045_綾と駿のデート 【綾目線】
「綾~!!おはよー!!」
「駿、お待たせ~」
駿と付き合い始めてから初めてのデート。
港橋からだと電車で30分くらいの位置にある遊園地に行く。
遊園地なら、はしゃぎまわりたいからヒールは低め(私の低めは5センチ以下)。
ボトムスはキュロット(スカート風なショートパンツ)で行った。
「何乗ろっか?」
「綾は何が良い?」
逆に聞かれてしまった。
「駿、絶叫もの平気?」
「大体はね」
早速この会話で、翔は絶叫苦手なんだよね、とか思い出してしまった。
今は目の前の駿のことだけ考えなきゃ。
何個かアトラクションに乗った後だ。
「クレープ食べる?」
「じゃあ食べる!」
お腹が少し空いてきた頃だった。ナイスタイミング!
「どれにする?」
「うーんと、苺とバナナのチョコレートクレープ……」
えへへ、一番大きい(=一番高い)やつ。1000円か。まあいいや、美味しそうだから。
「キャラメルバニラクレープ一つ、苺とバナナのチョコレートクレープ一つ」
駿が注文してくれた。気が利く♪
「1700円です」
私が1000円を取り出そうとした。
「まいどあり~」
え?まだ私払ってないんだけど。
「いいよいいよ、オレの奢り」
なんかそれじゃあ私が高いの奢らせちゃったみたいじゃん。悪いよ~~。
「オレが奢りたいからいいの」
「……ありがとうございまーす」
今まで、私の誕生日とか罰ゲームとか以外で人に奢らせちゃったことほとんどないからなんか不思議な感じだ。
「次どこ行く?」
「さっき何個も私の乗りたいやついったから、次は駿が決めて~」
「じゃあお化け屋敷行こ」
という訳でお化け屋敷。
……あれ、私お化け屋敷苦手じゃなかったっけ?
「ヒーッ」
「ヒャッ」
「キャーーーーーーッ」
「……そんなに怖い?」
「無理無理無理無理無理無理」
いちいち驚きながら進む。
20回ほど叫んだ後にやっと出口が見えた。
「はー、終わった……」
明るいところまで出てきてから気付いた。
いつの間にか駿に後ろからガッツリ抱きついていたことに。
「ごごごごごごごめん」
「大丈夫だよ……てか、付き合ってるんだからお化け屋敷じゃなくても抱きついてきていいんだよ?」
「は、恥ずかしい……」
「文化祭前とか、翔には正面から飛び込んでたのに?」
駿はニヤニヤしながら過去のことを持ち出した。
「もう、みんな忘れてると思ったのに」
「あれは忘れないよ」
でも確かに翔になら嫌がられても抱きついたり腕を無理矢理組んだりしてたなぁ。
……ダメ、翔のことなんか考えちゃダメ。
遊び倒してそろそろ16時になろうとしている。
駿といると楽しい。
優しいし話は尽きないしリードしつつも私の希望もきちんと聞いてくれる。ついでにイケメン。
彼氏として素晴らしいと思う。
……素晴らしいと思うけれど、翔がまだ心の片隅に居座っていることを改めて自覚した。
多分私は、好きな人ではない人と付き合えない人だ。
自分の気持ちを隠せない。すごく不器用。
かつて翔と再会したときもそうだった。何年か付き合っていた人を即振ってしまうほど。
夕方だけどまだ暗くなる前、正直な思いを告げた。
11月以降、この遊園地の夜はイルミネーションで彩られるのだ。それで良い雰囲気になりすぎる前に。
場合によっては別れになってしまうかもしれない。それも覚悟だ。
「ねえ駿、私さ、勢いでOKしちゃったけど、やっぱり今はまだ翔のことが好きだと思うんだ」
「それでもいいよ。翔のこと好きな綾も含めて好きなんだって」
「とりあえず何回かデートしてみようよ?」
何が正解なのかは分からない。
でも駿はこう言ってくれている。
本当に嫌になった時か、本当に翔のことしか考えられなくなってしまった時に振ればいっか……。
「ありがとう。ごめんねこんな彼女で」
「いいのいいの最初なんかそんなもん」
とりあえず、今は駿に甘えることにした。
だんだん陽が落ちてきた。
「綾、観覧車乗ろうよ」
駿は少し照れたように手を差し出してきた。
私は、何も言わずにその手を優しく握って微笑んだ。
お読み頂きありがとうございました。
次回も読んでいただけると幸いです。
次回予告☞ついに未羽は正体を……。




