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行きつく先は邪神か神か  作者: 弥生菊美


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136.旅立ち2


 響き渡る蹄の音に振り返れば、騎士が20人ほどの応援を連れて戻ってきたようだ。「これでやっと出られる」と小さく呟き溜息を吐く、それはロウレウス達も同じだったようで安堵の表情を浮かべている。そして、ロウレウスがこちらへと馬を寄せてくる。


「タキナ様、この後一気に国民を押し返します。留まればその分だけ、民衆が増えますのでどうか駆け抜けていってください。道は我らが開きますので」


戦闘中の話ですか!?とでも聞き返したくなる内容だが、ただただサージを出るためだけの話である。


「わっ、わかりました。最後までご迷惑をおかけします」


「何をおっしゃいますか、こんな事しかできず申し訳ありません。国民も皆、タキナ様に感謝しているからこそ、ここにおります。いかんせん、統率が取れていないせいでこんな状況ですが……いつか必ずこのご恩はお返しいたします」


「恩返しなんていりませんよ。サージの国民みんなが笑顔になれるような、そんな良い国になることが私への一番の恩返しだと思ってもらえれば、それが一番私にとってうれしい事です」


「「タキナ様……」」


 急にロウレウスだけではなく、二人分の男性の声が重なり、なんで!?と視線を下げれば、この話を聞いていたのか民衆の中に、自警団のリーダーの一人が腕で涙をぬぐっていた。


「ありがとうございます」


 そう小さく呟かれた自警団の男性の言葉一つで、私は救われた気がした。感謝されることで、自分が認められる。いつまでたっても変わらない私の根幹、そんな自分にも苦笑いしてしまう。


「道を開けろ!!!」


「道を開けろぉぉ!!」


「どけどけ!!」


 騎士たちが速度を落とすことなく、私たち旅のメンバーの両サイドを駆け抜けていく、民衆たちは「あぶねぇーだろ!」と激怒しつつも、皆慌てて離れていく


「タキナ様!今です!」


ロウレウスの言葉に、頷くと後ろを振り返る。


「皆!行きますよ!!」


 その言葉に、みなも頷くと走り抜けていく騎士達の一団に付いていくように馬を加速させる。ここに来た時は埃と火薬と血の匂いの混じる乾燥した風だったのに、今は冷たくも心地よく湿った澄んだ空気、その冷たい空気が全身に当たって気持ちが良い。そして、両サイドから聞こえるサージ国民の声


「タキナ様ぁぁ!」


「家族を救ってくれてありがとうございました!」


「タキナ様!またいらしてください!」


「ありがとうございました!」


「必ずまた来てねーーー!」


 いつの間にか流れてきた涙が頬を滑り落ちて、頬をきる風がその涙を冷やしていく、何に対して泣いているのか、自分でもわからない。けれど……けれど、辛くて、苦しくて泣いてるわけじゃない。私もサージの皆にお礼を言いたい。そんな気持ちを抱えながら


「私こそ、ありがとうございます」


 そう呟いた声に反応したリリーちゃんが私の顔を見上げて、ハッとしている。それを、大丈夫ですよと言いながら袖で涙をぬぐって笑えば、何か言いたげな顔をしつつもリリーちゃんもはにかむ様に笑い何も言わず前を向いてくれた。


 だんだんと近づいてくる大門の扉が徐々に開いていく、私の斜め前を走っていたロウレウスが再び速度を落として私の横に並ぶ


「タキナ様!!このように慌ただしいご挨拶、誠に申し訳ございません!

どうぞ道中お気をつけて、タキナ様と皆さまの旅路の安全とご武運をサージの民一同、祈っております」


「ありがとうロウレウス、騎士の皆さんにも感謝をお伝えしてください。

いずれまたお会いしましょう」


「はい!首を長くしてサージ国民一同お待ちしております!」


 そう言い終わると同時に、サージの大門を駆け抜ける。サージの騎士達は門を出ると直ぐにサイドに広がり馬の手綱を引いて馬の足を止める。最後尾を走っていたザイアスが大門を駆け抜けると同時に


「タキナ様!!ドラゴンの皆さまもー!!ほんとうにありがとうございました!」


「さよーならー」


「ありがとうございましたー」


「おきをつけてー」


 振り返れば門の前でロウレウスと騎士たちが口々に叫び、大きく手を振っているのが見えた。登り始めた朝日が騎士達と、大門から見送るために後を追って来たのであろう溢れ出て来た国民とを照らし出す。


 美しい朝日を浴びている彼らの姿は、私の旅路なんかよりサージの前途を祝福しているように見えた。

その様子を見ながら、私も笑顔で大きく手を振り再び前を見据えて馬を走らせる。


 さぁ行こう。止まってはいられない。私には成すべきことが待っている。朝日に照らされた草原の向こう側、その果てしない地平線を見つめながら手にしていた手綱を強く握りしめた。



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