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ガンズオブスプリンターズ  作者: サラマンドラ松本
第二章 機械仕掛けの夢
34/47

眠る力

立ち上るゼノンのエネルギーに、皆が顔を覆う。


「ゼノン!?あの傷でどうやって…」


「あの鋼玉を取り込んだのか…厄介だな…!」


サムとアレキサンダーの苦悶のつぶやきを背に、アナは一歩前に立ち、ゼノンに呼び掛ける。


「ゼノン!あなた…!」


「アナァ…まだ終わってなどいないぞ…!まだ……何も変わってなどいないのだ!!」


「させるか!!」


ゼノンの挙動を察知したサムが、すかさず弾を貫通弾に変え、ゼノンめがけて銃を放つ。乱れているように見えて正確なサムの照準で、弾は全弾ゼノンに命中し、多くの風穴を開ける。


だが、直後に穴の周りの部位が動き出し、穴を跡形もなくきれいに消し去った。


「再生した!?」


「これしきの事で、この私を殺せると思うなぁ!!!」


ゼノンの大声に反応したかのように、何本もの触手がすさまじい速度でアナたちに向かって伸びてくる。皆は間一髪で身をひるがえすが、触手は地面に突き刺さった直後、銃口のような穴を全方位に無数に生やし、砲塔のような姿に変わる。


その直後



ビイィィィィィィ!!



全ての銃口から、空を切るほどの熱と速度で紫色のビームが放たれる。サムとアナは必死の思いでかわしつつ距離をとる。アレキサンダーもランスを使っていなしていくが、物量で押し切られ、そのままはじかれてしまった。


「アレク!!」


「よそ見している場合かぁ!!」


アナが巌流に気を向けた直後、雄たけびのような声と共に、ゼノンが触手に引っ張られるように、弾丸のごとき速さでアナめがけて突っ込んできた。

ラプターでの防御が間に合わないと確信したアナは、間一髪、腕をクロスし防御の姿勢をとろうとするが、その行動を見たゼノンは即座に腕にエネルギーを溜める。


すると、左の手の甲からまるで獣のようなエネルギー状の爪が三本伸び、アナめがけて振り下ろされた。


〔ヴォイドクロー・UG(アップグレード)


三本の爪はアナの胸を切り裂き、深い切り傷を負わせる。


「あぁっ!!!」


アナの苦悶の叫び声が響く間もなく、ゼノンは右腕をアナにかざす。


〔ヴォイドブラスト・UG〕


直後、腕から放たれた紫の光弾が、アナに直撃する。直後、激しい爆発が生じ、アナを遠く反対側の壁へと吹き飛ばした。

だが激突直後、こちらも間一髪、ギガスがアナと壁との間に割って入り、アナを見事キャッチする。が、とてつもない推進力に引っ張られ、壁に背中を強く打ち付けてしまった。


「ぐ……」


「アナ!!」


壁との衝突を見たサムと巌流が、全速力でアナの元に駆け寄る。


「アナ!!大丈夫かい!?」


「うぅ…」


アナの胸に刻み込まれた三つの深い切り傷から、赤い鮮血がどくどくと音を立てて流れ出る。痛みと苦しさから、アナの顔も苦悶の表情に変わっていた。

そんな中、か細い声でアナがギガスに尋ねる。


「ギガス……手錠は…」


「巌流に一時的に解除してもらった…無理をするな……その傷だとしゃべるのもつらいはずだ…」


「あり…がとう」


痛みに歪みながらも、アナはギガスに笑いかけると、顔をサムへとむける。


「サム……」


「アナ!無理にしゃべらなくていい!!すぐ安全な場所へ移すから!!」


「彼を…説得して…きっと分かり合える……はず……だから…」



そして、その言葉を最後に、アナの眼は閉じた。



「アナ!!今手当てを…」


急いでサムが腰のポーチから注射器を取り出そうと手を伸ばす。


しかし



パリィン!!



突然背後から紫の光線が放たれ、サムのポーチを貫いた。


「何を悠長に話している」


皆が振り返ると、触手をうねらせながらゼノンが近づいてきていた。その目はまがまがしい紅蓮に輝き、体からは紫色のエネルギーが漏れ出ていた。


「まだそれほどに余裕があるとはな。妙案でも思いついたか?」


「ゼノン!!貴様ぁああああ!!!」


「この子は争いを望んでいなかった……ずっと君と分かり合おうとしていた!!それなのになぜこんなことを!!!」


「簡単なことだ。私の野望を邪魔したからだ」


その言葉を聞いた瞬間、この場にいる皆の心の中で、何かが切れる音がした。


「彼女とはついぞ分かり合えなかったが、まぁいい。邪魔をすればこうなるという見せしめに、骸をさらしてやるとでも」


ゼノンが得意げに話している直後、彼の眼前に突如として刀が現れた。焦ることなくゼノンは右手で刀を受け止めると、眼下の者を見る。


「まだ動けるのか。侍」


「もういい。もう黙れ」


当然、ゼノンの握る刃が赤く輝き始める。


「!」


「お前はぁ!!ここで死ね!!!!」


刀の赤熱に気づいたゼノンは、刃から手を離すと即座に距離をとり、再び触手を巌流の頭めがけて伸ばす。


触手が巌流に刺さりそうになる直前、巌流は、回りだした。


「破天一刀流 炎舞!! 焔独楽(ほむらごま)!!」


今にも突き刺さりそうな触手たちを、炎をまとった刀がすべて焼き切っていく。


「炎をまとうほどの熱…ただのヒートエッジではないな」


「いいのか?そんなに悠長で。これは貴様を裁く、地獄の炎だ!!払い落とせはしないぞ!!」


巌流の叫び声を聞き、ゼノンが警戒体制に移行した直後



ボォッ



「!?」


突然、先ほど刃を受け止めた手から炎が立ち上る。

すかさずゼノンは消化しようと手を振るうが、炎は消えるどころか、ますます勢いを増していく。


ゼノンが消火に手間取っていると、刀を構えた巌流が走り出した。


「ちっ」


次に来る巌流の攻撃を防ごうと、ゼノンが背後のマントのような銀幕を手に取った直後


「”パイル・スティンガー”!!」


背後からアレキサンダーがとびかかり、ゼノンの腕ごと地面を穿つ。


「貴様…!」


「おとなしく切られてろ、クソ野郎!!」


ゼノンが気をとられている隙に、巌流は一気に眼前まで距離を詰める。そして、固く握りしめた刀を、ゼノンめがけてふるった。


「破天一刀流!!大日ノ出(おおひので)!!」


巌流の切り上げた刀が、ゼノンの体を(たすき)状に裂く。

ゼノンは即座に再生しようとするが、炎に溶かされたせいで形が不定形になり、即座の再生を困難にしていた。


ゼノンが再生に手間取っていると、突然巌流とアレキサンダーが距離をとる。と同時に、胸の傷の中に何かが撃ち込まれた。



バガァアン!!



直後、傷の中で爆発が起きた。爆風でゼノンの身は後ろに大きくのけぞり、あたりに鋼色の破片が飛び散る。


(グレネード?それにしては威力がない…)


ゼノンが大勢を立て直し正面を向く。その目に映ったのは、硝煙立ち上る銃口をこちらに向けたサムと、腕を銃の形に変形させたビルの姿だった。


「痛むかい?」


そう言いながら、サムは引き金を引く。放たれた弾は傷口に命中すると同時に、着弾直後に爆発した。


(そうか爆発弾…)


「俺らの受けた痛みはこんなものじゃねぇ…!」


ビルの腕からエネルギー弾が放たれる。弾は胸に着弾し、傷口をさらに広げていく。


「あんないい子をよくも…」


だんだんと、サムの銃の発射速度が上がっていく。しかし狙いは外さない。


「てめぇだけは!!地獄に落ちろおぁ!!」


ビルの腕から、今までにないほど巨大なエネルギー弾が放たれ、ゼノンの胸を直撃する。



ドゴォオオオオン!!



すさまじい爆音と共に、ゼノンははるか後方まで吹き飛ばされた。


「…どうだい?スペアの腕の調子は」


「最高だぜ。あの野郎を殺せるってんだからよ。今までにないほど絶好調だ」


「そうか……」


二人が話しているうちに、前方の土煙が晴れる。姿を現したゼノンの体の傷は、塞がっている途中だった。


「爆風で焼ケた個所が吹き飛んダオかげで、再生することガデキた。感謝するぞ、人に与スル裏切者よ」


「今ので死んでもらっちゃ困るぜ。まだまだ怒りが収まらねぇんでな。ちょうどいい”発散先”がなくなったかとヒヤヒヤしたぜ」


ビルの怒りが反映されているのか、彼の腕にバジバジと音を立て、エネルギーが集まる。


そんなビルを横切り、サムが一歩前に出る。


普段温厚な彼の目には、明確な殺意が宿っていた。


「あとでアナに謝らなくっちゃね。願いをかなえる(説得する)ことはできなかったって…!!!」






サムたちがゼノンと戦っている同時刻






「がんばれアナちゃん…!死んじゃだめだ!!」


颯が必死に呼びかけながら、胸の傷の縫合を続ける。しかし、彼女からの返答はなかった。


少し前、ビルの腕が修理困難だとわかり、念のため持ってきていたスペアの腕に取り換え終わった直後。ビルと颯の二人は、アナの胸が切り裂かれるのを目撃した。その後、巌流が攻勢に出るのと入れ替わる形で二人はサムと合流。ビルは前線に、颯はアナの治療に取り掛かった。



しかし、ゼノンの横凪の一撃は、アナの胸奥深くにまで食い込み、肺や心臓を傷つけていた。



人は心臓が止まってからも一分半ほどは呼吸をしており、死に至るまでには二分ほどかかるという。

そのことを知っていた颯は、傷口から心臓と肺の負傷を瞬時に見抜き、一分半をすぎないよう、レオンハルトに施した修傷結び(しゅうしょうむすび)を神がかった腕と速度で行い、内蔵と肉体双方の傷口を即座に縫合。無事に傷口をふさいだ。


(心臓負傷から50秒…呼吸停止ラインギリギリだったけど……クソッ!!)


が、彼女の意識が戻ることはない。それどころか、脈動は止まったまま。今もなお行っている懸命な心肺蘇生も、彼女の意識を取り戻すに至らない。


「アナちゃん…!死んじゃだめだアナちゃん!!今ここで君が死んでしまったら!!もう誰も(ゼノン)を説得できないぞ!!」


颯は必死に心臓マッサージを施す。とそこへ、カナロアが身を引きずりながらやってきた。


「どいてろ…」


「カナロア…今君に構ってる時間はない…!あとにしてくれ!!」


「どけと言っている…!」


カナロアは強引に颯の身をどかす。


「カナロア!!なんのつもり…」


「交代だ」


「…え?」


意外な一言に、颯は目を丸くしてカナロアに問いかける。


「こ、交代?」


「どんな人間にも限界がある。貴様も例外ではない。それに…」


突然、カナロアの握りしめる拳に電流が走り始める。


「”AED”をまだ試していないだろう!!」


直後、カナロアが手を振り下ろすと、アナの体に電流が走る。


「戻ってこい、アナ!!ゼノン様を説得するんだろう!!」


カナロアの流す激しい電流が、アナの体を走った。
















ーー……?…ここはどこ?ーー


何も見えない暗い闇の中、アナは一人目を覚ます。立ち上がった彼女の足元に、まるで水面(みなも)に一滴の露が落ちたように、白く光る波紋が広がってゆく。


ーーみんなは?私は何でこんなとこに?ーー


疑問に思いながらもどこか以後ごちの悪さを感じたアナは、先の見えぬ暗闇を歩み始めた。


ーー誰もいない……もしかして…私…死んじゃった……?ーー


アナは、今自身の状況をうすうす感じ始めた。


ーー私……まだ自分のこと、なにもわかっていないのに…ーー


アナの足が止まる。


ーーまだみんなにちゃんとお礼言えてないのに…ーー


アナの膝が地面につく。


ーーまだ……ゼノンと分かり合えていないのに……ーー


アナの目に涙が浮かぶ。


そのまま、彼女は泣き出してしまった。


しかし、彼女の声も涙も、果て無く広がる深淵に消えていく。


すると、アナの体がだんだんと地面に沈み始めた。


ーーあ……このままだと……私本当に……ーー


脳裏によぎったのは、消えていくことだった。


ーー行きたくない。行きたくないけど…でも……もうどうしようも…………ーー


彼女の体が沈んでいく。ついに、首から下がすべて沈んでしまった。


ーー私……まだ……やり残したこと……あったのになぁ……ーー


そっと腕を伸ばした彼女の意識が、次第に薄れていく。


そして、彼女の顔が沈んでいった。











その時











「アナ」











誰かが名前を呼んだ。











ーー……だれ?ーー











「アナ」






声は次第に大きくなっていく。







ーーだれなの?ーー




「アナ!!」




声はすぐそこで響く。




ーーあなたはだれ?ーー




アナが問いかけた直後。



ガシッ



暗闇で伸びるアナの腕を、誰かがつかんだ。


「まだあきらめたくないんでしょ!アナ!!」


ーー!!ー」


その声にハッとしたアナは、自身をつかむ腕をもう片方の腕でつかむと、沈みゆく地面から這い上がった。


「ーーっはぁ!!はぁ…はぁ…はぁ…」


苦しそうに息をするアナを見て、声は優しく話しかける。


「よかった。まだ完全に”逝って”はいなかったわね」


アナはゆっくりと息を整え、声の主を見る。


しかしそこにいたのは、小さく、しかしまばゆく輝く、光の球体だった。


「あ、あなたはだれ?どうしてここにいるの?」


「私……私は誰でもない。ただ、『見守るもの』と。そう覚えて」


「見守る…もの…?」


「そう。私はあなたをずっと見守っているわ。これまでも。これからもずっと」


優しく話す声に、アナは思わずほっとしたような感情を抱く。


しかし、すぐにその顔は険しいものに変わった。


「あ!!ゼノン!彼を止めないと!それにみんなも!どうしよう…どうにかしてここからでなくっちゃ…」


アワアワと落ち着きがなくなるアナを見て、見守るものと名乗った光球は「フフ」と優しく笑う。


「大丈夫よ、アナ。もうすぐあなたは戻れる」


「ほんと!!よかった…」


「でもね。今のあなたでは、彼を止められないわ」


「うん…」


「でもね、あなたにはまだ眠っている力がある。それらをうまく使えるようになれば、きっと彼を止められるわ」


「眠ってる…力…?」


アナがつぶやいた直後、突然彼女の体が、とてつもない力で上に引っ張られていく。


「!?」


「あら、そろそろ起きる時間ね」


見守るものが明るい声でつぶやく。


そして、見守るものは大声でアナに話しかけた。


「いい?アナ。”流れ”を把握しなさい。頭からつま先まで、体の隅々の流れを。流れているものを。眠っている力を使うコツよ」


「な、流れ?」


「忘れないで、私はいつも見守っているわ。あなたは一人じゃない。忘れないで」ーー
















「ん…」


電流が体を流れた直後、アナの目がゆっくりと開く。


「アナちゃん!!よかった生きてた!!」


「ふぅ…なんとか戻ってきたか…」


その光景を見て、颯とカナロアは歓喜の声を上げる。


しかし、周りの喜ぶ声とは裏腹に、彼女は至極冷静だった。


「…?どうかした?アナちゃん…?」


「…流れ…」


「流れ?」


「さっきまで、私夢を見てた。その中で会った人が言ってたの。”流れ”を把握しろって」


「その流れとやらを把握して、なんになると?」


「…こういってた。”眠っている力を使える”って」


話しながら、アナは体の隅々に意識を投じる。


彼女の蘇生に使われたカナロアの電撃。その電流は、今も体全体をビリビリと駆け巡っている。


彼女が負傷した際に流れ出た大量の血。それらを補填するために心臓で作られている血液は今、全身を循環し始めている。


この二つの”流れ”を、アナは今際からの帰還で実感した。



そして知覚した。



流れるもの。体内の血液。その中に眠る特殊細胞、「ゲノムワン」を。



カッ



突然、アナの体から青い光のオーラのようなものがあふれ出す。


「!?なんだ!?」


「アナちゃん!!」


「大丈夫。何ともない。むしろ、なんだか気分がいいわ」


話す彼女の胸から、ひらりと何かが舞い落ちる。颯が目を凝らしてその物体を見ると、それは先ほど彼女の傷の縫合に使った、颯の糸だった。


「なんで糸が!?」


傷の開放を危惧した颯が、急いでアナの胸に目をやる。


しかし、彼女の胸にあった傷は、跡形もなく消えていた。


(傷が跡形もなく消えて……再生した!?これじゃあまるで……”幻獣型”じゃないか…!)


アナのオーラに合わせて、彼女の目が青く輝く。


その輝きは、今までのものと比にならない、まるで流星のようだった。


「ありがとう、二人とも。今なら……今度こそ彼を止められるわ」


to be continued

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