」
「それは僕らも同意見だよ……」
三者三様に驚いていると、背後からカナロアを担いだ颯が歩いてきた。
「颯!!」
「なんで彼女の傷が治ったのかわからない…それにあの光もね…急にあぁなったのさ」
「いきなり傷が治って、しかも強化……それじゃまるで…」
巌流が何かを言おうとしたその直後、前方から大量の紫色の光弾が押し寄せてきた。
「!まずい!!」
「大丈夫」
焦るサムをアナは落ち着き払った声でなだめると、そっと右腕を前に出す。すると、アナの体から脈打つように青いエネルギーが立ち上り、右腕に集まり始める。
【アズールシールド】
直後、アナの右腕から巨大な青い膜が出現し、皆を覆う。青膜はゼノンの光弾の雨をものともせず、すべて防ぎ切った。
「すごいな……あんなでかいの、レオンでも出せないぞ…」
「強度もけた違いだ。強化されたゼノンの光弾を全て受けてなお無傷とは…」
アレキサンダーと巌流が驚きの声を上げる。しかし、真に驚いていたのはサムだった。
「アナ……どうやって…?」
「どう…?えっと、ぶわって…」
「そうじゃない…どうやって”ラプターを使わずに”出したんだ…?」
「えっとね、体に流れる力を右腕に集めて、想像したの。みんなを守れるバリアを」
「想像…?」
二人が話していると、ゼノンが豪速で距離を詰める。彼の手には、先ほどアナを切り裂いた紫色に輝く爪が三本、再びアナをとらえていた。
「起き上ガッタノナら、もう一度切り殺スダケダ!!」
「二度も同じ手はくらわない!」
〔ヴォイドクロー・UG!!〕
【ブリュードエッジ!!】
明るく鮮やかな青色のエネルギーブレードがアナの腕から伸び、ゼノンの紫色の爪とぶつかる。
直後、目もくらむような光と共に、「バヂバヂ」という耳障りな音が部屋を包む。まぶしさをこらえて前を見たサムの眼前に映ったのは、ゼノンとアナの互角の鍔迫り合いだった。
「貴様…一度死ンダトイウのに、ドコカラソんな力が…!!」
「あなたのおかげでつかんだの…私の”眠る力”を!!」
アナが叫ぶと同時に、お互いの腕がはじかれる。
しかし、それで終わる二人ではない。
〔ヴォイドスピア〕
【ラプター ユーズフィフス ペネトレートスパイン】
ゼノンの触手から勢いよく伸びる光の槍が、ラプターが放つ光の槍とぶつかる。その間を縫い、二人は再び対面する。
〔ヴォイドフィスト・UG!!〕
【セレストパンチ!!】
互いの色のエネルギーをまとった拳が衝突し、青紫の衝撃波が二人を包む。それすら気に留めず、二人の拳はぶつかり合い続ける。
〔ヴォイドフィスト・サウザンド!!!〕
【セレストパンチ バースト!!】
青と紫が入り混じる光の檻の中で、ゼノンとアナはこぶしをぶつけ合い続ける。
「アナああアアアアアアアア!!!」
「ゼノおおおおおおおおおン!!!」
二人の叫び声が、拳同志のぶつかり合う音に消えていく。
そんな二人を見つめる周囲の目には、青紫の光の塊があるだけだった。
「あんな密度じゃ、援護にすらいけねぇ…」
「我々が立ち入れば、それがアナにとっての隙になる。今はただ…見守るしか…」
「ダメだ」
巌流の案を、サムは即座に否定する。
「ダメ?」
「起きてすぐだからか、アナがまだ本調子じゃない。徐々にゼノンに押され始めてる。援護に行かないと…!」
「しかしどうやって?あんなの、俺たちが立ち入る隙すらない。何か壁でもないと…」
巌流が考えていると、背後から太く力強い声が聞こえた。
「壁が必要なら、我らに任せろ!」
皆が話している間、なおも二人はこぶしを交える。しかし、サムの見立て通り、アナが徐々に押されつつあった。
(…だんだん…つらくなってきた……)
アナの顔に苦悶の表情が浮かぶ。
それもそのはず。いくら手数は互角とはいえ、肉弾戦に特化しているゼノンとでは、パワーに少なからず差があった。アナは先ほどの体験でつかんだ力で補っていたが、それでも生じる小さな差が、連撃によって徐々に開いていく。
(どこかで隙を見つけないと…このままんじゃ、押し切られる…!)
アナが思考したほんの一瞬、攻撃のスピードがほんの少し遅くなった。そのタイミングを、ゼノンは利用する。
ピタッ
「!!」
突然、ゼノンの攻勢が止まる。しかしアナの拳は止まらない。もともとゼノンの拳を受けるためにはなっていたアナのパンチは、ゼノンに当たることなくあらぬ方向へと伸びていく。
「油断シタナ!!」
ゼノンの拳が再びうなり、アナに向かう。
(手が使えないと、防げない…!!)
ゼノンの拳がアナの胸に届く
その瞬間
「おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!」
地を揺らすような雄たけびとともに、二人の間を大男が遮る。
「アナあ!!無事かぁ!!!」
「レオン!!」
驚くアナをよそに、レオンハルトはアナを抱きかかえると、急いでその場を離れる。だが、みすみす逃すほどゼノンも甘くはない。
「逃ガスカァ!!!」
ゼノンの右手が、レオンハルトを照準にとらえる。
〔ヴォイド…〕
しかし、技を放つ前に、もう一人の大男がゼノンの前に立ちはだかった。
[キャノンナックル!!]
ギガスの拳が、ゼノンの右腕を殴りつける。
「ガーディアン!!もうやめろ!!」
「ヤメルダト…?血迷ッタカ愚カ者がぁ!!」
〔ヴォイドフィスト・UG!!〕
ゼノンの攻撃をギガスはとっさに防ぐが、片腕では威力を完全に殺しきれず、後方へ大きく吹き飛ばされる。
「ガ…!」
しかし、吹き飛ばされたギガスをアレキサンダーが受け止めた。
「大丈夫か!」
「…あぁ、なんとか…」
「レオン!アナは!?」
「私は大丈夫!何ともないよ!!」
無事に体勢を立て直すアナたちを見て、ビルが笑いながら叫ぶ。
「さぁて!ようやくこれで全員そろったな!」
「今度こそ、奴を止める!!」
「まぁまてアナ。意気込むのはいいが、無策で突っ込めばまたやられるぞ。策を考えないと…」
「だったら、僕にいい案がある」
巌流の問いかけにサムが答える。
「レオン、ギガス。前衛を頼む。奴の猛攻を防げるのは二人しかいない」
「まかせろぉ!!」
「…OK」
「巌流、アレク。いつも通り近接戦だ。二人の攻撃は、少なからず奴に通じる。好きなだけ切って突いてやれ」
「承知した」
「了解だ」
「ビル、颯…そしてカナロア。僕と援護に回ってくれ。君たちの腕を見込んでだ。頼むよ」
「おうとも」
「任せて!」
「癪に障るが…いいだろう」
「そして……アナ。君が要だ。僕らが道を作る。君が決着をつけるんだ。できるかい?」
「うん。今度こそ!!」
「よし!!」
サムの声が部屋に響く。その声色は、先ほどのように怒りに支配されてはいない。希望に満ち満ちた、決意の声だった。
「みんな!!ここが分水嶺だ!!今度こそ止めるぞ!!」
「「「「応!!!!」」」」
皆が決意を固める中、ゼノンの体にはびこる銀色の根が、より一層身体を侵食する。
「愚カデ……脆イ……脆弱ナ人間ゴトキガァ……」
根の浸食に合わせ、彼の声が徐々にくぐもっていき、雑音が混じる。
「全員皆殺シダァアアアアアアアアアア!!!!!!」
ゼノンが叫んだ直後、アナたちの周囲に銀色の触手が現れ、うねうねと動き始めた。
「!?なんだ!?」
「これは…さっき飛び散った奴の体の破片か!?」
「なぜ切り離されて動くんだ!トカゲじゃあるまいし!」
「破片……再生……そうか…!」
ビルと巌流が驚いていると、突然何かをひらめいたカナロアが叫ぶ。
「先刻から言動や声質が何か変だと思っていたが……わかったぞ!今、ゼノン様は暴走状態にある!!」
「何をいまさら……今に始まったことじゃねぇだろ」
「違う!!思想や行動のことではない!!今の状態の話だ!!」
茶々を入れるビルをなだめ、サムが尋ねる。
「どういうことだい、暴走って?」
「お前たちの言う鋼球…あれはロストウェポン「アレス」。簡単に言えば、人なアンドロイドを狂暴化させる大量のナノマシンの超圧縮集合体だ。今我々の周りで蠢いているのも、アレスの塊なのだろう」
「そんなものを丸ごと取り込んだのか、奴は…」
「それだけじゃないぞ、でかいの。そのナノマシンを統括するために、AIが内蔵されているのだが…非常に抗戦的で凶暴だ。ゼノン様曰く、「適切に操作しなければ、敵味方関係なく襲い掛かってくる」と…」
「……!まさか!」
「そう、恐らくゼノン様は、思考をアレスに侵食されつつある……あの方の頭にあるのは、殺戮だけだ!今はまだ人間や超人だけに矛先が向いているが、いずれアンドロイドにも刃を向けるだろう…」
「そんな状態でロストボイスを使われたら……」
「世界中が血で染まる……!」
サムとアナの頭に、最悪の未来がよぎる。
「…だったらなおのこと」
「止めねばならんなぁ!!」
そんな二人に笑いかけ、レオンハルトとギガスはゼノンの元へ突っ込んでいく。ゼノンとの距離、約100メートル。
しかし、皆の動きに反応してか、周囲を取り囲む触手が、二人めがけて伸びていく。だが、その先端が二人に届くことはなかった。
「如月流糸術 連縛罠!!」
一本の糸に触れた触手に糸が絡みつき、それを起点として、すべての触手が糸によってがんじがらめになり、一切身動きが取れなくなる。
「さすがだな颯!いつこんなのを仕掛けたのやら…」
「こんなに時間があれば、これぐらいの罠、すぐできるよ!!もう触手は気にしなくていい!みんな好きに動いていいよ!!」
颯の掛け声を聞き、皆はレオンハルトとギガスの後に続いて走り出す。だが、ゼノンもただで受けるわけでは無い。
「ソレゴトキデ封じタトデモ!?」
ゼノンの声が響いた直後、颯の糸に縛られていた触手たちが液体のように動きだし、大きな二つの塊になると、クワガタの牙ような巨大な壁に変化し、全員をつぶさんと左右から向かってきた。
「マトメテツぶれルガイイ!!」
「…なんの!!」
「これしきいい!!」
牙が皆に迫る直後、ギガスとレオンハルトが進行を止め、自身の身で両方の壁を受け止める。
「ぬおおおおおおおおおお!!!」
二人が壁にぶつかり、全身全霊で力を籠める。
すると、徐々に勢いが弱まっていった壁の進行が、すんでのところでぴたりと止まった。
「チィッ!!」
「行けぇアナ!!我々は問題ない!!」
「…このまま押しとどめる!!行くんだ!!」
「!…ありがとう!!」
レオンハルトとギガスを後に、皆は進み始める。ゼノンとの距離、85メートル。
「私が前に出る!!」
「ダメだ!奴を倒せるのは君だけだ!力を温存するんだ!!」
「それに、奴の攻撃を捌くだけならば、俺たちでもたやすい!!」
「気兼ねなく行け!!」
「…わかった!」
サムの説得と、巌流とアレキサンダーの力強い言葉に、アナははやる気持ちを抑え、後方にとどまる。だがそれは、ゼノンにとっては好機だった。
(ナゼダカわかランガ、アナガ前ニ出ない以上、私ノ攻撃ハトどク……ギガストデカブツニ止めらレテイルセイデ、質量攻撃ハ使えナイ……ナラバ…!)
ゼノンの思考に同調するように、彼の銀幕や胸がミサイルポッドのように変わっていく。その銃口全てに、紫色の光が灯っていた。
(数デオシツブスノガ得策!!)
〔ヴォイドレイン・UG!!〕
直後、すべての銃口から、ビルが放ったような大きさの巨大な光弾が、雨のように降り注ぐ。
「この密度はまずい……!」
「それはどうかな?」
ビルの絶望した声を聴いたアレキサンダーが、得意げに鼻を鳴らす。
「今こそ、俺のランスの新機能お披露目の絶好のタイミング!!」
笑いながら、アレキサンダーは、ランスの柄にあるボタンを押す。すると、「プシュウ」という蒸気音と共に白い煙が吐き出されたかと思うと、まるで傘のように変形する。
「俺のランスは、あらゆるものを貫くために極限まで硬く作られている!!裏を返せば!!あらゆるものを防ぐ盾にもなりうる!!」
アレキサンダーの話し声に合わせて、傘となったランスが回り始める。
「矛盾だなんて言わせない!!レオンに続く最強の盾になることをここで証明してやる!!」
「”アンブレラ・シールド”!!」
アレキサンダーの宣言通り、傘となった彼のランスは、ゼノンの絨毯爆撃を受けてもびくともしない。だが、すさまじい衝撃で進行の足が止まる。ゼノンとの距離、50メートル。
「くそ!!耐えれはするが動けもしない…!」
「いいや、これでいい!!」
そう叫び、巌流が傘から抜け出し、ゼノンとの距離を詰めていく。
「アレク!!そこでみんなを守れ!!俺が時間を稼ぐ!!」
アレキサンダーの返事を待つことなく、巌流は刀を構えて走り出る。そして、彼の剣先に再び炎が宿る。炎は巌流の進む軌跡を作るように、火力を増し、どんどんと伸びていく。
「長い攻防も、これで終わりだ!!破天一刀流 炎舞!! 炎帝 虎爪!!」
巌流の刀が、W字にゼノンの胸を切ったことによって、砲塔が破壊。アナたち本陣への空爆の勢いが弱まった。
「今だ!!一気に詰めるぞ!!」
この機を逃さず、アナたちは再び走り始める。ゼノンとの距離、40メートル。
「コノ……時代遅レノ死にゾコナイガァアアアアアア!!」
本陣が動き出したことで、ゼノンは爆撃をやめ、再び銀幕を触手状に変化し、眼前にいる巌流に狙いを定める。
「蜂ノ巣ニシテクレルワ!!」
〔ヴォイドニードル・エイツ!!〕
八本の触手が、巌流めがけて迫る。
「全て切り伏せるまで!!」
そういって巌流が刀を上げようと腕に力を込めた直後
「サセルカ!!」
突然ゼノンが右腕で刀を掴む。途端に右腕は液状に変わり、巌流の刀を包み込んだ。
「!?」
「コレデ斬れマイ」
にやりと笑うゼノンの顔の後ろから、鋭い触手が迫る。巌流は力を込めて振りほどこうともがくが、刀は動かない。
「くそ!!」
「マズハ一人」
触手が巌流の体に突き刺さらんとしたそのとき
〈アイアンバイト!!〉
突然ゼノンの背後を一つの影が横切る。と同時に、触手がその影に引っ張られるようにちぎれていく。
影は見事に着地すると、触手を”吐き捨て”て、皆に話しかけた。
「みんなおはよう!!ばっちり目覚めたよ!!」
「「テリー!!」」
SIUの面々が歓喜の声を上げる中、ビルだけは起こり気味に声を上げた。
「テリーてめぇ!!いつまで寝てやがんだ!!お前がいること忘れちまってたぞ!!」
「だって……あの麻酔強力すぎるよぉ…」
「お前が暴走しなきゃ済んだ話だろうが!!暴れ疲れて眠りこけるたぁ、ガキかお前は!!」
「うぅ……面目ない…」
しょぼくれるテリーに、巌流は優しく話しかける。
「気にするなテリー!その分仕事をすればいいだけだ!!」
「確かに…今までいなかった分頑張るよ!!」
話しながら助走をつけ、テリーは弾丸のごとくゼノンに向かって突っ込んでいく。
「おりゃあ!!」
テリーの鋭い爪がゼノンの右腕に深い傷をつける。その直後、傷口から炎が噴き出した。
「!」
「破天一刀流 炎舞!! 斬光噴火!!」
巌流の刀が、どろどろと溶岩のように溶けたゼノンの右腕を破壊し、姿を現す。その刀身は、今までにないほど赤く輝いていた。
「これで決める!!行くぞテリー!!」
「うん!!」
鬼気迫る勢いで、巌流が刀を振り下ろす。だが
「コレシキノ事デェ!!!」
ゼノンが叫ぶと、レオンハルトが抑えていた壁が突然液状に変化し、ゼノンの元へ向かう。直後、溶けたゼノンの右腕が切り離され、代わりに壁だった液体を取り込む。すると、新たな右腕へ変化し、鋭いビームエッジを伸ばして、巌流の刀とテリーの爪を受け止めた。
「残念ダッタナ!!貴様ラノ攻撃ナド、モウ私ニハ届カンノダ!!」
「届かなくてもいいさ」
「本命は、俺たちじゃない!」
「ナニ?」
突然、二人が飛びのく。
そして、ゼノンの眼前にアナたちが映る。
彼の目に映るアナは、青い光を身にまとい、空中でエネルギーを溜めていた。
「!!マサカ!!」
巌流が飛び出す数秒前。
「巌流、時間を稼いで」
アナの突然の言葉に、巌流は一瞬困惑する。
「なに?」
「今、私の胸に力を溜めてる。そうすれば、強力な一撃が打てる。でも時間がいるの。何とか出来る?」
「なるほど。そういうことなら任せろ!」
そして現在
「あと少し!!」
まるで星のように輝くアナの姿に、ゼノンは本能的に恐怖を覚える。
「アレハマズイ…!!」
直後、ギガスが抑えていた壁とテリーかみちぎった銀幕が液状に変わり、ゼノンの頭上に集まり融合していく。そして、行く本物触手や銃口を携えた、まがまがしい塊へと変貌を遂げた。
「ココデ消シ去ッテクレル!!」
塊が作り出した武器のすべてが、アナに向かって攻撃を始めようとしたその時。
ドガガガガァン!!
絶え間ない連射音と共に、塊が爆発し、攻撃の手が止まる。
「!?」
「僕のことを忘れてもらっちゃ困るよ、ゼノン!!」
ゼノンが再び前を見ると、絶え間なく銃を撃ち続けるサムの姿があった。
「まだ爆発弾は残ってるんでね!!全部使わせてもらうよ!!」
「ダッタラドウシタ!!ソレシキノ爆発デハ、止メラレンゾ!!」
「だったらこいつでどうだ?」
得意げに話すゼノンの頭上で、すさまじい爆発が起こる。
「俺のなけなしの一発だ!!よく味わいな!!」
ビルの全力の一撃が火を噴いた。しかし、塊は半壊してもなお耐える。ふらふらと力なく浮かびながらも、アナを照準にとらえた。しかし
[キャノンナックル!!]
ギガスの拳が、塊のコアらしき部分に直撃する。その一撃には流石に耐えきれず、塊は炎を上げながら地面に墜落していく。
「~~!!ナラバコノ手デ!!」
ゼノンが両手を上げようとした直後
ギシッ
身体が動かない。まるで何かに縛られたかのように。
そして、その感覚を察知した直後、すさまじい電流がゼノンの体を流れる。
「!?」
「動かないでしょ。いつもよりきつく縛ってるからね!」
ゼノンが自身の右側に目を向けると、全力でジェットを吹かすレオンハルトの肩に乗っている颯とカナロアが、糸を握り締めていた。
「もうあきらめなよ!君の野望はここで終わりだ!!」
「ゼノン様!!もう!もう止まってください!!」
「ヌグアアアアアア!!!」
ゼノンの雄たけびが、部屋全体に響き渡る。その瞬間、先ほどの塊や胸のプレート、右腕がゼノンの頭に集まり、巨大な砲塔のような姿に変わる。
「ダッタラ!!スベテ消シ去ッテクレルワアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!」
ゼノンの砲塔は、周囲の空気を吸い込み、巨大な紫色の光球を作り出す。
「コレデオワリダアアアアアアアアアアアアアア!!!!」
〔ヴォイドカノン・ウルティメイト!!!!!!!!〕
直後、ゼノンの顔から今まで以上に巨大なビームが発射され、アナに向かっていく。
だが、彼女も準備はできていた。
「これ以上!!もう誰も傷つけさせはしない!!」
【ブルーコメット!!!!!!!!!!!!!!】
直後、アナの胸が開き、機械的なコアのようなものが露出。そこから、青い光線が放たれる。
その光線は決して大きくはない。しかし、その勢いは、まるで彗星のような力強さをはなっていた。
「いっけえええええええええええ!!!!!」
アナの声が、思いが、ビームと共にゼノンに向かう。
そして、ビーム同士がぶつかり合った直後。
ゼノンの大きく分厚い巨大な紫色のビームが、アナの流星のごとく輝く、細く鋭い青い光線によって貫かれていく。
「ヌ…グオアアアアアア!!」
ゼノンがビームの出力を上げるが、光線は止まることなく突き進む。
(ナゼダ!!ナゼ威力ガ上ガッテイル!!私ヨリ!!格段ニ劣ッテイルハズナノニ!!!)
ゼノンはさらに出力を上げる。だが、なおも光線は進み続ける。
(ナゼ止メラレン!!ナゼ打チ消センノダ!!)
ゼノンは限界まで出力を上げる。しかし、光線は止まる気配を見せない。
(コノママデハ!!私ノ!!アノ方ノ夢ガ!!希望ガ!!理想ガ消エテシマウ!!ソレダケハ!!ソレダケハァアアアアアアアアア!!!)
ゼノンが、自身から噴き出る炎に気づくことなく、限界を超えて出力を上げようとした。
そのとき。ふと、ゼノンの脳裏にあの方の……アテナの言葉がよぎった。
『ゼノン。私たちと人類…いつか互いに手を取り合ってこの戦争を終わらせる…そんな日は来るのでしょうか…』
(…アテナ様。……ソウカ。忘レテイタ。アノ方モ、望ンデイタノカ。皆が手を取り合える……争いのない世界を……そのための……平和的な道を……)
ゼノンが彼女の言葉を思い出したのは、アナの光線が彼の胸を貫いた直後だった。
to be continued




