044_翔の母親 【未羽目線】
そろそろクライマックスに近づいていきますよ。
50話で終わんない気が……。
10万文字こえそうです。
「――香さん」
あたしに与えられた任務内容。
翔と、翔の母親を仲直りさせなくてはならない。
「なんですか?」
11月24日午後4:30。港橋駅前。香さんと話をするのが私の任務内容だった。
香さんは確か現在33歳。
しかし、30過ぎだとは思えないほどに若く見える。何も言われなければ20代半ばとしか思えないだろう。
それにモデルとか女優とか言われても信じてしまえるほどに美しい。
到底、高校生の息子がいるとは思えない。
しかし、翔の母親と言われると、年齢さえ考えなければ納得出来る。
こんな美女の遺伝子受け継げいだら誰でもイケメンになるわ。女の子が生まれてたら櫻ちゃんレベルの美少女だっただろうし。
艶やかで黒より黒いような髪、筋の通った高い鼻に薄めの唇なんかは親子そっくりだ。
逆に言えば、目元以外は瓜二つ。翔は奥二重でつり目、香さんは二重でどちらかというとたれ目だ。
「そもそも……あなた誰?」
香さんは綺麗な顔を顰めてこちらを見ている。
こちらは彼女が香さんであることを知っているけれど、向こうは私のことを知らない。いきなり声をかければ不審者だろうな。
「篠宮 未羽と申します。翔の彼女です」
翔、という言葉に香さんが、少しだけピクっと反応したのが分かる。
「なんで私にそんなこと……。というか、翔とはもう10年会っていないのよ」
「だから声をかけにきました。翔に会ってください」
呆れられるのも当然だろう。
「なんで私が翔の母親だと分かったの?」
それについて詮索されると困る。
仕方なく切り札を出すことにした。
「翼――香さんの元カレであり翔の父――は、私の兄なんです」
香さんは唇を震わせた。
「ば……馬鹿にしないで頂戴、あなたどう見ても高校生くらいの年齢じゃない、16も17も離れた兄妹がいるわけないでしょう!?」
「翼は、私の3歳年上です」
「翼はあなたと別れる前に自分の正体を言っていませんでしたか?」
香さんは思い出したようだ。
「――本当に、近い未来には、そんなこと……出来るようになるのね」
「ただし歴史を改変させるような真似はしてはいけないんですけどね」
「ところであたしの要求は……あなたに、会って欲しいのです」
「翔に会え、と?」
なぜこんなことをわざわざあたしがしなければいけないのか。
それは、この問題は時が解決してくれるわけではないから。
何もしなければ……これ以降、永遠にこの親子は他人のままだろうから。
この親子に仲直りしてもらわないと――詳しくは言えないのだが――色々矛盾が生じてしまうのだ。
「立ち話ですることじゃないわね。どこか喫茶店にでも入りましょう」
あたしたちは駅前のスタバに入った。香さんにフラペチーノを奢ってもらった。ご馳走様です。
「翼は……そっちでも元気?」
「半年会っていないから今どうしているかは分かりませんが……無事、大学生になりましたよっ」
香さんは安心して微笑んだ。
「私が生きている間に、翼に会える?」
「会えますよ。あなたはおばあちゃんになっていると思いますが」
自信をもって答えた。
「……あなたは本当に翔の彼女なのね?」
「はいっ」
「あの子も元気にやってる?」
「そうですねっ」
「翔の写真とか、ある?」
「あたしスマホ持ってないんです」
「そっか。今の子供にアンテナ付きのケータイ持ってるか聞くようなものか」
ケータイにアンテナ……?
「そうか、未羽ちゃんから見れば親世代より上の話よね」
香さんは初めて声を出して笑った。
「あれですよっ、翔はイケメンですよ!香さんにも翼にもよく似ています」
「そうなの?翼に似ていればかっこいい筈ね」
「あと、口数は少ない方だけど、一緒にいるとなんか落ち着きますよっ」
翔の様子を伝えようとしたのに、なんかノロケになってしまった。
「あと翔はMeanwhileってロックバンドが好きなんですよ、それでそれで」
翔の話を出来るだけたくさんした。
……そのうちに、
「いつから付き合い始めたの?どっちが告白した?ねえねえねえ」
「えっとー、夏休みですっ、一応向こうからで、でもあたし前々から好きでしたよ」
「で、どこまでいってるの?」
「はいーー!?!?」
いつの間にか宿泊行事の恋バナ状態になってしまった。絶対に彼氏の親とする話ではないはずだ。
香さんの見た目が、母親世代ではなく年の離れた姉にしか見えないから、ついついペラペラ喋ってしまった。
「でもアレだよ?私みたいになっちゃダメだから、ちゃんと避妊するんだよ」
「してません!!!!」
「えっ避妊しなきゃダメだよ、こんな年齢じゃちゃんと育てられないでしょ?」
「そこの否定じゃなくて!健全なお付き合いですから!!」
「あら真面目ね」
あらかじめ研究所でターゲットの話はある程度聞いてはいたが、ここまでぶっ飛んでる人だとは。
息子の彼女だぞ、あたし……。
「……会いたいとは思うよ。でも翔を置いていった私がやすやすと会いに行ってはいけないと思うの」
かなり話が回り道した結果、ついにこの言葉を引き出しすことが出来た。
香さんが翔に会いたい気持ちさえあれば十分だ。
「そこは任せてください。それが私の最終任務なんですから」
お読みいただきありがとうございました。
次回も読んでいただけると幸いです。
次回予告☞時間は少し戻って11月初旬、綾と駿の初デート。




