142.国を捨てた者6
その言葉にゴイルがニカリと笑う。
「あれ?今度は笑ってる?」
「元気になったー?」
いつの間にか獣人の子供2人が戻ってきていた。そして、その手には木のコップが握られている。
「これあげるー」
「うちのお店の果実ジュースだよー」
その言葉にゴイルが立ち上がると、荷馬車の端まで取りに行く。
「このあんちゃんの為に持ってきたのかい?」
「そーだよ、お腹減って泣いてたんでしょ?」
「ママも、たんと飲んでもらいな!って、言ってた。
気にいったら買いに来な!とも言ってた」
「ありがとよ!ミッドラスの女は相変わらず商魂たくましいねー」
笑いながらゴイルはそれを受け取ると、甘い匂いのする木のコップをこちらに手渡してくれる。
「ほら、せっかく持ってきてくれたんだ。飲んでやりな、ほいで気に入ったら買いにいってやりな」
コップを受け取りながら微笑み一口飲み下すと、あまりの美味しさと、のど越しの良さに、止まらずそのまま一気に飲み干してしまう。
「おぉー!いぃー飲みっぷりだねあんちゃん」
「お酒飲んでる時のうちのパパみたい」
「パパはもっと、かぁーって汚い声出すよ」
「親父さん、ひでぇー言われようだな」
3人の言葉に微笑みながらも、コップを女の子に差し出す。
「ごちそうさまでした。すごく、すごく美味しかったです」
「元気出た?」
一人の女の子の言葉に笑顔で頷くと、女の子も嬉しそうに笑っていた。すると、もう一人の女の子がゴイルを見上げる。
「さっき、何の話してたの?面白い話?」
みれば、女の子の尻尾が楽しげにユラユラと揺れている。獣人は好奇心が旺盛だとも父から聞いていたのを思い出した。
「なぁーに、タキナ様の話を聞かせてたんだよ。
このあんちゃん、タキナ様の名前しか知らねーって言うからな」
「「えぇー!?」」
驚いた2人がこちらを見上げてくる。それに困ったように苦笑いしつつ、疲れた体を休めるために再び荷台の壁に背を預けるように座る。
「タキナ様知らないんだー」
「タキナ様はねー、悪いことする人には容赦なくて、良いことする人はじひ?が貰えるんだって」
「願い事も叶えてくれるって聞いたよ」
「あぁー?タキナ様は願い事は叶えられねーだろ。困った時、助けてくれるの間違いじゃねーか?」
「「そうなのー?」」
「そうだろ……多分」
「えぇー、あいまいな回答」
「煮え切らない回答」
「難しい言葉良く知ってんな、お前さんら」
願い事……その言葉に不意にフラッシュバックする。王都の謁見の後、自分の部屋に戻り、王を守る騎士でありながらあるまじき事を自分は願った。
誰でもいい。何もかも、跡形もなく、自分ごと全てを葬り去ってくれと……。
ある意味これは叶えられているのではないか?あの国には、もはや自分も王族すら存在しなくなったのだ。
「ハハッ、アハハハハハッ!!」
突然笑い出した自分に、3人が驚いて会話を止める。




